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仕事の幅を広げろ会議

20230418

火曜日




 17時からミーティング。今回は殿(社長)が入られるがな。


 開催地は食堂だと言われていたので、机を会議用にセッティングしていたが、「食堂は休憩で使うから会議室にしよう」と殿が言い出したので急遽場所変更。
セッティングした机や椅子を直そうとすると、ベッキー、ヤレバ・デキルジャン、ポニテの3人は会議室の良い位置取り(目立ちたくない)の為にそそくさと消えた。
しかしポニテだけは気が引けたのか、戻って机を直していた。

わたしは他人のこういうところをよく見ちゃう。





 ミーティング開始。殿は後半に入る。

まずは先日の管理者会議の内容をザックリ説明され、今日のメインとなる『ベッキー達の仕事の幅を広げる』という議題へ突入した。
だから殿が入るんだな。この話長すぎるもんな。


ボス「Nさん達がやってた所をベッキーさん達にも出来るようにしてもらいたいの。Nさんが1週間お休みした時の感じで。
もう徐々にやってもらってる所でもあるんだけど。どうかな?……ポニテちゃんはどう?重い?」

ボスは一番仕事の手が空きやすく、そして性格的にも誘導しやすいポニテから攻める。

ポニテ「重いです!」

ボスの誘導が悪いね。
この話での説得期間が長過ぎて、ポニテでさえ、もう格好悪かろうとなりふり構うもんか!と気持ちが振り切れてしまっている。


ボス「加工はパートさんにやってもらうし、電話対応もないし、手配打つくらいだよ?」

ヤレバ「え、それって決定ですか?」

ボス「決定じゃない。それを話し合いたいの」

話し合わなくてよくない?いつ何があるか分からないから〜って言って、それとなく日常の作業に盛り込んじゃえばいいのに。
卑怯?

ベッキー「んー」

ボス「あたしはそんな感じで思ってるんだけど、何かあります?どう?」

今回も長くなりそうですねえ。




ベッキー「私が今担当してる加工なんですけど、やる事が沢山あって、それを(パートと)2人で回してる状態なんですが、私が手配に入ったら回らないと思いますけど加工が。それはどう考えてるんですか?」

倒置法を使って強調。
私がいないと困るのはそっちなんですよ?って。

あれ?でも以前、シール部門の手伝いに行きっぱなしだった時期があったけど、なんとかなってたよね?
……まぁ黙っておこう。


ボス「1日中業務やることある?」

ベッキー「……ないかもしれないけどぉ」

ボス「全部やるんじゃないよ?一部だよ?」

ベッキー「どういう……どうやって聞いたら良いんだろう。…………そしたらNさんはどうされるんですか?」

あ、すり替えた。何も伝わってないですよボス。

ボス「違う事やる。(あたしも定年近いから)あたしが持ってる会社の担当になるとか。殿の考えもあるから分からないけど。殿呼んだ方が早いか」

ボスは殿を呼びに席を立った。


 ちなみに、ボスが担当してるお客さんは滅茶苦茶重い。いろんな意味で。
殿が大事にしているお客さんだから常に殿の目が光っている。
しかも営業担当がペロリ(分かってないことが多い人)だ。ボスはそれのサポートを兼任している。
それをみんな分かっているから、Nがその担当になると聞かされてベッキー達は追求が出来ない、させない、といった駆け引きをしていた。



 ボスが殿を呼びに行った隙にヤレバが口を開く。
ヤレバ「……(自分達は家庭があるから担当を)持たないんだよね?持たないって(殿と面談の時に)言ったじゃん!」

ブチ切れておる。どういう話だったか知らないけど、会社が口約束なんて守るわけないじゃん。
「その時点ではそうだけど、いつまでもそのままでは困るんですよ」とか言い出すんだから。
耳障りの良い餌で釣った後は、「この魚がどれだけ俺に貢献するか」しか興味ないよ。

わたしに聞いてくれれば話を真に受けるなと教えてあげたのに、ヤレバ達はいつも事前の調査をせず決断をする。その筆頭がベッキーだ。
頭の回転は早いのになんか抜けてるんだよなーと、何かある度に思う。




