録画しておいた先日のガイアの夜明け「企業買収に潜む ”詐欺師” 」を見た。
語弊あるかもしれないけれど、これがめちゃくちゃおもしろかった。
センシュー化学というノーベル賞受賞の研究を支えた精密機器を製造・販売する会社の売却を巡り、M&A詐欺に遭ったというドキュメント。
コロナ前には年商8億円あったセンシュー化学は社員の引き抜きなどにも遭い、その後、債務が3億円に膨らむ。また、奥さまが認知症になったことで介護をしたいとの思いから会社の売却を決めたという社長さん、76歳。
他に、この一連の話に登場するのは M&A仲介会社のペアキャピタルと、センシュー化学を買収をしたルシアンホールディングス。
ペアキャピタルが制作した100社近い買い手候補のリストが映し出されていたけれど、大半の会社が「赤字体質の改善が難しい」という理由で買収を見送った。そんな中、唯一買収に手を挙げたのがルシアンだった。
ぼくはこの時点で警戒すべきだったと思うけれど、結局ルシアンに500万円で会社は売却される。
番組では契約締結後、郵便局へやって来た社長さんの通帳が映し出されている。
以下、番組のナレーション
会社の譲渡額として、ルシアンホールディングスから500万円が振り込まれていることを確認。
この500万円に、消費税分の50万円を上乗せした合計550万円を仲介手数料として、その場でペアキャピタルに振り込みました。
えっ、どういうこと?
もしや番組のミス?
確認のため、見直してしもうたわ。
500万円で売却した会社の仲介手数料が消費税込みで550万円なら、この社長さんの実質的な売却益はマイナス50万円ということになる。つまり会社の売却益がなくても、3億円の債務から解放されることがやはり一番の願いだったんだろう。
奥さまの介護をしたいという気持ちも本当だろうけれど、率直にいえば76歳にして債務3億円の会社を抱えているのは、相当な精神的プレッシャーだったのだと思う。他に打つ手もなかっただろうし、溺れる者は藁をも掴むという心情だったんだろうな。
「おめでとうございます」とまでは思えないけれど、それでもここで終わっていれば社長さんも安堵されていたに違いない。
ところが、運転資金として残してあったセンシュー化学の預金は、会社譲渡直後からルシアンの口座へ移され、資金が底をついたセンシュー化学は1年半で倒産することになる。
ルシアンには、実権を握っている男性が2人と代表取締役が1人。
この雇われ社長は買収先企業の連帯保証人にもされているため、自身も3億円の債務を抱えているという。要するに、この社長は人柱にされたわけだな。
昔、山一證券が自主廃業を発表した時、「私らが悪いんであって、社員は悪くありませんから!どうか社員のみなさんに応援をしてやってください、お願いします」と記者たちに向かって涙ながらに訴えていた野澤社長を思い出した。
野澤社長も人柱にされ、就任してから山一證券が2600億円以上もの巨額な簿外債務を抱えていることを知らされた気の毒な人だった。
つづく