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dancefirst
2022/04/02
村で一番の怠け者である勇太は言った。
「なあみんな、たまには俺と遊ばないか。俺はもう一人遊びには飽きたもんで、そろそろ暇になりそうだ。でも俺、暇は求めてないんだ。誰か俺と遊ばないか」
その夜、村長は村の働き者を集めた。彼らは村から馬で片道一時間掛けて町に行き商売をしている。その帰りだった。村長は言った。
「この村は多くの働き者によって恵まれている。それは大変結構なのだが、たまには少し村に残る者のことを気にかけてくれないか。なんだか、ゆとりを全身に纏ったような人間が最近目立つのだ」
働き者の一人が手を挙げた。
「村長、私たちにはどうにも出来ません。私たちだって誰かに気にかけられて働いているわけじゃないんです。ただ商売によって、より生活が豊かになる、人生が実りあるものとなるために働いているのです」
村長は「そうか」と一言残してその夜の集会はお開きとなった。
後日、村長は村で勇太を見つけてこう言った。
「君は、いつも怠けてばかりで目に余る。人生をより豊かにする気がないのか?」
勇太は答えた。
「あ、今のパワハラなんでコンプライアンス相談室に報告しますね」
勇太はそのまま、去っていった。