5/21 緩めた口
そのまま、開けていてくださいね。
と言われたので、ポッカリと開けたままにしている。
細い指が下の歯を移動して、上の歯に向かう。
作業が中断される度に、目蓋をあける。
再び閉じた目には、円形の虹が映っている。
開いてください、緩めてください
開いて緩めて、開いて緩めて、
無防備な世の中だ。―
——-
あの部屋からの帰り道、坂を下ると
登る時に苦労した記憶はもう薄れていた。
薄暗い路地から、光の方へと向かう。
あの辺りには大きな池があって、見事な蓮が群生している。
その華が開く頃、私はここにはいない。
いかがわしいネオンがいつにもまして滲んでみえた。
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