5/13 果実
イチジクのことを考えなくてはならない。
もうそろそろ、無花果について考えなくてはならない。
イチジクは嘘を作り出す果実である。性を産み出そうとする果実でもあった。
性は背徳であるかもしれない。
イチジクは母でもあるかもしれない。彼女は予め性を知っていたのだから。
イチジクは内部に花を持っている、私たちはそれを見ることができない。それは誰にもみられることはない。隠されていく。小さなハチだけはその蜜を知る。小さな小さな入り口からこっそりと入り込んでは、また出ていく。そしてまた別の穴に入りこむ。イチジクは何も言わないだろう。そして、その度にイチジクは受精する。ハチは時に閉じ込められて甘い蜜の中に眠ることもある。剥かれたときにしかわからない。その時、ハチはもう死んでいる。
剥き出しにされた熟れた無数の花を一度に口にする。あまり強く唇に触れてはならない。腫らしてしまうから。
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#fig #higo
無果実:イチジク、耐寒性が弱い。カミキリムシの被害に遭いやすい。木の根本に木屑があれば、その幹の内部に幼虫がいる。侵入されやすい。何事においても。
無花果の木は枯れた土地であっても深く根を張る。実もならない無花果を非難することは間違っている。根を張り、葉を保つ草木を、実をつけないからといって絶やすことは間違っている。何者も植物を奪うことは許されない。生態には秩序がある。必ず繰り返されるものがある。返答があり、そして、実がなる。巡っている。必ず理由がある。
神はそれを知らない。