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『ケトル』の特集が面白かった 2.

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

ブレードランナーには、レプリカントと呼ばれるアンドロイドが登場する。
彼らは人間の都合で製造から4年間という寿命に設定されていて、これが人間側にとっての安全装置となる。もし、レプリカントが人間に反乱を起こしたときのための保険のようなもので、この設定(物語上の)は、ロボット三原則やAI脅威論に起因するのだと思う。

映画は、そんなレプリカントにも感情が芽生え「寿命を延ばしたい」と願い、そのための行動をするとても切ない物語だけれど、現実的には「感情を持つこと」を抜きにしてもレプリカントのような完成度のロボット、アンドロイドはおそらく無理で、仮に現実になるとしてもまだまだ先のことだと思うぼくの考えは、今回のケトルを読んだことで確信めいたものを感じた。

中でも人工知能研究の専門であり、ご自身がプログラマーでもあるという清水亮さんのお話はとてもおもしろくて興味を覚える。

そもそも人間と同じレベルで思考できるAIの開発においてもっとも難しいのは、こうした「生きる欲望」を芽生えさせることなんです

僕らには種を残したいという本能があって、だから欲望がある。でも、AIには種を残したいという本能がないんです。だから・・・

他にも「人間として育てられなければ、機械が人間になることはありません。知能を構成するのは、記憶よりも学習プロセスなんですよ」など、なるほどと思うお話がたくさん。
そう思うと映画 『CHAPPiE』は、理に適った設定だったのだと感心したり。


現実世界でも二足歩行のロボットや人間の手に近い動きをするロボットアームなどの技術的な進歩、ソフトバンクがロボットに感情を持たせようとされている研究開発など本当にすごいとは思うけれど、ぼくはどうしてもヒューマノイド(人型)である必要があるのかな、と思ってしまう。
話しかけやすいとか愛着がわきやすいとか、「そこ(本物の人間に近づける)が目的なんだよ」という開発だとは思うけれど、本物の人間に近づけようとすればするほど研究開発には膨大な時間と資金を要するだろうと思ってしまう。
すると今度は、人間に近いロボットを作るよりも人間をロボット化する時代の方が早いんじゃないか、という話が出てくる(ぼくもそう思う)。

実際にFacebookは、つい先日、ダイレクト・ブレーン・インターフェース(頭に思い浮かべるだけで文章が書けるコンピューターの入力技術)の実用化を目指すと発表したばかりだし、少し前にはテスラ、スペースXを創業したイーロン・マスクさんが「ニューラリンク」という会社を設立した発表があった。

このニューラリンクでやろうとしていることが、小型の電極を脳に埋め込んでAIと接続する技術というまるでSFのような話だから、いよいよ「攻殻機動隊」の世界、電脳がまったくのSFでもなくなりつつあるのだと思う。

そもそもイーロン・マスクさんがスペースXを設立した目的は温暖化、人口増加による危機的な地球から人類を火星に移住させるためという、まるで子どものような空想を本気でやろうとするものだし、火星移住実現までの間に少しでも地球の環境を守らなければ…じゃあ、二酸化炭素を排出しない電気自動車を作ろうというのがテスラ設立の動機だったりする。
火星移住の実現はまだまだ先だけれど、確実に実績や結果を残されてきている彼の行動力を考えると、”この人なら本当に電脳も実現させるに違いない” と思わずにいられない。

攻殻機動隊の原作が発表されたのが1989年。
おそらく当時、あるいはそれ以前から電脳や義体といった概念は存在していただろうけれど、未来に実用化されるであろうテクノロジーを当時から見事に描かれていた士郎正宗さん(「攻殻機動隊」の原作者)は、やはり天才だな。
そして、こんなことを本当に実現させようとするイーロン・マスクさんも言わずもがな。

いつの時代も本当に世の中を変えるのは、ごく一握りの、それも紙一重のような天才たちなのだと改めて思った。
 

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