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おとぼけビ~バ~JAPAN TOUR2024 @恵比寿LIQUID ROOM

まさに立錐の余地なし、ここまでパンパンに人で膨れ上がったリキッドルームは久々だった。プレイガイド先行の段階でチケットがほぼソールドしたという今回の東京公演。およそ2年前、2022年9月に当地で行われた単独公演も500~600は入り盛況だったが、そこからバンドがさらなる飛躍を遂げたことを証明する客入りと熱気。思わず「おぉ~」と感嘆の声が出てしまうほどに、その景色はとても壮観なものであった。

階段までギッシリ

京都・大阪のアンダーグラウンドシーンで地固めし、十代暴動社をひとつのステップにして海外へ。2020年、全員がせーので仕事を辞めた途端、やってきたのはまさかのコロナ。ライブで飯を食うことと絶望的に相性が悪い状況に心折られる寸前まで行きながらも、なんとかかんとか踏ん張って盛り返し、この2024年はグラストンベリー、そしてレッチリのアメリカ公演のゲストという、キャパが万単位となる破格のブッキングを獲得した4人(とレーベルなどそのスタッフたち)。

苦悩や苦痛をありのままにさらけ出しながらも前に歩を進めてきた、その強さ、しなやかさ。メンバーそれぞれ、考え方が異なるところもあるはずだが、音楽に懸ける情熱ってものが段違いであるのは、ライターとして少しだけ並走させてもらっている立場から見ても十分すぎるほど実感してきた。その結果として、JAPAN TOURでもソールドが続出する今がある。

ポスター渋いですね

だからといって、この日のライブが感傷的なものであったかと言われれば、まったくそうではないのがおとビ~らしさ。ほぼオンタイムではじまり本編60分セット+アンコール5回(!)+ビバちゃん投入で約70分。弩級のショート・チューンを最大出力で繰り出し、颯爽と舞台を降りていく。
普通のバンドの尺度で考えれば短いライブだが、そんなことは微塵も思わせない、満足感・充足感がある。端的にスッキリする。
よよよしえのとにかく明るいMC&客席へのダイブ、あっこりんりんのしょうもな野次ジジイたちに対する愛ある(ときには愛なき)毒づき、基本、言葉は発しないが、テクニカルな演奏をしながら見せる笑顔が素敵で不敵、リズム隊のひろちゃんとかほキッス。
日本だろうが海外だろうか、客が多かろうが少なかろうが素晴らしい演奏と歌をお届けするという鉄壁の意思は、この日も不変だった。つまり、おとぼけビ~バ~の魅力を伝える上で、この長さが適切、ということなのだ。

ポップ・ミュージックの在り方は常に流動的。その中で、おとぼけビ~バ~の尖ったサウンドが徐々に支持を拡大して、LIQUID ROOMをフルハウスにする結果を生んだのはやっぱり夢がある。多くの人に聴かれたいし、お金は稼ぎたいが、シーンやトレンドには一切目もくれず、ただ己の衝動を極めていく、その儚さと尊さ。怒りや憤りも糧にして、でも本当にそんなものを糧にしなきゃならんのか、自問自答を繰り返しながら孤独な戦いを続けるあっこりんりんとメンバーたちに、まずはありがとう、良いライブだった、と言っておこう。

「なぁなぁなぁなぁなぁ、ありがとうは?」

と指を差されて言われる前に。

指の先にはおそらくジジイ

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