見出し画像

たくあん漬けから受け取った真心

五日市に暮らし始めて10年が経とうとしているが、引越してきてすぐ、お隣の方にご挨拶に伺った時のことを鮮明に記憶している。「のらぼう菜は食べたことあるかしら?」と畑で採れたばかりのものを一束下さった。早速おひたしにして、生まれて初めて食べたのらぼう菜は、優しい歯触りで独特の甘味があり、大変感動した。そして、お隣の方の心遣いに安堵した。これが五日市との出会いの始まりだった。


冬の野菜と言えば大根。ファーマーズセンターにも立派な大根が並び、大根好きの私は嬉々とする季節だ。でもやはり、お隣の方が丹精込めて作る大根は、甘味があり見事な太さで毎年感動だった。手作りのたくあん漬けもまた美味しいこと…! 我が子達も大好きだ。


夫はホスピスで最期を迎えたが、お隣の方が薄切りのたくあん漬けを持って見舞いに来て下さった。夫はたくあん漬けを口に含み、お隣の方のいつもの味を喜んだ。私もたくあん漬けに込められた真心に感銘を受けるとともに、私達家族は周りの人達の優しさにずっと支えられて暮らしてきたのだと実感した。

藤原 景子:子育てを機に五日市に暮らし始めて10年。2020年2月に最愛の夫をがんで亡くすが、五日市の豊かな自然、暮らす人々の温かな心、滋味深い食べ物などに癒されながら、長男、次男、柴犬(オス)と共に暮らしている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?