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第43回(令和6年度)食品ヒット大賞レビュー【中編】

【はじめに】
さすがにこれだけ紹介する商品が多いと、自社商品を紹介している可能性があるので、この手のレビュー記事はPR記事ということにします。
PR記事だぞ!
商品画像は各社HPから引用しております。

中編です! 前編はこちらから!

8.休日のシチュー(ハウス食品)

わかるようなわからないような名前。休日のシチュー。

「ビーフ用」ってあまり書かない表現な気がするね

僕は味が濃いものが好きです。家系ラーメンとか。でもじゃあ、いつも味濃いもの食べたいかというとそんなことはないのです。たまにはあっさりさっぱりな中華そばも食べたい気がするのです。

休日のシチュー、そんな感じのシチューです。

思えば、我々は「濃厚」とか「贅沢」という言葉に毒されている気がします。味が濃くてコク味があるのが「贅沢」だと。なぜなら、なんか原料をいっぱい使ってる「気がする」から。

でも懐石料理に代表されるように、素材本来の味をゆっくり楽しむというのも、また贅沢だと思うのです。時間をかけてゆっくり素材の味を感じてください、そんなメッセージが込められている。そんな気がしませんか。

特にシチューのルゥって、これまでわりと濃厚寄りに配合が設計されてきたと思います。ほら「濃厚生クリームを贅沢に使用」とか書いてあると美味しそうに聞こえるじゃないですか。

休日のシチューはある意味そこに逆張りをしてきたような商品です。味の厚みがないわけではないけど、なんかあっさり。規定量通り作るとルゥも少し水っぽい感じがする。ペロッと食べやすい感じ。引き算の発想なんだなぁ。

実は僕はそんなにシチューって好きじゃなくて(嫌いでもないけど)、それってなんかあのモッタリした感じというか、食べててちょっと疲れちゃうところがあったんですが、これはあんまりそういうのを感じなくて食べやすいなと感じました。
それと合わせて、前述の「贅沢」とは何ぞやを考えさせられた感じ。

しかしカレーとかシチューのコーナーって、並んでるところをパッと見ただけだとなかなか味の特徴とかわかんないっすよね。アピール大変そうだよなと思ったり……。


9.しげき(三島食品)

こんにちは人名ネーミング! 広島が誇るふりかけメーカー、三島食品です。代表商品は誰もが一度は食べたことがあるでしょう、「ゆかり」です。

運動会の時のおにぎり、いつもゆかりおにぎりがお友達でした。

たぶんゆかりが並んでいないスーパーってほとんどないし、今後も三島食品が存続し続ける限りゆかりは永遠に存在し続けるのですが、ある意味で一本足打法ではありました。

超強力商品がそのカテゴリーにあっても、2本目が当たるかどうかは別の話。実は結構ラインナップを出していたのですが、あんまり当たっていませんでした。100均でめっちゃ並んでるのは見たことがあったけど。

潮目が変わったのはここ数年、なんか色々なメディアでこのシリーズがニュース記事として取り上げられるようになった気がします。そしてまた謎の人名の商品。「あかり」「ひろし」「かおり」「うめこ」「かつお(?)」……こういうあたりも、SNSの時代で話題になりやすくなった、みたいなところはあるかもしれません。

そして2024年、満を持して投入されたのがこの「しげき」です。人名と商品特徴のダブルミーニング、素敵ですね。

左上のCautionが恐怖を誘う

わさびふりかけ。そもそもわさびをご飯に塗って食うやつそんなおらんやろ、というのはあるのですが、食べました。

辛さ、えぐいて。

これ、わさび好きな人じゃないと食べられないだろと思う反面、わさび好きな人にはマジでたまらないだろうなと思いました。俺とか。

いやぁ、美味しいですよ……辛いけど。辛い中にも妙にコクがあって。ご飯がガンガン進みます。辛いから。

絶対に子供とかには食べさせてはいけない商品だと思いますが、回転ずしでわさびを何袋も取ってしまうようなあなたにはとってもおすすめです。美味しいよ。辛いけど。

なお奥様は無理せずお茶漬けにされていました。それはそれでとても良き。


10.割るだけスープ(理研ビタミン)

人名ネーミングの次はダイレクトネーミング! 割るだけスープ!

真ん中はクラムチャウダーではなく、ホタテチャウダーです

……いや、なんでなかったんだろうなと思ったこれ。濃縮スープ。
いや、あったよなとは思うんだ。多分ミネストローネはどっかが出してた。コンソメとかもあった気がするけど……。

思索に耽ってしまいました。そんなわけで割るだけスープ。メーカーはまさかの理研ビタミン。理研ビタミンといえばノンオイルドレッシング青じそ、そして増えるわかめスープ。中国の子会社が超やらかした。ごまのわかめスープ超愛用してます。

というわけで、元々あったスープのノウハウとドレッシング容器、それが重なったときに生まれたのがこの「割るだけスープ」です。

ホタテチャウダー以外は使ってみたんですが、どちらもとっても便利。
オニオンコンソメは冷凍のスライス玉ねぎとベーコンぶち込んでこれと水を入れたらコンソメスープの完成。
コーンスープは割ってホールコーン入れて盛り付けたらクルトン入れて完成。ワオ!

