コーヒーについての私的考察 5.
※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。
サードウェーブという言葉を目にしはじめたとき、あれ?と思ったことがある。
サードウェーブと呼ぶくらいだからセカンドウェーブ、ファーストウェーブもあったに違いない。
ところがぼくは30年以上飲食業界にいて、自分で店をやってからももう20年にもなろうとしているけれど、セカンドウェーブやファーストウェーブといった言葉を見聞きした記憶がない。まったくない。
ぼくが勉強不足だったのか、まさか業界を挙げてぼくにだけは内緒にしていたなんてこともあるまい。
今のブームがサードウェーブなら、スタバさんやタリーズさんといったシアトル系の流行したときがセカンドウェーブだと容易に想像がつくけれど、じゃあファーストウェーブってどこだ? 日本のものだけれど喫茶店の時代なのか? と思っていたら19世紀後半から1960年代に大量生産、大量消費された時代のものを指すらしい(インスタントコーヒーなのかな)。
道理で聞き覚えがないはずだと思ったけれど、じゃあシアトル系のコーヒーが日本で流行りはじめたとき、セカンドウェーブと呼んだり書いていた人っていたのかな、と思う。
エスプレッソやカプチーノ、バリスタという言葉が日本で一般的に広く認知されるようになったのも、個人的には少し前くらいの印象だけれど(これは単に自分が歳をとったという証拠)スタバさんが日本1号店を銀座に出されたのが1996年で、うちが最初の店を出したのが2年後の1998年。
自分で店をやったタイミングということもあるけれど、シアトル系に限らずエスプレッソやカプチーノ、カフェオレといったものに、ぼくはかなり惹かれた。
だから当時その類いの活字や言葉にはかなり敏感になっていたはずだけれど、やはりセカンドウェーブという言葉を見聞きした覚えがない。
この辺りについては今度、プロのコーヒー屋さんにご教示願うとして、よく外れるぼくの推測を(先日、京都のミルク入りコーヒーの起源も外したばかり)。
西海岸辺りのコーヒー屋さんや焙煎士さんの会話(※フィクションです)
「深煎りじゃなくて、もっと洗練された新しいコーヒーができないかな」
「じゃあ上質な豆を使い、豆本来の味や香りを活かすために深煎りをやめて浅煎りにしよう」
「これって、新しいよね」
「やはり流行り始めてきたね。これまでのものと差別化して新しいムーブメントにするためにも、何かかっこいい呼称があった方がいいよね」
「スペシャルティコーヒー(スペシャリティコーヒー)」
「いいね!」
「サードウェーブ」(これは、メディアが付けたような気がする)
「いいね。でも、どうしてサードなの?」
「コーヒーの変遷を調べたら大きく分けて大量生産の時代があって、その次にスタバさんやタリーズさんのような深煎りのブームがあったから」
「なるほど。じゃあ、その大量生産の時代をファーストウェーブ、シアトル系の時代をセカンドウェーブって呼ぶことにしよう」
つまりサードウェーブありきで、ファーストウェーブ、セカンドウェーブが定義づけられたのでは?という推測、いかがでしょう。
つづく