原稿用紙一枚分の物語 #5『ストーカー』
「またあの人のところへ行くのね」
サトシのところにこんな変なメールが毎朝のように届く。
でも、行動をチェックされたり、メールが届くぐらいなので、
特に対策はしなかった。むしろ
変に刺激して彼女を傷つけられても困ると考え、
放っておいていた。
ある日、サトシが彼女に会いに家に向かうと、
帰宅途中の彼女の姿があった。
ただあろうことか、その彼女の後をあの女が付けていた。
サトシは「何かしたら捕まえてやる」と意気込み、
様子を伺いながら二人の後を追った。
しばらくすると、彼女は少しずつ歩を速め、
追うように女も小走りになった。
彼女は徐々にスピードを増した。
交差点に差し掛かると一気に走り出し、右に曲がった。
それを見て女も巻かれまいと全速力で走った。
サトシも全力角を曲がった。
彼女は交番に駆け込み、警察官に大きな声で、
「あいつストーカーです」
すぐ後ろの女ではなく、サトシを指さした。