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GoProがほしくなる(バンジージャンプ3/3)
大学へ向かう電車内ですぐにGoProのSDカードを確認した。画質が良い。会話も残っている。GoProのすごさを感じながら、ジャンプの瞬間を記録しているデータを選んだ。
そのデータはジャンプ台でのハーネス確認段階から始まった。私は係員さんの手元ばかり見ていたから周りの状況を見ていなかったのだけど、GoProは手空きの係員さんがGoProにピースしたり、私の頭に指を立ててツノを作ったりしている瞬間を捉えていた。こんなに楽しそうに準備してくれていたのか。
宙吊りにされると不安になって、私はそれまでに増して饒舌になっていた。あたふたしながら、姿勢やカメラの持ち方を尋ねていた。準備の時に確認しておけ。係員さんは笑顔で端的に説明してくれて、私はそれに素直に従った。係員さんはいまから人ひとりを数十メートル落下させるというのに全く緊張していなくて、落ち着きすぎだろうと信じられなかった。
5、4、3、2、1!びゅーん「あーーーーーーーっ…あーーーーーーー!」係員さんに言われても信じなかったが、動画の中の自分は叫んでいる。叫んでいるな。叫んでいたのか。しかもかなり大音量。これは確かに、「めちゃくちゃ叫んで」いる。
記憶のない叫びをしたことがあるだろうか。通常、記憶のない叫びをした人はその記憶がない。そのため記憶のない叫びをしたことがあったとしても「私は記憶のない叫びをしたことがあります」というエピソードトークをすることはできない。しかし私は違う。叫んだ記憶はない。にもかかわらず動画に叫んでいる自分が残っているのだ。はい、私は記憶のない叫びをしたことがあります。羨ましいでしょう。
もちろん落下中の表情もその後の綺麗な景色も記録されている。この動画を見れば私は、あのバンジージャンプの感覚を再び味わえる。
ということで、私はひとりバンジージャンプを決行したことでGoProで記録を取らざるをえなくなり、その経験によって、動画記録の良さを体感した。
バンジージャンプ中は綺麗に写ろうなんて少しも考えなくてよかった。ただバンジージャンプの前に録画ボタンを押して、持っていただけ。それだけで、落下の瞬間に絶叫していたことを自分で確認できた。思わず目をつぶっていたことも分かった。回収待ちの間に見ていた景色を360°、私が見ていたのとほとんど同じ雰囲気を残して記録できた。回収待ちが暇になったら実況中継もできたし、感想も録音できた。
こうしてGoProに魅了された人間が新たに1人誕生したのだった。
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