人工内耳ユーザーが答える、人工内耳の疑問。
人工内耳手術を検討されている方、一番最初にぶつかる疑問に私の視点で、体験も含めて答えていきます。
人工内耳ユーザーとして、偽りなく発信しますので、人工内耳を考える最初の入口として参考にしてください。
※私は中途失聴で、両耳人工内耳を装用しています。
1)人工内耳とはどんなもの?
人工内耳をつけている人って意外と見かけないですよね?
補聴器は知っているけど、人工内耳はイマイチよく分からないなという印象ではないかと思います。
日本耳鼻咽喉科学会によれば、「人工内耳は、現在世界で最も普及している人工臓器の1つで、聴覚障害があり補聴器での装用効果が不十分である方に対する唯一の聴覚獲得法」とされています。
ここがとても重要で、補聴器を使用しても聞くことが難しい場合、次のステップとして人工内耳があるということですね。
つまり補聴器でどうにか聞こえているのであれば、まずは補聴器できちんと様子を見ていきましょうとなります。
難い感じがする人工内耳ですが、とりあえずは人工内耳をつけている状態を見てもらえればと思います。
見た目はこんな感じです。
耳にかかっていて、頭に何やら貼り付いているものが人工内耳です。
細かい仕組みはさておき、この機械で音を拾って、電気信号に変換して、耳の中に入れてあるインプラントに電気信号を届け、聴神経を刺激することによって音を認識させます。
インプラントなので、機械の一部は耳の中に入っています。
蝸牛(耳の中のカタツムリみたいな構造をしている部分)に電極を挿入して、電気刺激を送っています。
もはやアンドロイドのような世界です。
ちなみにレントゲンで頭部を撮影すると、インプラントが耳にきちんと入っているのが分かります。(ちょっと怖いですけど)
人工内耳を使うためには、手術が必要になります。
全身麻酔を伴う大きな手術ですが、既に確立された技術であり、手術自体に心配はいらないと思います。
人工内耳をきちんと自分の耳として活用していくためにはリハビリテーションが一番大事だと言われています。
そして、私の体験としても本当にその通りだと思います。
2)人工内耳は結構目立つ?
写真だと結構目立つと感じですが、髪が長い方はすっぽり隠れるので、人工内耳を装用していることに気付かれにくいと思います。
人工内耳をつけて街中を歩いていると、視線を感じることが多いです。
そもそも「人工内耳」を知らない人がほとんどなので、あれは何だろうという感じの目で見られているのだと思います。
一度、職場で「随分変わったイヤホンだね」と言われたこともあります。
また、写真のように、目立たない色が主流ですが、赤や黄色のように、ファッション性を高めた色もあります。
こうした点は補聴器も同じですね。
補聴器もそうですが、人工内耳もやはり見た目が気になるという方は多いです。
ただ、あくまで慣れですし、人工内耳ユーザーであれば、周りの方には人工内耳を装用していることを周りの方に伝えていることがほとんどだと思いますし、他の知らない誰かの視線をいつまでも気にしているわけにはいかないなというのが私の考えです。
3)本当に聞こえるようになるの?
人工内耳を検討されるのであれば、当たり前ですが、一番気になるのがこの質問ではないでしょうか?
人工内耳手術をすると、一般的に音は聞こえるようになります。
恐らくどの病院でも、人工内耳手術前に患者からこう言った質問を受けていると思いますが、「音は聞こえるようになる。」という回答がほとんどだと思います。
これは音を認識できるということであり、すぐさま今まで聞いていたように音を認識できるということではありませんし、何を言っているか等、言葉の認識をスムーズにできるということではありません。
人工内耳はあくまで機械なので、聞こえてくる音は機械で作られた合成音です。
手術後に聞こえてくる音を「今まで聞いてきた音」に近づけるためにはリハビリテーションをしっかりやっていく必要があります。
ちなみに私は、手術後、音は聞こえるようになりましたが、全て機械のような音に聞こえました。
リハビリをしっかりやって、約3ヶ月後には何となく今までと同じように聞こえてきたかなと感じ、会話もある程度支障なくできるようになってきました。
4)人工内耳のリハビリテーションは大変なの?
