見出し画像

姫沼取水堰(ひめぬま、北海道利尻富士町)

●概要
ほくでんネットワーク鴛泊発電所6取水の1。
竣功:1921年?  型式:E?   
目的:P
   取水量?㎥/s
   合計最大取水0.5㎥/s
   有効落差47.0m
   最大出力170kW
堤高:2.0m?  堤頂長:31.8m?


●見学情報(姫沼)
駐車場:有 トイレ:有 自販機:無 天端:可 直下:不可? 


●参考リンク・引用


●道中

北海道、利尻島。
この外周60km程の小さな島には2基の水力発電所がある。
1基は清川発電所、もう1基が今回紹介する鴛泊発電所
鴛泊発電所は日本最北端の水力発電所でもある。
(地理院地図より)
鴛泊発電所は鴛泊港から約4km地点にありアクセスは良好。
何なら航路からもその姿が確認できる。
この日は、あまりにも天候に恵まれたからかもしれないが。
ズーム(中央少し左の横長の白い建屋が発電所)。
無事上陸し、発電所へ向かう。道中、利尻山と発電所。
ズーム。数少ないネット情報で目にした通りの外観にひとまず安心。
接近。すぐ脇に川。
現地銘板によれば「ドットマリ川」。
ここを「ノドットマリ川」とするネット情報もある。
ちなみに、上流には「ドットマリ川」に架かる「ノドットマリ橋」があり、単なる表記ブレではなさそうだが、それ以上の事は不明。ともかく今回は現地情報に倣い「ドットマリ川」とする
さてそんなドットマリ川、こうして遠くから見える河口の流量は全てが自己水源分ではない。
この通り、河口に見える流量の多くは発電所からの放水によるもので、
最大0.5㎥/sが流れ出るようだが、
(水力データベースより)
これらの水は、水力DBによれば何と6ヶ所で取水されたものだと言うではないか・・・!
(地理院地図より)
取水6ヶ所とは言われても、導水路の総延長は1,483.6mというごく狭い範囲で、尚且つ一見すると谷らしい谷が6本もあるかというと・・・?
そして北海道北端のしかも離島の水力発電所という立地からか、ネット情報もほぼ無い事から、結局事前段階ではほとんど情報が掴めず、取水口の在り処は現地情報に賭ける事に。
発電所裏手に回る。
「ドットマリ川砂防ひろば」として周辺は開放されている。
その先は鉄管があり行き止まり。
あわよくば巡視路から芋蔓式に取水口を・・・と思ったが、巡視路はフツーに立入禁止だった。
まあそう甘くはない。
せめて上部水槽が見えれば何かヒントが・・・と思ったが上の様子は見えない。
遠望を試みたが、水路は森へと消えていた。
という事で腹を括って取水口探し開始。
・・・と勇んだものの、こんな谷筋を一本一本当たっていたのでは、限られた時間でその在り処を突き止める事は到底無理だという事でさっさと諦め、ヒントを求めて主要取水元であろう姫沼へと向かう。
斯くして姫沼へ。
時に何でもない平日だったが、3組程の観光客らしきを見かけた。
あわよくばのあわよくば、発電所関連の人でも居ればと思ったが、さすがにそんなウマい話は無い😅
で、そもそも姫沼とは?という事で、現地に水力発電との関連を示す案内板(利尻町立博物館作成)があった。
案内板曰く…姫沼はその成り立ちこそ自然のものだったが、
●大正時代に「堤防の建設により現在の姫沼が形成」
とあるように現在は人造湖。
また、
●大正時代の「発電需要の高まり」により現在の姿になった
●昭和32年(1957年)に工事で姫沼の水が殆ど抜かれた
●その姫沼工事の写真を提供された方が「利尻電業」の創設者
という事でこれらは水力DBに拠る所の1958年運開の鴛泊発電所を指している事は間違いなかろう。そもそも大正時代に発電所ができた経緯については現地・ネット情報では分からなかったが、今思えば案内板を作成した「利尻町立博物館」に行けば情報が得られたのかもしれない。
で、現地。結局頼みとするは自分の目と脚…と言っても姫沼の外周は1㎞もなく、すぐに一周。
歩けばズバリの何かに遭遇するハズと高を括っていたので拍子抜け・・・。
ここまで来て収穫無しで帰れないぞ、と真面目にもう一周。
まずは1周目で気にはなっていたこの地点。
(地理院地図より)
場所は赤丸部分。東を流れるのは現地情報から「オモベツ川」との事で、恐らく姫沼より上流から流れている。
この部分は他と異なって、しっかりめの護岸が為されており、
どうやら沼の出口らしい。
遊歩道を潜った先で、
オモベツ川へと流れ落ちている。
付近の様子を見ると、三層?の護岸や
旧設備のような何かと、その歴史を匂わせるモノも。
その正体は掴めなかったが、そこが沼の出口である事は確認できた。
同時に水力DBにある堤頂長31.8mとも概ね合致するので、ここが堤体という事で良い?
そして少し進んだ所、沼方向に注意を向けながら歩いているとハッとする構造物!と水利標!
接近してみると、ゲートだ!
対岸から全容。この写真は恐らく堤体を丸っと捉えており、向かって左のコンクリ部分が余水吐、右手の少し白い部分が取水口となっている。
余水吐ズーム。
取水口ズーム。どうやらここから発電の導水路が始まるらしい
(地理院地図より)
と思ったが、ここから発電所まで水路を雑に結ぶと約1.7km。
水力DBにある導水路総延長1,483.6m(主要導水路延長1,271.2m)と誤差にしては大きい乖離。
(地理院地図より)
イマイチ姫沼からの水路が想像できないので、今回の現地探索にて分かった発電水路を図示してみた。推測込みではあるが現地確認した水路も多く含んでおり大きくは逸れてないと思う。
(地理院地図より)
水力DBの数字に当てはめるなら、支水路212.4mに相当するのは恐らくこの赤丸部分。
ここに関しては目視できる部分(蓋渠)が多かったのでほぼあってるハズ。
せいぜい堰堤4の位置が怪しいぐらい。
(地理院地図より)
で、水槽(推測)~姫沼が1,271.2mならピッタシなのだが、やはり200m以上のズレが(赤点線)。
それならばと姫沼から1271.2mで水槽まで繋ごうとすると、堰堤2~堰堤3の間に水路が来る事になるが、そうなると総延長1,483.6m(支水路延長)とズレ。
姫沼と堰堤2の間に更に堰堤があるとは考えにくいし…謎。
(水力データベース、清川発電所ページより)
もしかして「(主要導水路)総延長」には「(水圧鉄管(管胴)) 延長」も含む?とも考えたが、別の発電所を数基見てみた所、そうでもないらしい。
という事で、これ以上はド素人の自分にゃ分からん。
そんなこんな、全容を明らかにできたワケではないが、事前情報ほぼ無しの現地半日勝負で輪郭だけでも掴めたのは収穫だった。
お邪魔しました~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?