殿「はいどーもどーも」

漫才でも始めるのか。

そして殿が入ったことで、また振り出しに戻る。


ボス「3人(ベッキー、ヤレバ、ポニテ)に一部を任せると、NさんとOさんが他が持てるのかなって所です」

殿「もっと早くやりたかったんですけど、これからはこういう事を(俺を含めて)月1やっていこうと思います」

嫌だね。
行けベッキー、殿をちょっと嫌な気分にさせて懲り懲りさせろ。


 殿の話は、この春から息子を常務取締役に任命して経営側にした事と、まだまだ勉強中だという事と、現場(印刷部門)の管理職を増やした事と、色々変わってるからみんなその流れでやる事を変えていって欲しいという事。
今は会社が一番良い時だと。ベテランばかりでもうファミリーだと。自分としても大事にしないと、という薄い話が続く。

殿「新しく管理職にした現場の3人もグループ長になり、ベテランのグループ長もいて、現場はみんなグループ長なんです

びっくりだよね。みんなグループ長ってなに。
少なくとも1人、権利だけ主張して義務を果たさないおじさんは外せよ。醤油おじさんね。


殿「みんな育って来て、みんなグループ長以上の力もあるし、給料水準もみなさん高いんです。高くしなきゃと思っていて、それ相当の仕事をしている人は、それに準じた給料にしないといけないと思っています。高給取りが多くなっているという感じにしていかなきゃと思っています」

グループ長以上の力はあるから給料を高くしなきゃと『思っている』。
能力に準じた給料にしないといけないと『思っている』。
高給取りが多いという感じにしていかなきゃと『思っている』。

思うのは無料。


殿「だから加工の方も人を育てていかないといけない。今日明日の話じゃないんですよ?
私の方も経営を安定させないといけない。人だけ入れても仕事がなくなったら仕方ないから。

 3人(ベッキー達)が入ってくれた事で生産性も上がってるから、会社にとって良い方に向いている。
だけど育てる事を考えたら、仕事の幅を変えていく意識をしてもらって、幅を広げる練習をしといて貰わないと、いざという時動けないから。

 リーダーを助ける意味で、やりたくないとかじゃなくて、嫌とか良いとかじゃなくて、こういう風にやったらどうかしら?って二択にして意見を言って欲しい。意識的に覚えて貰って、幅を広げて欲しいというのが私からのお願いです」

これよ、断り辛い空気。ボス、これよ。
イエスと言うまで諦める気がないなら断る隙を与えないでほしい。

しかしベッキーの表情がずっと曇っているからか、殿の前説がどんどん長くなる……。





殿「何かある?遠慮なく言って。素朴に感じたのでも良いから」

ヤレバ「じゃあ雑感で。たまたま、Nさんのお母様のご不幸があって、1週間ほど代わりにやったんですけど、やっぱり時間が足りな過ぎて、あたしは残業が出来ないので、お尻が決まった中で、やりたいことは色々あるんですけど、時間的に無理だなって思いました。

 やりたいことはあるんですけど、それもこれも中途半端になるなっていうのでありました。ミスもありました、なので…………」

定時後の井戸端会議(長いと2時間コース)は殿にも目撃されている。残業できないは嘘だとバレている。


殿「現状はそういう感じと言うことね。よく分かります!現場もそうなんです。
出来ないけど社長の言っていることは分かる!そう思ってくれればいいんです。
私の言ってることが伝わってないのが困るんです。私は早くやれとは言ってないんです。
でも長いサイクルの中でいつかは出来る時が来るから、その時にやって貰ったら良いです。いつかはやらなきゃいけない時が来るかもしれない。それは分からないけど、その為に意識しようとして欲しいんです。
でも意識しなきゃ出来ないんです。出来ないけど意識してるのと、意識してないのじゃ全然違いますから。

 出来ないものを出来るようにというのは世の中全部そういうもんだと思います。
1年経ったら変わってると思いますよ。
だからそんな根詰めなくて良いですよヤレバさん」

ヤレバ「根詰めてはないですけど」

勝手に意識高い人にされて苦笑するヤレバ・デキルジャン。


殿「無理!って簡単に言って貰っては困るから。頭の片隅に置いてもらって、段々出来てくれれば良いんです。
"2人も"そうです。知識を広げれば幅が広がるでしょ。自分が楽だから今のままでいいや、だと話が進まないんで」

"2人"はベッキーとヤレバのこと。殿は完全にポニテを視界に入れておらず、数にも入れるのを忘れている。


殿「営業も三代目(息子)を育てるために、先輩はあえて引いてる所もある。本当は自分でやった方が早いんだけど、そういうのも必要だから。
どう?何かある?」

ベッキー「まぁ少ない人数の中でぇ」

あるんだ。

ベッキー「新しい方向に向かう為にはぁ、強力なリーダーシップとぉ、みんなが同じ方向向くことが必要だと思うんですけどぉ、今それが出来ているかって言ったらぁ、微妙な所でぇ、私達はそう感じています」

だから出来ることの幅を広げてリーダーを補佐します?