やっぱりいいところは、使い勝手の良さと濃度調節が出来るところだと思います。スープって大体一袋で量が決まっているじゃないですか。で、濃さは水分量で補正するみたいな。最近こんな商品は出たけど。

ただやっぱり粉の良くないところで、ダマが出来るんですよね。この「濃さも量も自由に楽しめるコーンポタージュ」も、鍋を使って多人数分作ろうと思うとダマダマになってダメです。

でも割るだけスープならその心配はなし! なぜなら液体だから!!
そんなわけで、意外にコーンスープでの活用はお勧めです。

しかし、スープ売り場にこの形状あるとちょっと目を引きましたね。だいたい箱か袋なので。ドレッシング工場で作ってるんでしょうねきっと。

Amazonのリンクは高いから見るだけにしといてね。


11.未来のレモンサワー(アサヒビール)

そりゃ即買いさ!!
正直食品ヒット大賞これもあるかなと思ってた。

ネーミング負けしないって一発でわかる商品すごいよね

商品の差別化戦略。色んな方法がありますが、その中でも食品で意外に効くものは容器・包材です。例えば近年では、生しょうゆのボトルがそれになるでしょう。容器の変更が業界に大きなうねりを生み出しました。こちらは以前noteで書いたのでぜひ。僕のnoteで一番読まれた記事なので、読み物として面白いと思います。

さて、容器・包材による商品の差別化戦略という点では、酒類という最も時価総額が大きく、競争が激しいカテゴリーにおいて、アサヒのこの「フルオープン缶」ほど差別化が出来たものはないでしょう。
なんたって空くんだもん。フルに。

元々はスーパードライに使われていた容器で、これはこれで衝撃がありました。缶でそのまま飲むのは味気ない、けどコップに開けるのは面倒くさいし洗い物も出る。そこに現れたフルオープン缶、しかも泡がめっちゃ出る。
僕はどんなビールも缶のまま飲む派なのですが、フルオープン缶はやっぱり美味しいと思いました。飲みやすいし、減りが早い。

色々その後「味彩」や「ドライゼロ」なんかに使われましたが(余談:ドライゼロは本当に止めた方が良かった。あの泡はペプチドの味がする)、この「未来のレモンサワー」は、フルオープン缶でなければ商品そのものが誕生しなかったでしょう。
明けた時に切れたレモンが浮いてくるの、本当に映える。

売り方も上手だった。エリアをスゲー絞りながら、期間限定で発売。レモンの原料調達が大変だったっていうのはあるみたいだけど。
正直な感想として、味はそこまで未来を感じないというか、普通ではあるのよね。普通に美味しいって意味で。
そういう意味ではあくまでレモンが入ってる目新しさが最大のウリなので、飽きられやすかったかもしれない。価格も260円くらい取ってくるしねこれ。普通レモンサワー、下手したら98円とかじゃないすか。

でもエリアと期間を限定したことで、長期間話題をつなぐことが出来た。おそらくこのままだと来年半ばには残りそうだけど(結構うちの周りも、再販時は余裕で買えた)、まぁまた新しい手を考えてくるんじゃないですかね。

フルオープン缶で、しかも何かモノを入れることが出来る技術を持ったっていうのは、もしかしたらアサヒ飲料の方でもシナジーを起こせるかもしれないしね。まぁ、エタノールが入ってる酒とジュースでは、難易度がまた段違いではあるのですが。

そういうわけで、まさに技術とアイデアで取ったヒット商品と言えると思います。
元技術職としては、こういうの本当に憧れますねえ。


12.月桂冠 アルゴ 日本酒5.0(月桂冠)

日本酒5.0。2.0~4.0はどこに行ったのだろうと最初思いました。バージョンの話じゃなかったですね。アルコール度数の話です。

フォントが面白いよねアルゴ

月桂冠、結構変わった仕掛けをしてくる会社ですよね。日本酒のメーカーって味を極める、蔵ごとの個性を出すことにフォーカスしているところが多い印象がありますが(偏見ですすみません)、その中にあって月桂冠は糖質ゼロやプリン体ゼロみたいに、他商品のトレンドを取り込もうとしているように見えます。
新しいことに挑戦する、さらに日本酒の市場を広げるという意味で、日本酒のリーディングカンパニーだと思いますし、頭が下がるなと。

さて、そんな日本酒。国内での消費減少が叫ばれて久しく、近年景気のいい話は海外向けな感じもありますが、商品そのものにスポットを当てた時に、「アルコール度数が高い」というのはネックになる部分があるかもね、とは確かに思います。

なにせ、ストロングゼロとかでも9%ですからね。そこで大体15~20%くらいがスタンダードじゃないですか、日本酒。まぁストゼロみたいにゴクゴクとはいかないんですが、それにしたって。

で、困ったことに美味しいお酒ほどサラッといけたりするんですよね。そうなると、アルコールとしては結果的にえらい量飲んでしまって、それ以来日本酒は避けるようにしてる……なんて話も聞いたりします。

そんな中誕生したのがこの「アルゴ」。アルコール5.0%。え、チューハイ? ビール? みたいなアルコール濃度。
これなら気負わずスッキリと飲めるでしょう……というメッセージ性が感じられる商品。

いや、本当にすごいなと思うんですよね。アルコール度数下げたからといって売れるかってわかんないじゃないですか。もっと気軽に飲みたい人がいるかも、っていうのは仮説ですし。そのテストの割にたぶん技術と労力は必要そうで。
それでもこうい商品を組み上げてきたことは本当にすごいなと思います。

さて、肝心の味ですが……酸っぱい!! えー、これは結構酸っぱいですよ。
そう思ってホームページ見たら、わかってやってんのか!

