見出し画像

第28回(令和6年度)業務用加工食品ヒット賞レビュー【前編】

【はじめに】
 さすがにこれだけ紹介する商品が多いと、自社商品を紹介している可能性があるので、この手のレビュー記事はPR記事ということにします。
 商品画像は各社HPから引用しております。


「イツキ ヨ……ギョウムヨウ ニハ キョウミガナイト モウスカ?」

 ……という悪魔の囁きが聞こえてきました。こんにちはいつきです。

 加工食品には大きく分けて家庭用と業務用があります。家庭用は皆さんよく見るスーパーで売られているアイツらですね。
 では業務用はというと、普通の方はあまりお目にしないかもしれません。飲食店で働かれた方は見たことがあるかも。

 飲食店で出てくるメニュー、各店で作られていたり、チェーン店だとセントラルキッチンで作られて運ばれていったりもするんですが、全て自社で素材から調理するわけではなかったりするんですね。
 それこそ、業務用の量を自社で全て1から作るのは相当難しい。

 そんな業務用向けに、食品メーカーは業務用商品として商品を販売しています。場合によってはそれこそ、そのまま即食出来るような商品もたくさんあります。

 しかし、食品業界の皆様しかあまり関心を持っていない、その年のヒット商品を表彰する食品ヒット大賞よりもさらに影の薄い業務用加工食品ヒット賞なんてレビューしてもいいのか……と思ったのですが、よく考えたら皆さんの目に触れてないからこそレビューする価値があるのかもしれない、と思い直し、筆を執った次第です。表彰こないだ(9/2)だったしね。

 幸いなことに、家庭用ヒット商品より商品が少ない!
 そんなわけで、令和6年度のヒット大賞レビューしていきたいと思います! でもやっぱり多いから前後編な!

 昨年の家庭用ヒット商品のレビューは↓からどうぞ!

 それではGOGO!

1.シェフが仕上げるシリーズ(味の素冷凍食品)


 名前がなんというか、まさに業務用な「シェフが仕上げるシリーズ」

 業務用製品を使う側のレストランやホテルの人たちが思う課題の一つとして「これ、他の店でも同じ味を出してたりするんだよな……」というのがあります。

 メーカーに依頼してPB(プライベートブランド)、つまりその店独自の製品を立ち上げてもらうこともケースとしてはあります。
 ただ、メーカーとしても、そのお客様専用となるPBは他のメーカーに売ることが(基本的には)出来ない、つまり使いまわしがきかないので「それでもこのラインを使って作るべきかな」という規模間のお客様でなければ、なかなかPBとして商品を立ち上げることが出来ません。

 分かりやすく言うと「〇〇百万円以上の売上見込めないとPBはやらないよ」ということですね。

 ただ、最初に述べた通り「全ての食材を調理加工していてはとても手が足りない」のです。
 「でも味が似通った味は嫌だ、ウヲヲヲ!」という二律背反をちょうどいい塩梅で仕上げた商品、それがこの「シェフが仕上げるシリーズ」であります。

 この商品、どういうものかというと「下処理や下ごしらえをした食品」です。例えば「鶏もも肉の備長炭焼」一口大のサイズにしっかりカットされていて、なかなか設備的に難しい炭火焼きまではしてある。味付けはシンプルにしといたから、仕上げの味付けはシェフの皆さんどうぞどうぞ。そういう商品です。

 ほかにも既に煮込み済みの「三元豚のやわらか煮込み」や土台だけの後は具材をのせて焼き上げるだけ「ベースキッシュ」、いい感じにかッとして合ってあとは焼くだけの「グリル用熟成ポテト」など、「とりあえずめんどくさいところはやっておいたぜ!」っていう商品が並んだシリーズです。

ラインナップ一覧。ニンジンペーストもなかなか作ろうと思うとめんどい。

 特に、やっぱり「鶏もも肉の備長炭焼」はいい商品な気がしますね。炭火なんてなかなか出来ないし、これ使ったメニュー、ホテルのビュッフェとかで「備長炭で焼き上げました」と書けるわけですよ。でもホテルで備長炭使えるわけないですからね。

 こういう商品はザ・業務用だなーと思います。
 もちろん普通に食材を買って調理する方が単純なキャッシュとしては安くは上がるんですが、「ではこの調理にかかる人手は?」とか「調理にかかる時間は?」と考えると、一見高くてもトータルではお得だったりするのです。

何せ今はどこも人手不足。ホテルも外食も、調理にかけられる時間はどんどん減っています。
でもインバウンドで客は増えてる。人手はないのに量は増えてる。そういう時に、こうした業務用食品は役に立つのです。

 なお、サイズは軒並み1kg×10袋とかだったりするので一般家庭には全く向きません……と思ったら、1つ単位でキッシュは売ってたわ。こういうの卸かどっかがなんか流してたりするとか聞いたことあるけど……なんだかなぁ。

2.トリュフ入りきのこペースト(エスビー食品)

