野菜の個性を知りたい・楽しみたい!そんな食事会の話。(春野菜編)
写真はファーストトマト。あいちの伝統野菜です。先っぽが尖ってて、切った断面はハート形で、ちょっとかわいらしい。種の部分が少なく、甘さと共に酸味もあって、昔からの野菜ですが、最近また人気になって来たトマトなんです。
糖度が高いほど美味しい「甘い=美味しい」の時代から、甘いだけではなく、酸味や苦みがほどよくあったり、ちょっと変わった形や色のものが「面白い!」と言われたりしてます。見た目はよくなくても栄養価が高いとかもありますよね。
野菜の世界でも、パッと見の「べっぴんさん」だけでなく、「個性派」も注目されるようになってきました。よーく見ると味わい深いんです。
もっと野菜のことを知ってほしい、そして楽しんでほしいと、野菜ソムリエ上級プロの永井千春さんと始めた「野菜懐石を楽しむ会」。季節(春夏秋冬)ごとに開催し、回を重ねること22回。6年に渡り続いております。
先ずは永井さんの野菜のミニ講座。毎回テーマを決めて話してます。今回は「新玉ねぎ」。彼女自身、人参・玉ねぎの生産農家であることと、4月10日が「碧南玉ねぎの日」(よい41玉ねぎ0)ということもあり。
碧南は新玉ねぎの産地です。碧南では人参と玉ねぎを主要作物としている農家さんが多く、人参が終わりつつある3月くらいから収穫が始まって、4月にピーク「盛り」を迎えます。「碧南サラダ玉ねぎ」として、水にさらさなくても辛みの少ない甘い品種です。一口に「新玉ねぎ」と言っても、他にも色々な品種があります。写真はあいちの伝統野菜「養父早生玉ねぎ」。昔からの品種で少し扁平になりやすく、玉ねぎらしい香りです。この玉ねぎを干せばよく見かける茶色い皮の玉ねぎになるのかというと、そうではありません。それどころか日中放っておくと腐ります。そもそもの品種が違うのです。普通の玉ねぎの産地はほとんど北海道、そして淡路島。秋に収穫されて貯蔵され年間を通して食べることが出来ます。新玉ねぎは春にみずみずしさを味わう玉ねぎなんです。
ひとくくりに考えず、品種ごとそれぞれに合った料理を提案し、食べてもらう。講座の後は、食事会のスタートです。
こちらが当日のコース料理です。旬の「走り」「盛り」「名残り」を組み合わせます。あいちの伝統野菜は、養父早生玉ねぎ、知多早生ふき、早生かりもり、ファーストトマト、守口大根を使いました。
【前菜】養父早生玉ねぎを縦にスライスして、かりもりを塩もみして一夜干ししたものと、ちりめんじゃこと海老を盛り合わせ、白醤油のドレッシングをかけてます。ふきと高野豆腐は白醤油でにて色を活かし、上に乗せた蕗の葉の佃煮はたまり醤油でこっくりと。卵焼きの中には時期もそろそろ終わりの「名残り」の人参をきんぴらにして入れてます。その上にはファーストトマトを八丁味噌と合わせて練ったトマト味噌をのせてます。ファーストトマトは酸味もあるので加熱しても美味しいんです。そして、珍しい守口大根の浅漬けも添えてます。
【刺身】「盛り」の桜鯛、「名残」のふぐの炙り、カジキマグロ。つまいろいろは、わさび菜と大葉、アイスプラント、ラディッシュ、金柑、おろし立ての生わさび。いろんな野菜をあしらってます。たまり醤油は、ちょっと薄めの十水たまり。
【焼物】筍は地元のものが「盛り」となってきました。先端を切り落とし、米ぬかと唐辛子を入れたたっぷりのお湯で茹でます。取れ立ては鮮度がいいので30分ほどでスッと串が入ります。火を止めてそのまま翌日までおいてあく抜きをします。そのあとに水で洗って皮をむき、切って、出汁で炊きます。淡口醤油とみりんと酒に漬けた鱒で、挟んでオーブンで焼きます。上にはこの時期だけの花山椒をのせて。タラの芽の天ぷらも添えてます。
【酢の物】「白酢和え」豆腐を水切りして、白醤油、砂糖、酢、菜種油で調味してハンドミキサーにかけて滑らかなソースにしてます。酢の入った白和えなので、白酢和えです。「盛り」のホタルイカ、ひじき、カラフルトマト、「走り」のグレープフルーツなどと合わせます。南知多で生産しているグレープフルーツは4月中旬から6月が収穫期。やはり旬があるんです。
【煮物】新玉ねぎを蒸して甘さを引き出し、ミキサーにかけてペーストに、出汁と醤油とみりんで味を調えて、水溶き片栗粉でとろみをつけてます。玉ねぎの香りとふんわりした甘さのあんです。それでファーストトマトもさっと煮てます。錦爽どりと豆腐、新じゃが、人参、こんにゃく、子持ち高菜を盛って。上にはホワイトセロリ。
【食事】炊き立ての筍ご飯です。筍をたっぷりと。食感の変化でふき、うま味を足すちりめんじゃこものせてます。漬物は菊芋と人参の味噌漬けと昆布の山椒煮。木桶で3年熟成の豆味噌の赤だしとともに。皆さんおかわりされます。
【デザート】桜の葉の塩漬けを混ぜ込んだヨーグルトムース。桜の花の塩漬けものせて季節感を。そしてお抹茶。
春は芽吹きの季節。食材は「芽のもの」そして「苦味」を持ったものが多いです。冬の間、からだに蓄えた毒素を輩出する効果があります。そしてアクを持ったものも多いです。筍やふきなど。食材に合わせてあく抜きをきちんとして、ほろ苦さと共に味わいたいです。
伝統野菜と言っても、ごく普通に出回っているものから、見た目や味や香りなど個性的なものなど色々あります。もともとの野菜の味ってこうなんだろうなと確認したり想像したりします。一般的な野菜と食べ比べてみるのも面白いです。