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ショートショート|心霊写真

 さあさ、毎年恒例の怪談会のはじまりだ。
 今年はまず、誰から行く?

 なんだよ、また俺かよ。
 一回くらい他のやつから始めても、いいんじゃねえの。

 まあ、いいか。

 俺の持ってきたネタはさ、ほらこれ。写真。
 そう、心霊写真なんだよ、これ。

 肝試しでさ、深夜の廃墟に友だちと二人で忍び込んでみたんだ。
 噂のスポットで撮った写真が、これさ。
 ほら、近づけてよく見てみな。
 友だちと俺の顔の間に、もうひとつ顔が見えるだろ。

 何だと、見えない?
 嘘つけよ、こんなにくっきりと……あれ、いないな。
 おかしいぞ。確かに、映っていたはずなのに。

 まあ、いいか。

 それなら、友だちの足に注目してみろよ。
 ぼやーっと白い光がかかって、半分消えてしまっている。なんと、こいつさ。この数日後に……。
 えっ、なんだって。友だちってどいつのこと、だって。

 さっき言っただろ。
 ほら、俺のとなりに映ってる……、となりには誰もいないな。

 あれー? 変だな。
 俺、ひとりで行ったんだっけ。肝試し。

 まあ、いいか。

 じゃあ写真に映ってる俺を見てくれよ。俺の顔。なんか変だろ。
 違う違う、ブサイクとかそういうんじゃなくて。
 そう、口の横にさ、もうひとつ他人の口が……なに?
 この写真には誰も映っていない、だって?

 そんなばかな。
 ……本当だ、ただの廃墟の風景写真だ。
 おかしいな。さっきまで、確かにポーズ決めた俺が映っていたと思うんだけど。

 まあ、いいか。

 その廃墟にもさ、よく見ると光の玉がいくつも……なに、光なんてどこにもないだと。
 いいかげんにしろよ、そんなわけが……本当だ、真っ黒だ。暗闇だ。なんだ、この写真。

 まあ、いいか。

 ともかくさ、その写真が……写真なんてどこにもないだと?
 くそっ、どこに行ったんだよ、俺の写真。
 誰だよ、悪ふざけしてんのは。返せよ。

 いや、待てよ。

 俺はたったひとり、こんな深夜の廃墟でいったい何を……。
 友だちはいったい、どこへ……。

 まあ、いいか。

<了>

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