とても重要とされているリハビリテーションですが、非常に大変でした。
慣れない音を聞き続けることは大変ですし、色々な生活音や人の声を、一つずつ答え合わせをするように、「この音は人工内耳でこう聞こえるんだ!」と整理していく作業はやはり疲れます。
加えて、人工内耳の調整(マッピングと言います。)をやっていかなければならず、初期のころは頻繁に調整にも行かなければなりません。
私は手術後の半年で10回通院しています。その都度マッピングをして、聞こえを調整していくことになります。
このリハビリテーションをしっかりできるかどうかが人工内耳の満足度高める大きな要素だと思います。
「リハビリをしっかりやるぞ!」という明確な意思がなければ、人工内耳手術は再考した方が良いと思います。
5)人工内耳のメーカーはどうやって選ぶの?
人工内耳のメーカーとして有名なのはコクレア社とメドエル社です。
アドバンスト・バイオニクス社もありますが、私の周囲には装用者はいません。
ちなみにコクレアはオーストラリア、メドエルはオーストリアの会社で、ちょっとややこしいです。
人工内耳の世界的シェアでは、コクレア社が圧倒的で約7割と言われています。
一方、ヨーロッパに限れば、メドエル社が約8割と言われており、地域によって偏りがあります。
日本国内では、コクレア社の方がメジャーです。
人工内耳のメーカーによって、特徴が違う部分もありますが、メーカーによって聴取成績に明確な差が出るという大規模の研究結果は出ていないようです。(日本における人工内耳の現状)
私はメドエル社を装用していますが、これは手術する病院側で提示されたものをそのまま受け入れたためです。
コクレア社を望めば、もちろんそのようにしてくれますが、私は説明を十分に聞いた上で、メドエル社を選択しました。(私の手術した病院ではメドエル社を使っているケースが圧倒的に多かった。)
もし、メーカーにこだわるとすれば、例えば防水仕様だとか、bluetoothだとか、聞こえとは別の機能的な側面なのだろうと思います。
ワイヤレス製品の多様性という点ではコクレア社が一歩リードしている印象ですが、周辺機器のような物は今後、色々出てくることもありますので、あまり深く考えなくて良いと思います。
私としては手術する病院がよく使っている機器が良いのではないかと思います。
6)人工内耳のデメリットは?
個人的にはデメリットを強く感じたことがないです。メリットが圧倒的で、デメリットを感じなくなってしまっているからかもしれません。
一般的に言われるデメリットは下記のとおりでしょうか。
MRI検査に制限が出る。
頭に衝撃が伴うような運動(サッカー、ラグビー等)は避けなければならない。
維持費がかかる。(充電池、電池等のランニングコスト)
見た目に抵抗感がある。
MRIですが、メドエル社の最新のインプラントであれば、適切に防護することで3.0テスラのMRIを受けることが可能です。
ちなみに3.0テスラのMRIはその辺の病院にはありません。(高性能なので、大病院にあることがほとんど)
くも膜下出血で倒れたとかになると、MRIが必要ですが、適切なMRIを選択することで検査は受けられます。(もちろん人工内耳ユーザーであることを伝えてくれる人がいることが前提ですが。)
私は人工内耳になってから、骨折をしてしまい、MRIを撮影する必要に迫られたのですが、人工内耳である旨伝えると、「MRI撮らなくても何とかなるか!」と言われたため、手術後は一度もMRIを撮影したことはありません。
頭に衝撃がありそうな運動は我慢するしかないですね。
聞こえるようになるためには割り切るしかないと思います。
ちなみに私は水泳とスキーをするのですが、どちらも問題なくできます。(水泳は人工内耳を外しますが。)
運動という点で、走ったり跳んだりすると、人工内耳が外れることがあるので、要注意です。
特にお子さんは、はしゃいだりすることで、何度となく落としますので、落下防止用のクリップを使用されているケースが多いです。
維持費はかかりますが、充電式を活用することを前提としていますので、日々のランニングコストはそれほどでもありません。
ちなみに充電池も電池も自治体によっては助成制度があります。
一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会がこちらで公表しています。
見た目の問題は個人の感じ方次第ではあるのですが、結構目立つのは先述したとおりです。
耳掛け式の補聴器と同じくらいの大きさですし、特に中途失聴者であれば、補聴器から移行される方がほとんどだと思いますので、気にするほど抵抗感はないのではないでしょうか。
まとめ
人工内耳についての情報はネットで様々溢れていますが、私が最初に気になったことについて、書かせていただきました。
先天性難聴なのか、中途失聴なのか(私はこちら)によっても考え方は変わると思いますし、年齢や社会活動状況によっても大きく変わると思います。
一つの目安として、本記事を参考にしていただければ幸いです。
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