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上司をコントロールして差し上げます

20230525

木曜日



 新人パートのアナさんの配属を発表する日。
先日のミーティングにて、新人パートのアナさんのチーム配属が決まった。


 アナさんは外国人。日本語を流暢に話せるが、日本語の文字が苦手なようで、確認作業が多いこの部門にはちょっと向いていない。
だからなるべく単調な作業をやってもらっている。

そもそもこの部署にこだわっているのは殿(社長)の希望。
アナさんを現場の作業員(コツコツと機械を動かすとか)にはしたくないということで、アナさんはチームに入らず、必要なところに応援に入るというフリーな体制をとっている。

シングルマザーで大変だろうし、沢山仕事をしてくれるという話だったが、
実際にはあんまり出勤率は良くない。
だからこのままフリーでいた方が誰の負担にもならなくて良さそうだと思っていた。



 ベッキー達は自分が完璧にやれないならやりたくないくない主義の人間だけど、他人には責任を持って仕事をさせたいと言うので、アナさんの所属が決まった。
ベッキーと同じチーム。

 今日から仕事を教えるらしいが、わたし的には、そしてボス的にも、大々的な発表はせずにやろうという考えだった。

もし何かで合わないとなった時に、やっぱり嫌です!と簡単に変えてはアナさんが可哀想なので、確信したところで本採用とした方がいいと思った。

そう何度か説得してみたが、ベッキーは「そんな事はない、ちゃんと教えれば覚えてくれる。みんなに発表してください」と言って聞かなかった。


あーぁ、またよく調べもせず突っ込んでってるなー。

わたしには、ベッキーが不満を言う確信があった。


 アナさんの口癖は「大丈夫〜」。これを反射的に言ってる感じ。
何か教えてもすぐに「大丈夫〜」
詳細を教える前に「大丈夫〜」

別の人が教えてたのかな、余計なお世話をしてしまったかな、と思うが、へこたれずにちょっと突っ込んでみると、やはりわかっていない。
とりあえずすぐに「大丈夫〜」とありがた迷惑な拒否り方をする癖がある。

フラットな目で見た方が良いと思うので、何も言わなかったが、
次回あたりのミーティングはこの話かなー。


 以前にも話を聞かずにえらい目に遭っていた人がいた。アナさんも同じになるとは限らないが、その人の癖となんか似ているな、と思い出した。

その人は「なるほど!」で人の説明をぶった斬る実に失礼な新人だった。
そして説明を聞かないから変なやり方でミスをしていた。
大変なのはここからで、その新人はミスしても懲りずに話を聞かないという。癖だから。

笑い袋という人なんですけどね、「自分は仕事できるので〜」と言って入社してきた呪いにかかっていたんだと思う。過信と書いてプライドと読むみたいな。

笑い袋はミスをするたびに「ルールを知らなかった」という自分を正当化する言い訳を、説明したはずの先輩を前に堂々と言って退けてしまっていた。
そういう類の呪いが、アナさんにも発動しなきゃいいな、と。

ベッキーは責任持ってちゃんと様子見てくれや。






朝の打ち合わせ

 ベッキーがボスに、朝礼でアナさんの配属のことを全体に発表してくれと改めて訴えていた。

一方ヤレバ・デキルジャンは、「これ書いてきたので」と、Nに言い忘れがないよう、完璧に言うように、Nが話すことを書き出してきたらしい。



ボスは反応せず、その様子を無言で見つめていた。

ヤレバは思う通りにやってくれないNを信用出来ずにそういう行動に出たのだろう。

怖過ぎるやんけ。




解散後、ヤレバから渡された紙について、
N「言えって」

ヤレバも行き過ぎているが、Nもやらなさ過ぎている結果だ。






午前中

 ベッキーがアナさんに付きっきりで教えている。

 ベッキーは隣の部屋にいるわたしやNなどが椅子から立ち上がったりで動くと、すぐに目線がこちらに向く癖がある。
俯いて検査をしていても察知してくる。頭に高性能な人感センサーが付いている。

今日はアナさんの教育に夢中でこっちを気にする意識が生まれないようだ。
人感センサーOFF。
こりゃあいい。






残業時間

 朝のヤレバ・デキルジャンからのメモ怖かったですねと振ると、「見る?」と言ってそのメモを見せてくれた。

A4用紙の下までびっしりと書き綴られていた。
内容は、Nとヤレバの役割の違いだったり、指示として言って欲しい台詞だったり。
情熱は止まることを知らず、メモの表だけじゃ足りなくて裏面にまで続いていた。


わたし「こっわ」

モラハラの人みたい。

N「きっちりし過ぎなのよ」

白黒思考というやつ。
言って変わらないなら完璧にコントロールしたらぁという考えに至った模様。
完璧思考を他人に向けたら良くない未来が待っているわ。
だからヤレバの子ども引きこもりになってしまったんじゃと他人の子どもの心配まで思考が至ってしまったが、関係ない関係ない。


「私はレジ打ちとして雇われたんだから(雇用主は仕事内容は決めずにただ雇っただけ)、接客は他の人の仕事です」のように、自分の中でやることやらないことが明確に決まっている考え方がこのメモに詰まっていた。

まぁ、要はお客さん対応と、パートに非難されるかもしれない矢面に立つことが絶対に嫌という話。


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