みんな大好きTI法(Time-Intensity法)

いやぁ、もうちょっと酸味抑えた方が良かったんじゃないですかね……というのが正直な感想ではあります。今の子(大人も)酸味苦手なのよ……僕もだけどさ……。

そんなわけで申し訳ない、味についてはあまりハマらなかったです。僕には。でもヒット賞なので、売れてるのであればこれが正解です、ハイ。

ぜひこの先リニューアルして、酸味を抑えたものを出し欲しい所存……!
ちなみに、Amazonのレビューはくっきり割れてるね……。


13.ヱビス クリエイティブブリュー 燻(いぶし)

これも書いた!

スーパーで買えるビールの中でも、やっぱりヱビスは一つ格上って印象はないでしょうか。普段常飲するビールというよりも、ハレの日に飲みたいビール。それがヱビスのブランドだと勝手に思ってます。私中の人じゃないので、サッポロビールさんの認知はわかりませんが。

その割に結構コラボとか企画商品が多いのもヱビスの特徴で、結構色々チャレンジングなことをしているのにブランドとしての価値を落とさないっていうのは、実はすごいことだと思います。
毎年秋の琥珀ヱビスとか、ジョエル・ロブションとのコラボとかね。

そんなヱビスの比較的最近出たライン「クリエイティブ・ブリュー」の第5弾として生まれたのがこの「燻」になります。

正直それまでの「クリエイティブ・ブリュー」がオランジェとかシトラスとか来てたので、突然の「燻」にびっくりしたのはあるんですが、なんかその、すごくすごい良かったと思います!(語彙力)

なんでしょうね、それまでの4つも面白かったし挑戦的だなと思ったんですが、「燻」はヱビスのブランドとバチっとハマった感を受けました。ヱビスらしいコクの深さに少しスモーキーな要素が加わって、また普通のビールともちょっと違うな、という。
食事で飲むというよりは、晩酌で金曜の夜にサラミとかと食べたい感じの味ですね。

しかしこの商品、発売前にYEBISU BREWERY TOKYO限定ビールとして、同様に燻製麦芽を使用した「煙々」という商品をやっていたということで。
店舗があるとテストマーケティング的なことも出来ていいなぁ、とちょっと思ったのでした。


14.井村屋謹製 たい焼き(つぶあん)(井村屋)

最近の井村屋の冷食への力の入れ具合はちょっとすごい。
というわけでたい焼きです。

最近の井村屋の冷凍食品は「井村屋謹製」の主張が強いです。

それにしても、すごいと思わないですか? 令和の時代にたい焼きでヒット賞取れるんですよ。全くバカにしているのではなく。たい焼きそんな食べますか皆さん。僕は結構好きですけど、あんまり食指は動かないというか、お菓子はとにかく競合が広すぎるんですよ。
たい焼きよりポテチ買うだろみんな。

それでもこの商品が売れたのは、やっぱり美味しいたい焼きに求められる要素をしっかりクリアしたからだと思います。つまり、皮が薄くてカリカリでサクサクなこと、餡がぎっしりなこと。よく行列が出来たり話題になったりするアレをどう再現するか。

で、良かったのはちゃんとオペレーションを書いてあげてることなんですよ。「電子レンジで温めた後、トースターで焼くとカリカリよ」って。

いやわかるよ、「手間だよ」とか「カリカリにしたかったら当たり前じゃん」って思う人が多いってことも。でもね、結構マジで消費者の皆さんの商品の使い方って千差万別だから!

推奨のやり方を書いてあげるってのは大事なことです。こういうの書くと書いたとおりにやってくれる人もいて、そこで商品の機能が最大限に発揮されることで魅力を理解してくれる人もいるのよ。似た事例はBARTHで。ごめんな、これも読んでほしいんだな。

それにしても、最近の井村屋の冷凍食品はなんか急激に美味しくなった気がしますし、パッケージも統一感が出て「あ、井村屋のだ」って認識するようになりました。ゴールド肉まんとか餡ぱんとかね。力入れてるんだなって冷凍食品売り場で見ててわかるもんな。実際美味しいし。

で、実際に美味しい商品でパッケージやブランドの統一感を持って売っていくと、新商品も「美味しい奴の一派だ! 食え!」となって売れていくと。ちょっと2025年注目している企業の1つではあります。

というわけで、中編まで駆け抜けてまいりました。
あと7品紹介して2024年度のヒット大賞はおしまいです!
ロングセラー賞はやらないからな!

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