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頭が割れた日

こんにちは、イツキです。

数年前の夏の終わりの話です。

私はクローン病の入院開けで、
即友達とビアガーデンに行くという不良行為を行った。

飲んでいる最中は普通だったのだが、
友達と解散して立った瞬間、
軽く目眩がした。
おや?
と思いつつ、
帰宅しようと駅に向かっていると、
もう少しでエレベーター、
というところで完全に意識が遠のいた。

ウッ、後ろ頭が痛い・・・
と思って目を覚ますと、
私の視線は駅のエレベーターホールの天井に向いていた。

あれ?
なんで私はここにいるんだっけ?
よくわからないけど、
とりあえず立ち上がらなきゃ・・・
と思い、よいしょ、と立ち上がるとさっきまでの諸々が思い出されて、
そうだ私は友達と解散して家に帰るところだったのだと思い返した。
なんでかしらないが異様に視界が悪い。
エレベーターのボタンを押して地下に降りようとしたところで、
「大丈夫ですかっ?!!?」
と若い女性に声を掛けられた。
私は、
「人に迷惑を掛けない」
を信条としているので、
「大丈夫です、大丈夫です」
と言ってエレベーターに乗り込んだのだが、
下、のボタンがどこにあるのか見えない。
おまけにまだふらつく。
困ったなと思っていると、
「本当に大丈夫ですか?!目、見えてます!?お姉さん血まみれですよ!!?
と言われた。

え?
私、
血まみれなの???????

動揺すると同時に吐き気がやってきた。
さっき意識を失って倒れた瞬間に頭を打ったらしく、
吐き気がやってきたのだ。
トイレに行きたいが、
視界が悪すぎてトイレまで辿り着ける気がしなかった。
私は声を掛けてくれたお姉さんに、
「すみません、お手洗いまで連れて行っていただけますか・・・?」
とお願いし、
駅構内のトイレに連れて行ってもらった。
おえっと吐くと吐き気はだいぶ楽になって、
私は手を洗うべく洗面台に向かった。
そしてそこの鏡を見て爆笑しそうになった。

自分が、あまりにも、血まみれだったから。


その様相はまるで、
「殺人現場からギリギリ逃げ出してきた人」
くらいの血まみれ具合で、
顔の半分は血に染まり、
着ていたトップスも鮮血により半分以上が真っ赤になっていた。
私はウケた。
自分の人生でこんなに血まみれになることがあるとは思わなかったから。
私はその様子を写真におさめようかと思ったが、
トイレから出てきた人たちが皆ギョッとしていたので、
早くここから去った方がいいだろうと思い、
写真は諦めてその場を立ち去ることにした。

トイレから出るとさっきのお姉さんはもういなくなっていて、
(出血により私の視界が悪すぎて見えなかっただけかもしれない)
私は帰宅しようと改札へ向かった。
しかし、打った頭が痛いのと、
どうにも軽い目眩がするのとで、
簡単に帰宅できそうになかった。
仕方ないので私はその辺のベンチに座り、
上半身を寝かせて休んだ。
そうしていると体感10秒くらいで駅員さんがやって来て、
「大丈夫ですかっ?!?!」
と声を掛けられ、
人に迷惑を掛けたくない私は、
「大丈夫です」
と答えたのだが、
「救護室へ行きましょう!!」
的なことを言われ、
あっという間に車椅子に乗せられてベッドのある部屋に運ばれた。

今思い返せば、頭を打って混乱していたのだと思うが、
私はとにかく帰宅しなくてはという一心のみで、
早く帰りたいと思っていた。
しかし駅員さんが
「何があったんですか?」
と聞いて来て、
「ちょっと倒れて頭打ったみたいで・・・」
と言うと
「ちょっと怪我見せてください」
と言われたので頭の後ろを見せると、

「これ・・・だいぶ割れてますよ」

と言われた。
だ、だいぶ割れてる!???
私の頭が?!!??

私は動揺した。
頭を打って出血しているとは理解していたが、
まさか自分の頭が割れているとは思わなかったから。

「病院行きましょう、救急車呼びましょう」
と言う駅員さんに対し、
頭を打ち、判断力が低下し、
なおかつ絶対人に迷惑かけたくないマンの私は、

「大丈夫です」

とその申し出を断った。
頭、割れてるのに。

今思い返せばどう考えても病院に行った方がいいだろと思うが、
その時の私はなぜか
帰って寝れば大丈夫
(大丈夫なわけない)
と思っていたので、
とにかく早く家に帰してくれと思っていた。
そこから駅員さんと私の
「救急車呼びましょう」
「大丈夫です」
の応酬がひたすら続いたのだが、
あまりにも粘る駅員さんに負け、
私はしぶしぶ救急車を呼ぶことに同意した。
そんなおおごとじゃないのに・・・
とその時の私は思っていたが、
冷静に考えて駅で意識を失って倒れて頭を打って頭が割れて大流血していたら、
どう考えてもそれはおおごとなのである。

救急車が呼ばれ、
私は人生何度目かの救急車に乗り、
遠くの病院に連行された。
そして診察の順番が来て、先生が私の傷跡を見て一言、
「あー結構いってますね。縫いますね
と言われた。

ぬ、縫う?!
頭を?!!?!

動揺しながらも私が
「麻酔してほしいです!」
と言うと、先生は
「あー、麻酔した方が痛いからしないです
と意味不明の供述をし、
私は結局無麻酔で頭をホチキス的なものでガシャリっと四針ほど縫われた。
その間、私は心の中で悲鳴を上げ続けていた。
「一応CT撮ります。あ、あと今日は入院してもらいます
と言われ、
何の準備もしていない私はそのまま入院することになった。
当時の彼氏は
「転んで頭を打っただけ」
と認識したらしく病院には来ず、
男友達が必要なものを届けに来てくれた。
その時の彼氏はどう考えてもイカれていたのだが、
それはまた別のお話。

私は病院で一夜を過ごし、
(何度も何度も住所と生年月日と名前を聞かれた、多分意識がハッキリしてるか確認してたのだと思う)
翌朝も元気に住所と生年月日と名前を言えたので無事帰れることになった。

会計が五万円近くしたので、
その時が一番頭痛がした。

頭を縫った針は一週間後に抜糸?抜針?があり、
私はその街の果てにあるような病院に赴き針を取ってもらったのだが、
その時担当してくれた先生が
「これが勉強ばかりしてきてコミュニケーション能力が育まれなかった医者の実例!!」
と言いたくなるような先生で、
診察に入ってぼそっと
「横向いてください」
と言われて横を向くと、
先生は無言で

ブチブチッ

と私の頭の針を抜き出した。
何事!???!?!?!
と思って看護師さんの方を見ると、
「アーメン」
的な顔をして俯いた。

まじかよ。
私を見捨てるのかよ。
看護師よ。

しかしきっとこの医者はいつもこの調子なのだろう。
私は全てを察して無言で針が抜かれる痛みに耐えた。

余談だがその時打った頭は、
その後数年に渡りたんこぶとして残り続け、
しばらくは触れると痛みをもたらし続けた。

皆さんには、
万が一頭が割れたら即救急車を呼ぶことをお勧めしておく。
(当たり前)









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