"creep"について
今回引用させていただく楽曲は「Radiohead」の「creep」だ。
「creep」は1993年にイギリスのロックバンド「Radiohead」がアルバム『Pablo honey』から先行シングルとしてリリースされた楽曲である。言わずと知れた大名曲だが、この楽曲がなぜ30年以上経った今もなお愛され続けているのか、と言う点について考えて行きたい。
最初に私が注目したいのは、歌詞だ。ボーカルのトムヨークの書く歌詞は、英国人らしいと言うか、正直湿っぽくなかなか卑屈なものが多い。「認めてもらうためには自殺だってするよ」、「僕はノミのような存在だから」のように彼の言葉は常に陰鬱で捻くれている。今回取り上げる「creep」でもそれは同様だ。
「君は特別なのに僕は特別になれない」「この前君を街で見かけたけど、君の目を見てうまく喋れない」など、どこか片思いソングとも、自分の劣等感を映し出したロックナンバーにも聞こえる不思議なバランスを保っている。
この赤裸々に自分の感情を映し出した歌詞こそが、この楽曲が持つ不思議な力なのだと思う。やりきれない感情や自分への劣等感、または決して手が届かないあの娘への想いなど、誰もが感じたことがある陰鬱な感情をRadioheadは代弁してくれているのだろう。そこは楽曲が発売された90年代でも現代でも変わらずに存在するはずだ。事実、2000年代生まれの私の心にもしっかりと響いている。
彼の言葉はいつの時代でも、どこの国でも変わらずに人々の心に響き続けるのだ。
続いてはサウンド面について述べて行きたい。
どうしても1990年代の楽曲となると、音像の荒さや聴き辛さなどが懸念されがちだが、この楽曲はいわゆる「聴き辛さ」が全くない。
楽曲のイントロで鳴るアルペジオはとても美しく、ボーカル・トムヨークの美しい歌声も繊細ながらも力強さを感じさせる。
そしてこの曲の代名詞であるサビのギターの歪みも、どうしようもなく聴き手の胸をぎゅっと締め付けるのだ。
少なくともバンドが好きな現代人ならば、なんの遜色もなく聞く事ができるはずだ。
その「聴きやすさ」こそ、現代でもこの楽曲が愛され続ける秘訣なのかも知れない。
今回はイギリスのロックバンド「Radiohead」の「creep」をスタンダード・ナンバーとして上げさせていただいた。正直この楽曲がどれくらいの人数に認知されているかはわからない。ただYouTubeでのMV再生回数が9.5億回を越えていることや、現在もリスナーが増え続けていることからスタンダード・ナンバーと呼んでも良いのではないかと私は考えている。これからも同楽曲はいずれの世代にも愛されることは間違い無いだろう。