ベッキー「私達の立場からして。私達が守るべきもの。んー」

女優出て来たな。

ベッキー「私達の上司が、私達に求めているものと、殿が、私達に求めているものが、今違うのかなって、そう感じました。今の話を聞いて」

溜めるねぇ。これ物語の鍵を握る重要なセリフの前でしょ。

 ちなみに、私達の上司というのはNのことを指している。
この"仕事の幅広げろ問題"を、Nの問題にすり替える態勢に入ったと見える。

ベッキー「私は10年くらい長い間加工検査をやって来て、特に私は一般チーム(単発や雑多な物が多いのでそう総称されている)をずっとやってますけどぉ。
納期を守ってぇ、しっかり、あの……なんでしょう」

模索しながら喋っている。
とりあえず語尾を伸ばす喋り方どうにかならんか。

ベッキー「納期通りにやる事を一番重視している所にぃ、その手配等の仕事が入るのは……あのー……問題は無いのだけれども」

問題があるって言うのかと思った。

ベッキー「それをすることによって、加工が回らなくなることも分かってるから、自分達の中でぇ。

 ヤレバさんも同じ。ヤレバさんもそっちの手配の仕事が中心になると、快速急行社チームを実際に!回しているヤレバさんがいなくなるので!誰に聞いたらいいの?という事が既に起きています!」

「実際に回しているのは上司ではなくヤレバさん!」という声が大きかった。演出家の指導だろう。

 おそらくベッキーは大袈裟に言っている。
自分1人の主張でも全員がそう言っているとハッキリ言える人で、度胸がある。

活路を見出したように活き活きとし始める女優ベッキー。


ベッキー「それをどうしていったら良いのか、と言ったらぁ、やっぱりみんなが同じ方向を向いてぇ、なんだろう……『私はこれをやるから』じゃなくて……なんだろうじゃなくて……もう少し、全体を……Nさんが全体を見なくちゃいけない。今の現状としてぇ」

 ベッキーは自分のチームの上司であり、ヤレバ・デキルジャンのチームの上司でもあるNに、加工室全体、パート1人1人の行動をちゃんと把握して欲しいとずっと要求して来た。

 ISOの活動上、部門長というリーダー役が必要で、Nはそれなのだ。(昇給するわけでもなく、責任と役割だけ増えていくやつ)
そのリーダーらしいことをいつまでもやろうとしないNに問題があるから、自分達に仕事の幅を広げろなんて話が来たのでは?ということを言っている。


殿「うん、いやだからさ、全体を見るのはさ、出来る限り多い方がいいんですよ。ここにいる人達は。
ベッキーさんも見えてれば、それをNさんとかに相談したりして」

K下「うん……」

殿はベッキーの理想とは違う回答をした。

殿「例えばさ、管理職のボスさん1人に任せっきりにしてもさ、1人じゃ見れないこともある訳で、そこをみんなで一つの方向になれればいいのかなって。なかなかみんなで一つになるっているのは難しいんだよな」

ベッキー「難しいんですけど、私達の立場でぇ、パートさんの仕事を采配するというかぁ、お願いしたいけどこの人にはこの仕事があるだろうとかぁ、こっちのチームの方が今手が足りてないと言うことがぁ、共有されてないんでぇ」

 ベッキーは怒っている。ベッキーがオイルをぶちまけているのはNの方なのに、殿は管理職のボスのことを言っている。役割的にはそうなる。


K下「なんというんでしょう。全体を見る人が、いて然るべき」

出た『然るべき』。
名からして、ベッキーは『べき』という口癖が非常に多い。おそらく一生分聞いている。

 ベッキーはボスを責めているのではなく、Nを問題にして欲しいと主張を繰り返す。


殿「今ボスさんが見てるのじゃ目が届かない?」

ボス「ずっと加工には入れてないんで」 

殿「そうだよな」

 ボスも今殿から言われて、ベッキーの全体を見ろという要求に応えなきゃいけないのは自分か、と気が付いたよう。


ボス「そこの役目をNさんOさんにやってもらいたいけど、やっぱりラミネートに入ったり、っていう所で、やっぱり全体を見れてないかなって」

殿「中小企業の弱いところでね、そこまで大きな規模で出来てないから、誰かがやります!って言ってくれたら。
ベッキーさんやってくれよ、って感じなんだよ」

ボールが返って来た。

殿「だけどそうなんだよ、冗談じゃなく。自分がやってみます!って言ってくれる人が出てくれればね。

 真剣に考えてくれるのは良いけど、考えれば考えるほど文句しか出てこなくなって組織が乱れちゃうんですね。
さっき言ってたように同じ方向向くにはそれぞれがカバーするようになればいいと思うんですね。
一つになると言ってもこの人数しかいないんですよ。ここで上手くやって貰うしかない。理解した上でやってもらうしかない。
すごいリーダーシップが取れる人がいれば良いけど、なかなかね。
良い悪いも個々に違うから、その中で一生懸命やっている。私も探り探りではあるけど、取引先なんかに行くと、上司の悪口を言うわけよ、我々業者に」

