〜麺づくり一筋〜地域に親しまれ創業150年『寿美屋』
乾麺技能士でもある岸忠史さんは寿美屋四代目。伝統の味を守り続け、熟成させて作る昔ながらの乾麺づくりを続けている。
創業当初は、炭問屋の傍ら家庭で作るのが難しかったそうめんを、寒い時期に仕込む寒そうめんの製造をしていた。蔵で6か月寝かせる事で、強いコシのある麺が出来ると言う。初代の岸忠左衛門さんは、忠史さんの曾祖父にあたり、東大和から養子に入ったそうだ。五日市近代化の父と呼ばれており、電気、鉄道、水道をひき、地域の発展を願い尽力された方だった。二代目彦太郎さんは、祖母の久美さんと一緒に、初代の味を受け継いだ。「彦太郎さんは職人気質で、働き者だった。祖母は厳格な人で、民生委員、保護司を行うなど、情に厚い人だった」と忠史さんは振り返る。
檜原街道拡幅に伴い、道路沿いの建物を取り壊した人が多かったが、母屋は残したいと、父である三代目元彦さんの意向で、今の直売店後ろに移築させた。母屋は現在、寿庵忠左衛門の店名で手打ちそばや日本料理の提供をしている。
忠史さんが家業を引き継いだのは、22歳の時だった。その頃、母屋の隣に製麺工場を建てている。麺は厳選した小麦、赤穂の塩、秋川の水を使用している。特に、気温と湿度には気を付け、気象に合わせた配合にしている。乾麺は低温長時間乾燥で35度まで上げ、扇風機で6~10時間乾燥させている。乾麺の種類も豊富で、のらぼう菜を練りこんだ、そうめんやうどん、よもぎそばや山芋そば、ひやむぎ。生めんは蒸し麺焼きそば、冷やし中華麺など時代に合わせ、お客様を飽きさせない味と安心して食べられる麺を提供している。
今後についてお聞きすると、「製麺に限らず屋号を残し、古きを守り、新しい事にもっと挑戦していきたい。五日市は自然豊かなので、新しく移り住む人や、若い人にもっと住みやすい町になってほしい」と忠史さんは話してくれた。