原稿用紙一枚分の物語 #8 『生きろ』
「どうしてこんなことになったんだろうな」
そう言いながら、時折来る鈍痛に顔を歪める。
「それまでは、ただ生きるため、
子孫を残すためだけを考えていればよかったのに」
流れる血を癒すように舐める友を見ながら続けた。
「オレらみたいに草だけ喰ってればいいやつもいるし、
お前らのようにお前たちを喰わないとダメなやつもいる。
でもそれもこれも今日一日を生きるため。
それ以上でも以下でもない。
だから、自ら命を絶つことなんてないし、
ましてや喰らう以外の目的で他の命を奪うなんて事もない。
なのに、こんな感情とやらを持っちまったことで、
友との別れを悲しんだり、友を殺すことに胸を痛めなきゃならない」
そう言うと、涙が頬を伝った。
「さあ、早く喰らえ。オレはもう長くない。喰らって生き延びろ。
そしてこんなくだらない世界を変えてくれ」
友は哀しそうに頷くと歯を立て、
そして、吠えながら一気にいった。