ゴールドラッシュ
経営をしている人などが教訓として、18世紀に起きたゴールドラッシュの話をされることがあると思う。
金儲けを目当てに多くの人がカリフォルニアに集まり金を掘るけれど、本当に大儲けをしたのは鉱員でなく採掘に使用するツルハシなど道具を売った人、丈夫な作業着としてジーンズを売ったリーバイス、そして鉄道を建設した人だった、というお話。
Uber Eatsが流行り始めたとき、まさにこれだなと思った。
配達員が金を掘る鉱員で、プラットホームであるUber Eats本体がツルハシやバケツ、ジーンズを売った会社。こうして現代に置き換えればSaaSやサブスク、他にもクレカの会社や公営ギャンブルである宝くじ、競馬、パチンコなど当てはまるものは多い。つまり、寺銭(課金や手数料)の入ってくる胴元(プラットホーム)が一番儲かるビジネスモデルということ。
これによって巨大企業になった筆頭が、GAFAMだと思っている。
SNSなど、中には課金や手数料を支払うことなく無償で使用しているつもりのものもあるけれど、ユーザーはそれと引き換えに個人情報をプラットホームに提供し、彼らはそれを使い巨額な広告費を得ている。
日本人に限らないけれど、もう20年以上もこうして課金や手数料、広告費という形で米国企業へお金が流れている。
ゴールドラッシュに例えれば、ユーザーが鉱員で、道具を売ったり鉄道を建設したのがGAFAMをはじめとしたプラットホームという関係になる。そう考えると先述のNVIDIAはツルハシや線路の材料を供給する立場にあり、最も川上を押さえた企業ということになる。
そして何が残念って、そんなNVIDIAもまた米国企業である。
日本はインターネット時代に完敗したため、川下である日本人ユーザーのお金はほとんどが米国企業へと吸い上げられることになった。そして現在、AI時代に変遷してもなお川中、川上を押さえているのは変わらず彼らである。
ということは、向こう何年あるいは何十年と、またこういった巨額なお金が米国企業へと流れ、彼らが益々活況を呈することになる。
30年ほど前までは日本の技術が世界を席巻していたけれど今では完全に衰退し、世界から置いてきぼりとなったこの国は経済後進国になった。
胸中に去来するのはどうしようもない敗北感だけれど、まぁそれでも世間の空気としてはまだまだ楽観的な印象を受ける。
何せ、30年間も続いてきたデフレに慣れきってしまった日本人にとっては、急に世の中のルールが変わるようなものだから現実感が伴わないのも仕方がない。
ここまでに述べてきたGAFAMやNVIDIAだの、巨額な時価総額の話などは、ぼくらには無縁で現実感のない遠い世界の話である。
へぇ〜、そうなんだ、なんだかすごいねぇ。程度のものであり、そんなぼくらにとって重要なのは、そのサービスの利便性や娯楽の内容そのものの方だろう。
しかし現実には、これら大きな経済がまわり回ってぼくらの身近な生活を圧迫していくことになる。
最近でこそ、ケチャップやオリーブオイルなど身近なものの多くが急激な物価高になったことで世間の空気も危機感を帯びはじめた気がするけれど、個人的には今のインフレ(物価高)はまだ入口に過ぎないと思っている。
そして、その要因の一つである円安もぼくはまだ続くと推測している。
つづく