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連邦の白い悪魔

ドゥドゥーン

ということで、また Netflix作品

「機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム」

なんと、「機動戦士ガンダム」を完全新作シリーズとして世界独占配信。

それも3Dアニメーション


なんだか嫌な予感がする・・・


それもそれも監督、脚本とも外国人


もう嫌な予感しかしてこない・・・


これは外国人監督に限った話じゃないけれど、これまで日本の名作漫画やアニメが実写化によってどれほど台無しにされ、失望のどん底へと突き落とされてきたことか。少なからずそんなトラウマを抱えているので、実写化や3Dアニメ化と知ると、どうしても二の足を踏んでしまう。

が、予告編で見たザクの「鉄の兵器が動いている」といった重厚さ、滑らかな動きとはまた違ったリアリティさが気になって仕方がない。
そして観賞を躊躇するぼくの背中を押したのは、舞台となっているのがファースト・ガンダムと同じ「1年戦争」ということだった。
本作は、ファースト・ガンダムの「オデッサ作戦」を別の視点、別の世界線として描かれている。

じゃあ、見とくか。というわけで一気見。

熱狂的なガンダム・ファンからは、あれこれ意見があるだろうし、連邦軍のモビルスーツ・ジムを盗みにいく作戦など雑だなぁと感じる部分はあったけれど、ぼくの心配は杞憂だった。
ファースト・ガンダムやU.C.ガンダムを超えることはないけれど、それなりにファンであるぼくが見ても想像していたより楽しめた。

まず、物語がガンダムを擁する地球連邦軍の視点でなく、ジオン公国軍視点だったのがいい。
ファースト・ガンダムの時から描かれているのはあくまでも戦争であり、連邦軍、ジオン軍どちらにもそれぞれの正義があるというリアリティ。
ジオン軍の兵にだって家族もいれば友人もいるし、帰る場所もある。
あの時代にあって、こうした勧善懲悪という子供向けアニメでなかったことがガンダムの魅力であり、ここまで支持された理由の一つだと思う。

そう思うと、本作のタイトルは「ガンダム」じゃなくて、「ザクII  復讐のレクイエム」でも良かったんじゃないかな。

1話 20分強という短さで全6話だからサクサク見れるのは良いけれど、この短い時間で ”ぼくらのガンダム” を表現しきるのは、やはり難しいよなぁ。

後半になり、ガンダムのパイロットとしてアムロを彷彿とさせる少年が登場する。ファースト・ガンダムで少年だったアムロがガンダムのパイロットだったから本作でも少年が設定されたのだと思うけれど、「1年戦争」の時、アムロ・レイは15歳、ホワイトベース艦長のブライト・ノアは19歳という設定で、他の主要登場人物の設定もみんな少年少女たちだった。これこそが戦争の不条理さを表していたと思うんだけどな。
まぁ、もともとガンダムは重厚長大な物語なので、時間の制約などを考えるとこれは仕方がないのかな。

「1年戦争」が舞台だけれど、本作にシャアやアムロは登場しない。それでもこの短い時間の中で、ちゃんと「ガンダム」になっていたのは、お見事だったと思う。

主役がジオン軍のパイロットだから、ガンダムのパイロットの顔や声は後半までほぼ出てこない。それでも、ガンダムのちょっとした動きからパイロットの葛藤が垣間見えたり、最後の「あなたと私は同じなのよ」「なぜあなたの考えがわかるの」「確かにぼくたちは、もしかしたら・・・」というセリフなどは、まさに ”ニュータイプ” の概念を理解されている本当にガンダム好きな人が書かれた脚本や演出なんだなと感じた。

しかし、本作に限らず3Dアニメーションで描かれる人物というのは、ロボットの ”不気味の谷” と同じで、リアルに近づくほど違和感を覚える。それなら個人的には「攻殻機動隊」くらいにしておいてくれた方がいいなぁ。
Unreal Engine 5(アンリアル・エンジン5)という最新ゲーム制作の技術が使われているそうだけれど、人物以外の建物や景色、特にモビルスーツや兵器は実写と見紛うかのようなリアルさで驚嘆する。

そんなリアルさで描かれたガンダムが現れた時の違和感と怖さといったら。
いや、3Dアニメーションだからでなく、その禍々しいデザインは「ぼくの知っているガンダムじゃない」感がすごい。
なんだろ、ザラブ星人が変身したニセウルトラマンを見た時のような違和感と、「ゴジラ -1.0」で見た圧倒的に強すぎるゴジラに覚えた絶望感といったものがあった。

ファースト・ガンダムの時から「連邦の白いやつ」とジオン軍から恐れられ、対量産型ザクでは圧倒的な戦闘能力の差があったけれど、それでもパイロットであるアムロが呟いたり叫んだりとセリフがあったので感情が伝わってきたものだった。
けれど本作のガンダムは、敵基地攻撃の際もモビルスーツ同士の白兵戦でも、ザクのマシンガンを受けてもビクともせず、超高速で動き、ビームライフル一撃でザクを撃ち抜き、ビームサーベルで次々と切り裂いていく。それも無言、無表情のまま圧倒的な強さで無双するから、とにかく不気味で怖いガンダムのホラー感よ。
また、2Dと違い3Dアニメになった分、その破壊力もリアルに伝わってくる。

ビームライフルって、そんなに威力あったんや・・・

ジオン兵の視点で見たガンダムは本当に怖い、まさに白い悪魔だった。
福井晴敏さんの「戦争はガンダムが教えてくれた」という名言を思い出したなぁ。

今回の作品は壮大な物語の一部でしかないし、この3Dアニメの技術で他のモビルスーツも見たいので、ぜひ続編をつくってほしいな。

シャア専用ズゴックとか、見たいなぁ。



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