外国映画の邦題の話。邦題がダサいのってどんな映画?
こんにちは。
みなさん、
映画、観てますか?
コロナ禍による「 #おうちなんとか 」で、最近めっちゃ観てるな~、って人も多いんじゃないでしょうか?
そんな皆さんも、一度は思ったことがあるはず。
洋画の邦題、ダサすぎ……!?
外国映画は日本に持ち込む際に、「邦題」がつくんですよね。日本用のタイトルです。
有名なものだと、「アナと雪の女王」は邦題で、原題 (元々のタイトル) は「Frozen」なんですよね。公開されたときめっちゃディスったなあ…。
「世界で最も偉大なSNS」ことTwitterで
[アナと雪の女王 ダサい]
と検索した結果がこちら。
あれ…?もしかして私って少数派…?田舎者センスが丸出し…?
いや、きっとこれは所謂「サイレントマジョリティー」ってやつなんです。みんな思ってるけど声に出さないだけで。俺は俺らしく生きて行く自由があるんだ。世界で最も偉大なSNSはTikTokだって高校で習ったしな。
というわけで私は、邦題の付け方に大いなる疑問があるわけです。何故そんな邦題になるのか知りたくなったわけです。
だって、そのまま和訳すれば事が済むじゃん!
そこで今日は、ヒットした外国映画の邦題について色々と調べてみました。いつの日か自分でも、ダサい邦題をつけられるようになるために…。
調査対象
1951年~2020年のアカデミー賞 作品賞 ノミネート作品
(日本公開のなかった作品を除く)
全385作品
仮説
①原題が長い
原題が長い作品って、どうしても和訳しづらい。だったら全然違ってもいいから短い邦題に変えちゃえ!(配給会社の人の声)
②原題が短い
いやいや急に正反対のこと言い出すやんけ!と思ったそこの皆さん、落ち着いて。①書いてから、「あれ?Frozenって短くね?」って思ったのでこの可能性もあるはず。短い英単語だと伝わりづらいしね。
③古い映画
今は小学校でも英語を習うような時代。でも昔はそうじゃなかった。だって、ビートルズの「A Hard Day's Night」にも、「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」なんて邦題がついていたくらいですから。ダチョウ倶楽部かよ。
④配給会社の方針
いくらダサくても、邦題をつけるのって、「日本で流行らせよう」っていう配給会社の方針なんですよ。いくらダサくても。ひたむきな企業努力なんですよ。いくらダサくても。ということは、配給会社の違いによって邦題の付け方の方針が違ったりするはず。
⑤コンプライアンス
映画の原題には、エロかったり過激だったり、日本でそのまま和訳するのは恥ずかしい!みたいなものもありますよね。検証できるか分かりませんが、これも仮説の一つとして挙げておきましょう。
基準を決める
「ダサい」の価値基準は人それぞれなので、今回は「原題からどれだけ逸脱しているか」を基準に、ダサさの指標を作ります。
ダサい度0:原題そのまま 〈JFK〉パターン
原題が現地語のまま邦題になっているパターン。
ダサい度1:カタカナ 〈ゴッドファーザー〉パターン
原題をカタカナで表記したパターン。正直大してダサくない。
ダサい度2:和訳 〈美女と野獣〉パターン
原題をそのまま和訳したパターン。こちらも別にダサくない。
ダサい度3:切り捨て 〈ネバーランド〉パターン
カタカナ表記/和訳から不必要なものを切り捨てたパターン。『ネバーランド』の原題は "Finding Neverland"。これは少数派かな。
ダサい度4:書き換え 〈ショーシャンクの空に〉パターン
カタカナ表記/和訳の一部を別の表現に変えたパターン。『ショーシャンクの空に』の原題は "The Shawshank Redemption"(ショーシャンクの贖い)。
ダサい度5:付け加え 〈パラサイト 半地下の家族〉パターン
カタカナ表記/和訳に何かを付け加えたパターン。『パラサイト 半地下の家族』の原題は "기생충" (寄生虫)。ダサいですよね。この辺。
ダサい度6:新タイトル 〈カールじいさんの空飛ぶ家〉パターン
完全に違うタイトルを邦題としたパターン。『カールじいさんの空飛ぶ家』の原題は "Up" 。ダサいかどうかは置いておいて、大胆だな。
※和訳などに伴う冠詞の欠落や接続詞の変化などは考慮しないものとします
以上、0から6までのレベル分け。数字が高いほうが原題と離れた邦題がついているということになります。
さて、能書きはこれくらいにして、様々なデータとともに仮説を検証していきましょう!
