デジタル赤字
「2023年の経常収支が25兆円超の過去最大黒字になった」けれど、その中身を知れば、諸手を挙げて喜べないないなぁと思う理由を述べてきた。
既述のもの以外にも課題はたくさんあるけれど、国際収支(経常収支)について触れたので、その中身をもう少し掘り下げたい。
少し前に載せた経常収支の推移と構成のデータを、もう一度引用させていただく。
前回は、この表の黒字である第一次所得収支について書いたので、今回は0.0から下の赤字部分、その中のサービス収支(棒グラフのピンク色)について述べたい。
ここで、財務省が公開しているサービス収支の内訳のグラフを。
サービス収支(黒色の折れ線グラフ)が慢性的な赤字であること、旅行収支の黒字をデジタル関連の赤字が帳消しにしてしまっていることがわかると思う。
俗に言う「デジタル赤字」である。
このデジタル赤字の背景には、述べるまでもなくGAFAMをはじめとする米国や海外プラットフォームへの支払い、依存がある。
個人は動画配サービスや買い物の決済など多くの場面で利用するのが日常になったし、企業はいろんなクラウドサービスやウェブ広告売買の利用料などが米国をはじめとする海外プラットフォームへと流れて行く。
このデジタル赤字の増加が顕著なのはグラフを見れば一目瞭然で、2003年には5.4兆円にまで膨らんだ。コロナ禍が明けてインバウンドでせっかく増えた旅行収支の黒字分もすべて飲み込んでいることもわかる。
また、今や必須とも言えるDXが進めば進むほどこれらの利用は活発になるわけで、今後も日本のデジタル赤字は止めることができず加速、拡大していくことも想像に容易い。
そして、もちろんこれは外貨買い・円売りの要因になる(円安要因)。
政府を筆頭に国を挙げてインバウンドに力を入れるのは結構だけれど、裏を返せば、もう日本にはそこの部分でしか戦える(稼げる)ものがないということがデータからも読み取れる。
けれどインバウンドによる収益は「水もの」とぼくは考えていて、恒常的なものとは到底思えない。今のインバウンドの多さはコロナ禍による反動や時期的なものもあるだろうし、過度な円安が追い風になっているだけとも思う。だからこれらの需要が一巡した後には、どうなるんだろう。
サービス収支の赤字をかろうじて抑えてくれていた旅行収支の伸びは、おそらく鈍化することになる。一方、日本のデジタル赤字は常態化している上に、今や海外巨大プラットフォームへの依存はデフォルトであり、旅行者が流動的な水ものであるのに対し、デジタルサービスは企業も含めた利用者数の多いサブスク(定額制)の安定性があるともいえる。
それに加え、プラットホームの資本力、技術力、どこを取ってもこの分野でもはや日本に勝ち目はなく、残念ながらこの力関係が覆ることもまずないと思う。
インバウンドが一巡すると旅行収益は鈍化するだろうけれど、デジタルサービスによる海外企業への支払いは増加の一途なので、つまり、日本のサービス収支の赤字は今後、いま以上に拡大することになると推測している。
つづく
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