 トリュフ。
 言わずと知れた高級食材。世界三大珍味の一つで、本来珍味なはずなのですが、なぜか「美味しい」とか「贅沢」と認知される食材。贅沢は贅沢か。

 トリュフの良さはなんといっても香りの強さです。それは売る側の目線に立つと「トリュフが使われていることをみんな分かってくれる」こと。これが普通の高級食材と比べた時のトリュフの良さです。身も蓋もないこと言えば、単価上げても納得してもらえる。

 そんなわけで外食産業で人気の高いトリュフを、マッシュルームと合わせてペーストにしたのがこの商品です。

最近は業務用でもちょっとデザインに凝ったパッケージが目立つ。
黒基調もトリュフっぽくていい感じ。

 トリュフもキノコなのでね。カテゴリーとしては生鮮食品になるので、あまり簡単には扱えません。しかしこのようにチューブ形態になっていると保管も容易ですし、何より良いところは開封前は常温で保管できること(開封後要冷蔵)。どのくらいの量が出るか予測しにくい店だったりするとなおのこと便利です。

 ペーストなのも、パスタだったり各種ソースと和えてみたりと使いやすそうで良いですね。これ一つ使うだけで「トリュフで仕上げたパスタ」とかになるんですよ。+300円くらい取れそうですよね。

 僕はメーカーの人間なんで「こういう商品作ってる工場のトリュフのニオイ、スゲーだろうなぁ」なんてことを考えてしまうのですが、まぁそれでもお客様のニーズを満たすところが業務用の商品ですからね。ニンニクとかも量使ってる工場は結構ですし……。

 Amazon見てみたら100gの小袋製品がありました。そうそう、こういうのなんだよな業務用……と思いましたが、この手のは開けてしまうともうすぐ使い切るしかないので、そういう意味でやはりチューブタイプは重宝されたのではないでしょうか。冷凍は解凍の手間もかかりますしね。

3.ホテルレストラン用グリーンスムージー1L(カゴメ)

 この身も蓋もないネーミングこそが業務用の華ですよね。

 そんなわけで、説明不要な商品名ですがホテルレストラン用のグリーンスムージーです。1Lだともう家庭用? ってサイズですが、まぁ飲料なんで積めるのでね。

ザ・業務用というシンプルなデザインで大変好感が持てます。

 家庭用のグリーンスムージー、あるいはそれに類する野菜ジュースや青汁といった商品は完全に機能性を謳う方向に流れているのですが(食物繊維がーとか、乳酸菌入れて免疫力UPとか)、そういう謳いは一切なし!

 逆にカゴメがパンフで謳っているのが色合いです。「グリーンが加わるとカラフルだろぉー?」そんだけ。まぁなんか14種野菜と3種果実とか書いてはあるけど。

 ↑のパッケージを見てみても、野菜は30%で、一方果汁は20%も入ってる。多分それほど野菜感は感じない、スッキリした仕上がりなんじゃないですかね。

 でもこれでいいんです。
 むしろこれがいいんです。

 だって想像してください。これが提供されるシーン。ホテルの朝のバイキングに牛乳とかオレンジジュースと並ぶそれですよ。寝起きすぐの朝から濃い野菜ジュース飲みたいでしょうか。そんなタイミングから健康機能が云々を求めるでしょうか。

 もちろん求める人はいるのでしょうが、そういう人は前日からコンビニでそういう商品買ってるんです。ここでは、朝ふわっとした頭でバイキングに寄って、「うーん、昨日飲みすぎたからちょっと身体にいいことしとくか」くらいの人がちょっと飲むためのレベルでいいんです。で、爽やかな飲み口でサッパリシャッキリすればいいのです。

 ある程度家庭用でしっかり市場が形成されたからこその商品とも言え、インバウンドでホテル需要が拡大している時流にも乗ったんだろうなと思います。

 あと、書いてないけど多分価格安そうなんだよなー。Amazonで1本400円でしょ、実際末端だともうちょい安いんじゃないかな……。

 今オレンジジュース、オレンジ不作の影響で高くなってますしね。オレンジジュースおいてたところに変わりでこれを置いたりすることも増えてるかもしれません。

4.具たっぷりソース(ゆず醤油、ガーリックオニオン)(キユーピー)

 ホテルやレストランにおけるソースや調味料の類というのは、やはり自前で用意するのが大変面倒くさいアイテムではあります。

 なにせある程度のバリエーションは求められる一方で、量はそれなりに必要。自家製だと保存は難しく、容器の準備やスペースの確保も大変。
 スペシャリテのソースだったら調理時に作りますが、通常メニューやビュッフェなどでそれぞれに合わせたソースを作るのは面倒くさい。

 ……という市場に入っていくのが、言わずと知れた調味料の雄キユーピーだったり、次に紹介するケンコーマヨネーズだったりするのですが、こちらの商品もそういう商品になります。ほんと、直球150km/hのネーミング大好き。

