「障害者にも優しい街を」と言いながら目の前で暴れる障害者を見捨てた候補者へ。
僕は東京都民なので7月に都議会議員選挙があり、近頃はそれに向けたアピール合戦が地元で起こり始めている。
そして妹は18歳。
やっと選挙権を手に入れ、今か今かと選挙日を待っている。
正直、どうやって各候補者のマニフェストを伝えていくか、どうやって投票者を決めさせるか、そもそもどうやって選挙について説明していくのか、今から色々考えてしまうと難しいところがあるが、まあおいおいやっていこうと思う。
妹と選挙を掛け合わせると、僕にはどうしても忘れられない一件がある。
数年前、妹がまだ高校生で僕が大学生だった時のこと
(僕はまだ大学生だけどな)
知的発達障害の妹さんは、朝から何か琴線に触れることがあると大荒れを披露し、正直学校に1人で行かすのは不安だという状態になる。そうなるといつどこで叫ぶかわからないし、いつどこでボイコットをするのかわからないので、できれば誰かが監視するか一緒に学校まで行くかが好ましい。
大学生というのは何とも都合のいい生き物で、たとえば1限のない日は妹を学校まで送り届けても普通に授業に間に合ってしまう。1限も授業内容がそんなに惹かれないものや出席をとっていないものであれば多少遅刻しても問題ない。問題か…?
ということで、妹を学校まで送り届けることが気が付いたら僕の担当のようになっていた。
これはそんなある日に起こった出来事。
その日もまあ良くあるように、妹の機嫌が悪く、大きな声を出し、突然走り、かと思いきや突然止まり地面に座り…
そんな感じで10分程度で行けるはずの最寄り駅まで20分以上はかかっていた。
駅の近くについてもそんな状態だったが、そこで1つ問題が起こった。
選挙演説だ。
朝からマイクを使って大きな音を出しながら選挙演説。
何人もの人がチラシを配るために散らばって歩いている。
大きな音がダメ、いつもと違うことがダメ。
知らない人に話しかけられるのもダメ。
いつも通っている道に人がいて通りにくいのもダメ。
そんなもん、また大荒れになりますよ。
選挙演説のマイクの音に張り合うくらい(に感じる)声の大きさで泣きわめき、地面に寝転がった。
選挙の候補者さんもこちらを見て少し怪訝な顔をして、その取り巻きの方なんて露骨に嫌な顔をして避けて。
僕からすれば幼いころから見てきた様子だったので
「あーこうなっちゃったかー」くらいの緩い出来事にしか感じていなかった。
良くあるし。小さな時から見てたし。
なんか選挙演説をしている人にも申し訳ないなって。いや、あなたたちのせいも若干ありますけどね?それでもその演説よりインパクトのある動きをしてしまって申し訳ないなって。
妹に対しても、心配とか「どうしよう…」って気持ちとかよりも、
どちらかというと、その状態になった後は突然走り出すのでそっちの心配の方が大きくて。
まあそのくらい冷静ではあったので、妹を形だけなだめながら選挙者の演説を聞いていた。
すると何とも面白いことを言っていた。
「高齢者も障害者も暮らしやすい、素敵な街にします」
目の前に荒れ狂う障害者がいますが…?
あなたの演説もこの荒れ狂いの引き金になっていますが…?
そして目の前に障害者が荒れているのに嫌そうな顔をしましたよね??
今、その「障害者も暮らしやすい街」にすることを証明するいい機会ですよ??
なんか笑ってしまった。
結局選挙に当選するための口実でしかなく、障害者なんてその道具でしかないんだって。
その後、しばらく寝転がってボイコットをしたのち、突然スイッチが入り走り出し電車に乗り込んでいき、その後も色々ありながら無事?学校まで送り届けることができました。
妹が荒れ狂うことは多々あったので、それ単体ではきっと「いつもの」で片付く話でしたが、なんとなく忘れないエピソードになりました。
それから駅前で選挙演説をしている人を見るたびに思い出しちゃうし、今回も言おうとが選挙の話題をした時もその記憶がよみがえったし。
その候補者が結局当選したのか否かは覚えていません。
興味もなかったし「僕は投票しないぞ」ってそれだけだったので。
もう名前も覚えていないしどの政党の人かも覚えていない。
でもエピソードとしては強烈で。
きっと妹と選挙の話になるたびに思い出すんだろうなって記憶。
障害者にも優しい街…か。
今日はきっとこんな日。