─虫の知らせ─


電車で2区間、中学時代まで暮らした我が家から8km程離れた末広(すえひろ)の町にある、今は故人のばーちゃん家(昔、小さな町工場を営んでいた、母の実家)には母屋と同じく、戦前に建てられた二階建ての蔵があった。随分と前、ばーちゃん存命中、居住ビルに建て変える際に母屋共々取り壊されているんだけれど。
外観上は表面を白い漆喰で固めた土壁
錆色の鋼鉄に覆われた厚み15cm以上の分厚い鎧戸(当時小学生の自分には両手を使わないと開け閉めのし辛いくらい!!誤って指でも挟もうもんなら確実にオシャカになりそう)を右側にゴロゴロとスライドさせると入口右手に半分地下に降りてゆける階段のある独特な匂いのする物置部屋(自分の記憶では電灯を灯した記憶すらなく、鎧戸の右手に汲み取り便所の蓋を思わせる明り取りの天蓋のような物まであった事から推測して元々電灯自体も備わって無かった気もする)の木戸、正面が2階へ上がる急な階段になっておりそこから上に上がると箪笥部屋と襖で仕切られた奥に客が泊まれる…床の間にテレビを据えた日頃の生活感のある空間とはまた少し違った、例えるなら古風な旅館や民宿を思わせる四畳半位の部屋があって祖母や叔母、子供の時分にはしっかり親戚だとばかり思い込んでたお手伝いのおばちゃん達に依っていつも綺麗に整えられていた。
週末等泊まりに行く時、たまに誰の思い付きか判んないけど、父と僕ら兄弟、又は母屋に住んでいた比較的僕ら兄弟と歳の近い従姉弟4人といった組み合わせでそこをあてがわれる事があった。
特に日頃離れて暮らす従姉弟達と親達に干渉される事無くそこに泊まるってのは格別な楽しみで、事前にお夜食やお菓子も準備して度々夜更かしを満喫しておりました。

先日の事、兄がそこに従姉弟、箪笥部屋に僕とは20歳近く歳の離れた従兄と泊まった夢をみたらしい。
子供の頃の夢なんてと、なんとも不思議な感じがしたらしく、その日久しぶりに従姉に電話してみたところ繋がらず、折り返しかかって来た電話の開口1番「もう(誰かから)聞いとった?」といった意味合いの一言……

その従兄は以前より肺癌を患い、余命三年との宣告を受けており、今回急な事もあり、まだ親戚にも連絡が間に合ってなかったけれど前日から危篤状態…その日明け方亡くなった、との事。
事の顛末を話すと従姉も大層驚いていたらしい
…虫の知らせってあるんだねぇ……


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