この容器見るとなんとなく「キユーピーだな」と感じる。

 この手の調味料で具入りって結構大変なんですよね。ポンプで液体を送り出していくと、具材がつぶれたりするんですよ。だから大抵は液体調味料ベースで、店舗で具材合わせるならどうぞ、っていうところを、具沢山のソースで1本で済ませられる、という簡便性はお店としてはありがたい。

 また、この手の商品で常温調味料なのが技術でしょう。冷蔵・冷凍ならこういう商品もいけるのですが、常温だと普通は微生物が問題になります。それを解決して常温、しかもボトルで使えるというのはとても利便性が高い。

 味のチョイスは凄い無難なとこですが、無難だからこそいろんなものに使えるということもあり、とにかく汎用性が高そうな商品だなーと感じますね。なかなか家庭用でこの量は使えないと思いますが、お店では重宝しそうです。

 と言いましたが、Amazonでは買ってる人いるんですね。1L……。

5.塩キャラメルバターソース(ケンコーマヨネーズ)

 業務用マヨネーズ業界では知る人ぞ知るケンコーマヨネーズ。ガーリックバターソースはちょっと話題になりましたが、こちらは塩キャラメルバターソース。なるほど上手いとこ突いたな、という商品です。

バターソースシリーズはこの看板みたいなロゴで統一っぽい

 というのは、この辺りの「甘いソース」ってどこが参戦するかな、というと想定したときに思い浮かばなかったんですよね。それこそ前述のキユーピーとかも調味料のイメージが強いというか。でも乳業メーカーか? みたいな。

 それこそ「こういう市場あったかー」と、↓の写真を見て僕自身も納得した部分があります。

ハニトー(ハニーではない)かぁ……!

 よく考えれば液状キャラメルというのは面倒くささの塊でしょう。そこにケンコーが培ったバターソースのラインナップ。最初から商品として出されると驚きはないのですが、割と無からの市場形成に近いのでは。

 粘度の調整もなく、常温で保存でき、開封後も冷蔵庫からかけておしまい。家庭用には205 gの小さいボトルでも持て余しそうだけど、業務用なら個人喫茶店でも全然使い切れるサイズ。これぞ業務用という商品ですね。

6.「グランマスター(GRANMASTER)」シリーズ(J-オイルミルズ)

 続いては油脂業界の刺客、J-オイルミルズの商品です。

 商品名からは想像できませんが、こちらマーガリンのブランドになります。というか昔から発売してたよな? と思ったら案の定発売10周年とのこと。業務用加工食品ヒット賞、結構ガバガバやな……。

「プリメランi」は欧州産発酵バターを使用した焼き残りするバター風味が特徴、らしい。

 それにしてもラインナップが18SKUとたくさんです。裏を返せば、それだけ製パン・製菓業態のマーガリンへのこだわりは強いということなのでしょう。産地・風味・バターの配合率の違いと、油脂の加工技術。

 油というのは基本的に国産はごく限られているため、どうしても輸入に頼らざるを得ません。昨今の円高で最も影響を受けたのは油製品だったように、こうした商品も基本的には価格が上がった商品になります。

 ただその中でも各種ラインナップを用意して、高いものから安いものまでブランドをつけて選択肢を与えることで、ブランド全体の価値と価格のバランスを取っているのだろうなぁと。

 あと受賞理由の中に「おいしさデザイン工房」でのメニュー提案というのもありましたが、こういう施設は面白いですね。アイテムラインナップが多いと、メーカー側では違いは判るのですが、使う側ではなかなか試せないものですし。こういうことやるとメーカーの社内にも知見が溜まるんだよなー。賢い。

7.創味 みぞれあん(創味食品)

 飛ぶ鳥を落とす勢いの創味食品の「みぞれあん」です。
 おろしたての国産大根をたっぷり使用した「タレっぽくない」あん。

パッケージの強烈な字体が良い。

 先述の味の素冷食の「シェフが仕上げるシリーズ」も、キユーピーの「具たっぷりソース」もそうなんですが、現場で求められるのは「調理感がある」「加工食品っぽくない」ことなんですよね。
 では加工食品っぽくないとはどういうことか? というと、その一つが「具だくさんである」ということなのだと思います。要素は他にもいっぱいあれどね。

 ここの「ドレッシング」と「ソース」と「たれ」と「あん」は、皆さんも微妙にニュアンスを違って捉えていると思うのですが、この商品に関しては「あん」にしたのが上手かったと思います。
 ちょっと粘度があって、パウチが許されそうなイメージがありますね。ソースとかたれならボトルにしてほしいと思うところですが。

 やはり写真でもわかるこの具材感と、創味食品の味づくりに対する信頼、そして何よりこの形態で常温流通品(開封後要冷蔵)というのが素晴らしいです。使い方も和風メニューなら何でも使えそうだな、とイメージできますしね。

 というわけで前半戦終了です! 
 後編はこちらから!

 改めて家庭用食品ヒット大賞を読みたくなった方は↓からどうぞ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?