(調べているうちに、原題と違うからといって必ずしもダサいというわけではないことに気付きました。もしこの記事をご覧になっている映画関係者の方がいたら、これだけは分かってください。これ以降の「ダサい」は私個人の意見とは関係ありません。数分前、「ダサさの基準」を決めた自分に言わされているのです。私の意見とは全く関係ありませんから…。)
ダサさの推移
全体としては1950年代から1990年代にかけて下降傾向。やはり英語が伝わりづらい1960年代初期までは、日本語に直す傾向が強かったようです。
1980年代後半になると、突飛な邦題が増加。『女と男の名誉』("Prizzi's Honor")や『愛と哀しみの果て』("Out of Africa")など、かなり思い切ったタイトルも目立ちます。
このグラフに、日本映画製作者連盟発表の洋画の配給収入を重ねたものがこちら。(配給収入の発表は2000年以降なし)
1970年代から1990年代までは海外映画の全盛期。「インパクトのあるタイトルで勝負したい!」という映画館・配給会社の強い意志があったのかもしれません。
しかし、1990年代後半からは「ダサい度」が一気に下落。あまりにも原題とかけ離れた、インパクト重視のタイトルへの映画ファンからの非難は相当なものだったようです。
21世紀に入るとダサい度は急上昇。『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』("Life of Pi")や『her/世界でひとつの彼女』("Her") など、説明的な邦題をつける映画が急増しています。これダサいですよね?そうでもない?そうですか…。
ダサい度ごとの推移
こちらが10年ごとの推移。ダサい度1 (カタカナ表記) が増える一方で、ダサい度2 (和訳) が減っているのがよく分かります。
1950年代は『ローマの休日』("Roman Holiday") や『王様と私』("The King and I") など、「和訳の名作」も多く生まれています。やっぱり日本人の英語力の問題でしょうか。
1970年代からは、カタカナ表記に直した映画が主流に。『グッドフェローズ』("Goodfellas") など、一見しただけでは意味の分からない映画もありますが、基本的にはカタカナ表記で伝わりますもんね。
(まあ、『グッドフェローズ』が単純なカタカナ表記じゃないのはコンプラ的なアレもあるのかも。分からない人はいいです。)
ダサい度6 (新タイトル) は意外と昔からあるんですよね。もっと最近のものだと思ってた。ちなみに、1950年代以降で最初の「新タイトルによる邦題」がついたものは、1952年の『黒騎士』("Ivanhoe") でした。たしかに、『アイヴァンホー』じゃなにも分からないな。
単語数別「ダサい度」
単語数と「ダサい度」の関係がこちら。
原題が長いほうが、邦題が変化しやすいようです。ダサい度1 (カタカナ表記) の減り方とダサい度2 (和訳)の増え方はかなり極端。ダサい度6 (新タイトル)も、原題が長い作品のほうがつけられやすい傾向にあります。
ただ、一概にも言えないのがダサい度5 (付け加え) パターン。当然と言えば当然ですが、単語数が少ないほうが付け加えが多いわけです。だって『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド **/ **ヒッピー集団を吹き飛ばせ!』なんて副題がついたら長すぎるし。それにダサいし。タランティーノも泣くわ。
余談ですが、今回調べた中で最も長かったタイトルは『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』("Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb") の13単語。"Dr. Strangelove" を「博士の異常な愛情」と訳したのはかなり個性が出てますね。監督のスタンリー・キューブリックが意訳を嫌ったようです。
ジャンル別「ダサい度」
※ホラー/スリラー/パニック、スポーツはそれぞれ10作品ずつしかないので参考
ジャンル別に見ると、SF/アドベンチャー/ファンタジーの「ダサい度」が比較的高いことが分かります。少し意外な結果。『オデッセイ』("The Martian") 『メッセージ』("Arrival") など、原題ではかなり分かりづらいものが多く、子供向けのファンタジー作品では『ヒューゴの不思議な発明』("Hugo") のような説明付加的な邦題を付ける傾向にあることが要因でしょうか。
一方で、サスペンス/ミステリー、ミュージカル/音楽は、「ダサい度」が低いようです。サスペンス/ミステリーは「内容が分かりづらい」ことが魅力と言えますから、低いのも納得。ミュージカル/音楽では、既に日本でミュージカル化されており、邦題を変えづらいのが要因。1964年の『マイ・フェア・レディ』以降のミュージカル作品はすべて原題のカタカナ表記を用いています。
※今回のジャンル分けはFilmarksのものに基づいています。Filmarksさん、アバターってアクション映画ですか?
