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寄稿・藤原 景子 わたしと五日市 ~太鼓を叩ける幸せ~

 養沢地区で約四半世紀にわたって活動を続ける『養沢和太鼓会』にお世話になって、数年が経つ。元旦には『瀬音の湯』で演奏を行い、清々しい新年を迎えることができた。

 仕事柄、幾つかの地域を廻ってきたが、地域に根付く太鼓の演奏はどれも素晴らしく、「いつか太鼓を叩いてみたい」という憧れを抱いていた。阿伎留神社例大祭での『養沢和太鼓会』の演奏に心を打たれたのは、夫が病に倒れる前のことだ。その後、夫の介護、仕事、育児…と忙しない日々を送る中で「太鼓を習おう!」と憧れを現実にした。

 私にとっての太鼓の魅力は、気持ちが集中する瞬間の快感だ。日々の忙しさも、寂しさも苦しさも、太鼓の音が身体の中心に響く時、全てを忘れられる。そして、様々な世代の方々と、気持ちと音を合わせるのは、難しいけれど実に楽しい。練習の合間には、穏やかな会話が繰り広げられ、明るい笑い声が響く。その空気感に癒される。

 こうして太鼓を叩けること、それは決して当たり前のことではなく、幸せなことだ。亡夫を想いながら、その幸せを嚙み締めている。

藤原 景子:子育てを機に五日市に暮らし始めて10年。2020年2月に最愛の夫をがんで亡くすが、五日市の豊かな自然、暮らす人々の温かな心、滋味深い食べ物などに癒されながら、長男、次男、柴犬(オス)と共に暮らしている。

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