残響の余波
凍え籠った室の中で、眼を塞ぎつむった先に見た、粉塵を纏う馬の群は
陸地に蹄の跡だけを残し私を少し大人にした。
夕映えに染まる山があの、村の子供達を焼いたことを私はもうこの眼で見ることはできない。
月が下弦に赴いた夜半、森のくぼみに降り立った男が放つ 「たすけてください」の言葉に私が返答する。
あの、赤を返して
落ち行く紅が水面を揺らしている。
こだまする声が潮騒にあぶれる。
表皮を皺に包まれた老婆は
流行歌を口ずさむ。
ああ、あれはかつての残響だったのだ
何処にいってしまったの、 あの額を濡らしたあたしたち、は。