〜ブナと水と石を愛した現代山岳風景画のパイオニア〜 養沢の画家│故・犬塚 勉さん
あきる野市養沢に、山を愛し、数多くの山岳風景画を描いた画家がいました。犬塚勉さんです。
犬塚さんは、1949年神奈川県川崎市生まれ。27歳で学校の美術の先生になり、その傍らに絵を描いていました。山に登り、山や沢・樹木・岩・野原などをスーパーリアリズム風の筆致で描くことに挑戦して、独自の技法を確立しました。
犬塚さんは、生前最後の約1年半を、家族と共にあきる野市養沢で過ごしました。その暮らしの中で、三頭山の『ブナ』や、秋川・養沢川の『水と石』をモチーフ・主題にして、奥多摩の大雲取谷とあきる野盆堀川のゆずり葉窪などを巡り、「暗き深き渓谷の入口Ⅰ」などの晩年の秀作を描いていきました。
犬塚さんは35歳のとき、丹沢黍殻山草原でのスケッチで、スーパーリアリズム風の技法を考えつき、これが彼の絵の分岐点のひとつとなりました。
「ひぐらしの鳴く」は、その代表的な作品であり、1984年の第20回全国公募神奈川美術展入選。その後、自然の景色・風景を題材にした作品が認められます。そして、養沢に住むようになった1987年、「森の昼食」で、第3回多摩総合美術展で佳作入選。翌年には、「ブナの森からⅠ」で、第4回多摩総合美術展で大賞を受賞します。そして、「暗き深き渓谷の入口」の制作のため1988年9月、38歳の時、谷川岳へ行き遭難、帰らぬ人となりました。「暗き深き渓谷の入口Ⅰ、Ⅱ」は未完の絶筆です。
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