配給会社別・「ダサい邦題」ランキング
少しマニアックな話。
日本での配給会社は映画によってさまざま。現地の日本法人が配給を行う場合もあれば、日本での配給を専門に行っている会社もあります。邦題をつけるのは、ほかでもない、この配給会社なのです。
では、配給会社ごとに邦題の付け方の特徴はあるのでしょうか。手掛けた10作品以上がアカデミー作品賞にノミネートされた12社を「ダサい度」でランキング化したのがコチラ。
MGM、圧勝。
洋画の黎明期を支えたメトロ・ゴールドウィン・メイヤーが、(幾度の統廃合を乗り越え) 圧倒的なスコアをたたき出しました。1973年にユナイテッド・アーティスツに統合され、日本での配給権を手放すまで、数々のヒット作を日本に送り出してきたMGM。ミュージカル "Gigi" に『恋の手ほどき』という邦題をつけたのもMGMです。邦題に工夫を凝らす時代の先頭で戦ってきた貫録を感じさせます。
一方、最も原題を重視する結果になったのは日本ヘラルド(現・角川ヘラルド) 。日本ヘラルドといえば『地獄の黙示録』("Apocalypse Now") や『小さな恋のメロディ』("Melody") など、趣向を凝らした邦題のイメージが強いですが、作品賞ノミネートの作品に限ってみれば、そのほとんどがカタカナ表記しただけのもの、という結果に。特に1980年代後半から1990年代にかけては、東宝東和とともに突飛な邦題への批判が高まった時代。「売れる邦題」を付けづらい風潮があったようです。
日本ヘラルドや東宝東和、突飛な邦題をつけているだけではないんですね。
日本でヒットを飛ばした作品の中にノミネート作が少なかったのも要因の一つ。『小さな恋のメロディ』は日本以外でほとんどヒットしてないし…。
ということで
ここまで検証した結果、
①原題が長い映画のほうが「ダサい邦題」つけがち
②古い映画のほうが「ダサい邦題」つけがち
③配給会社によって邦題の付け方はかなり違う
④ジャンルごとに邦題の付け方に特徴あり
⑤コンプラ的に邦題を変えた映画もある(かも)
こんなことが分かりましたとさ。
ではみなさん、クイズです。
左の邦題から右の原題を選んでください。
どうですか。全く想像もつかないでしょう。
1950年代の映画から最近の映画まで、ダサい度6 (新タイトル) の映画を選りすぐってみました。
答えはコチラ。
何問正解できましたか?
全問正解だったらきっとあなたには、ダサい邦題をつけるセンスがあります。これからの人生も、自信をもってダサい邦題をつけてくださいね。
ちょうど5000文字書いたので以上。今回はダサい邦題を分析してみました。
それにしても、我ながら「ヒッピー集団を吹き飛ばせ!」って今更めちゃくちゃダサいな。
ではまた。
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