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あの頃、どうだったかな
世の中の空気は、すっかり円安、物価高になった。
耳にタコができるほどインフレという言葉も聞くようになったけれど、直近で物価指数が実質賃金を超えたのが2021年なので、実は意外とまだ最近のことだったりする。
それでも早く円安を止めてくれ、インフレを何とかしてくれ、といった悲痛な声があちらこちらから聞こえてくる。
日銀会見の際、自分が国民の代表であり、まるで正義を背負っているかの如く糾弾するように総裁へ質問をするマスゴミの記者がいる。
こんな人たちが現れるくらいなので、もう世論は完全に悪しきインフレ、それを放置している憎き日銀や政府。といった雰囲気になっている。
じゃあデフレの方が良いのかといえば、もちろんインフレであれデフレであれ、行き過ぎたものは弊害をもたらすので良くない。と、月並みなことを述べたいわけでもない。
若い人は記憶にないかもしれないけれど、バブル崩壊以降、現在の「にわかインフレ」なんて比べものにならないほど日本は長い間、デフレに苦しみ悩まされ続けてきた(と、されている)。
デフレ、デフレ・スパイラル、デフレ不況、円高、値下げ、低賃金、失業・・・
ネガティブな言葉が蔓延し、現在40代以上の人はそれこそ耳にタコができた記憶があるに違いない。
そしてその象徴が「失われた30年」という言葉だろう。どう捉えてもネガティブな表現であり、経済が失われた30年、デフレの30年だった。
これがどの期間を指しているかといえば、バブル崩壊からなので2021年の東京オリンピックまでくらいになるのかな。
そこで、40代以上の人に思い出してみてほしい。
当時(バブル崩壊からアベノミクスの頃)、日常生活はどうだったんだろう。
ちなみに、ぼく自身は料理という修業の道を選んだので時代的にも低賃金が大前提で、バブル時代でさえそうだったのだから、ぼくの経験はまったく参考にならない。
デフレ・スパイラル、デフレ不況とメディアは喧伝していた気がするし、なかなかお給料が上がらず不満もあっただろうけれど、率直に言って今の方がキツいと感じている人は多いのではないか。
実際、最近では「こんな物価高になるくらいならデフレの方が良かった」という切実な声も結構聞こえてくる。
そう言いたくなる気持ちもわかるし、その感覚はおそらく気のせいでもない。
実際にもらうお給料(名目賃金)から物価変動を差し引いた指数が実質賃金で、これが1996年をピークに下落している。
けれど、実質賃金の下落率以上にデフレによって物価指数が下落していたのであれば、実質的には賃金が上がっていたことに相当する。そう考えると、上記のような切実な声が上がるのも腑に落ちる。
一応断っておくけれど、ぼくはデフレを望んでいるわけではまったくない。
それでは、デフレ不況だ、不景気だと騒がれていたあの時代、アベノミクスが開始される以前、一番困っていたのは誰なのか。
やはり、輸出産業と観光産業だったのだと思う。
つづく