寄り道始まったじゃん。


殿「中堅が今の部長はダメだとか〜(略)吐口がなくて中に言うと角が立つから〜(略)」

 定年退職した隣の元上司も似たような事してたな。
隣の元上司はお客さんに殿の妹(取締)の悪口を言ってて、そのお客さんは自分の上司の悪口を言って傷の舐め合いで関係を築き、隣の元上司の数々の不具合を帳消しにしてもらっていた。


殿「大手でも組織はバラバラなんですよ、でもそれぞれ一生懸命にやってるんですよ。
キリがなくなっちゃう話でね、その中でも上手くやっていくしかないって事で、だからあんまり真剣に考えなくていいって言いたい部分はそこなんですよ。

 10人いればみんな性格違うから、みんながみんな自分が良ければになっちゃうとバラバラになっちゃうからね。
ベッキーさんが言ったようなリーダーがいれば良いんだけど、それはそれでそのリーダーシップが気にくわねえって言う人が出てくるからね」

何でもかんでも把握されて口出ししてくる系はわたしはちょっとなぁ。


殿「私はついて行きます!って人もいれば、やってらんねえよって人もいるし、難しいんですよ。誰が上に立っても。完璧な人なんていないと言いたい。10人中8人良くても2人はダメって言うし。
社長の経営が良いです!って言う人とダメです!って言う人が必ずいる。
皆さんの意見を聞いた中で、次にどう活かしていくかなーって所ですよね」



殿「まあいいや。ここでは難しく考えて変な悩み方をする為の会議じゃないので!
今の問題点は改善しなきゃいけないけど、グダグダなるような形は望ましくはない。


私はこういう方向性で行きたいんだけど、ヒントも頂いているから、それも踏まえてね、皆さんに理解して貰いながら我慢してもらいながら、揉める為の会議をやってる訳じゃないから。
だから今の2人の意見は十分分かりました。それも対処していきましょう」

 質問を締め切った。ポニテには聞かないようだ。
ボスも殿もポニテは容易いと思っているよう。

 ボスは最初にポニテを獲得しようと動き、殿は難しいベッキーとヤレバさえ説得できればポニテは後から付いてくると考えている、と思われる。というか忘れている。


殿「意識をして欲しいんです。明日からも協力してやっていきましょう」

お前はポニテを意識しろ。

殿「すみません長々と、1回目にしては真剣になり過ぎてしまいました 笑」

2回目は来ねえようしてくれ。
ベッキー達が「俺の指示に対して反抗的」だから殿が登場したわけで、2回目はベッキー達にかかっている。

殿「私も良いヒントが聞けました。あとは個別にどんどんやって相談するといいよ
"2人も"理解出来てると思いますよ。だから自分だけっていうのはマズいというのと、その確認は出来たという事で」

3人だって。


ボス「ちょっとあと20分くらい、18時半まで大丈夫なんでやっていこうかと思います」


 殿はご機嫌取りの為か、タイ土産のマンゴーのグミを配り始めた。
なんで剥いたミカン持ってミーティング来たんだろうって思ってたらマンゴーのグミだった。

これが噂の・・・・・・甘過ぎてマズいと言われてたやつ。
歯磨き粉の味がするとも言われていた。
とりあえず愛想良く貰うけど、口にはしないようにしよう。

 続けて、リクローおじさんのチーズケーキが配られた。
取締がカットしてきた。だいぶ気を遣っている。ポニテのことは忘れていたが。

切り分けたチーズケーキが一切れ余り、取締は気を遣ってる相手のヤレバに差し出すが、頑なに拒否したため、その一切れがわたしに回って来た。
美味しかったのでわたしとしてはラッキーだが、殿がいる前では流れに乗っていただきたい。
気を遣ってるのにそれを拒否とか、繊細な殿一族には何かが損なわれる大きな出来事だ。



残りの20分も濃いので次回の日記に回す。



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