【鑑賞】リップヴァンウィンクルの花嫁
「キリエのうた」を観るに先駆けて、岩井俊二監督の作品を観たいと思っていた矢先YouTube無料配信。
軽い気持ちで観たことは後悔。
以下、ネタバレがあるかもです。
まず黒木華が終始かわいい。かわいいんだけど、あまりにも隙がありすぎて冒頭ちょっといらいらする。
でもそれは無意識に「自分」を押し殺してなにかを演じ続けているからこその意思のなさでそこにつけ入られていて、だからこそ自信がなくて声も小さいんだなあ とあとになって思った。
「演じる」ということが一貫したテーマなんだろうなと思うんだけど、
七海が「ここがどこかわからない」「帰る場所がない」と泣く場面は子どものようで、無意識のうちに被っていた仮面を取って素になってようやく声をあげて泣いて助けを求められたんだなあと。
結局何者なのかわからない安室は、ずっと何かを演じ続けているけれど、最後に全裸で号泣する場面は素なのか否か。一瞬吹き出したようにも見えるけど、思わず号泣した自分を笑ってしまったとも取れるし。
真白は「AV女優である」自分にだけ価値を見出して、それで稼いだお金を使うことで「素の」自分をギリギリ支えていた。演じることで死の恐怖から逃れていたのかもしれない。
エンドロールの冒頭、文字通り「ねこを被った」七海の姿は、本編からは唐突な画だけれど妙に腑に落ちるものがあった。
結婚式の代理出席で発生した偽家族。
その打ち上げはすごく素敵で、嘘から生まれた良い関係もあるんだろうなと感じたけれど、あのメンバーがほんとうの家族だったらうまくいったかと言われるとそれはきっとまた別の話で。
家族っていう関係についてはいろいろ難しいなと思うところがあるので、うまく言葉にはできないけれど考えさせられる描写だったなと。
真白が「与えられる幸せに申し訳なくなるからせめてもの思いでお金を払って買うんだ」という趣旨の話をしていましたが、この映画こそお金を払って観たかったです(そういう話か?)。