難聴者が障害者手帳を取得するまでの4ステップ
難聴に限らず、多くの身体障害において、福祉制度の活用や生活支援を円滑に受けられることを主目的として障害者手帳の発行がなされています。
私も人工内耳になる前から、徐々に難聴が進行していましたので、障害者手帳を取得していました。
ここでは「聴覚障害」にフォーカスして、障害者手帳取得までのステップをお伝えします。
1)身体障害者手帳は重要
「身体障害者手帳」と聞くと、何となくネガティブな印象を持たれる方もいるかもしれません。
様々な病気で通院や色々なところでコストがかかったり、不便さを受け入れる必要があったりしなければならないことは多くあると思いますが、そうした負担を少しでも軽くしていくために「身体障害者手帳」はとても重要です。
ちなみに障害者手帳の交付数は平成30年度の時点で5,087,257で、うち「聴覚、平衡機能障害」が447,881(全体の約9%)となっています。(厚生労働省統計要覧一覧から)
◆障害者手帳の活用シーン
障害者手帳を取得する理由は、障害をフォローしてくれるような様々なサービスを受けることや、助成制度を活用し、日々の負担を軽減するためです。
残念ながら持っているだけでどうにもならないので、色々な場面で「提示」していくことや「申請」していくことが必要です。
私が主に活用しているのは下記のとおりです。
※障害等級が限定されているものもあります。(私は2級です。)
有料道路の割引(ETC利用により半額に割引)
地下鉄、バス等の福祉割引(ほとんどで子供料金と同一、JRは乗車料のみ距離に応じて)
航空運賃の割引(ほとんどの場合先得等の方が安いが、直前に予約する場合は助かる。)
公共施設の利用料金割引(施設利用料や入場料等の割引)
自動車税の減免、所得税の特別障害控除(特別障害は2級以上)
重度心身障がい者医療費助成制度(医療費が1割になる。所得制限あり。)
その他施設利用料減免(例えばUSJの入場割引あり、遊園地、水族館等でも場合によっては割引あり。)
これらの活用をする、しないでは負担がかなり違います。
手帳を提示することや、市町村に申請(上記の有料道路、医療費助成)することが必要ですので、手帳を取得したら忘れずにやっておきたいところです。
2)自分の障害等級を確認してみる(ステップ1)
私自身、進行性の難聴で2014年に初めて取得してから、聴力の悪化に伴い、等級を変更しながら現在に至っています。
私は6級→4級→2級という形で等級変更をしています。
難聴は、治療法が存在しないことから、症状が固定さえすれば、障害者手帳取得のハードルは高くないというのが実感です。
身体障害の程度を決めるのが等級表というものになるのですが、聴覚障害は下記のとおりとなっています。
意外にも1級と5級がないのです。
2級の両耳全ろうがマックスです。全ろうってかなりの障害に思うのですが、どうなんでしょうか。
例えば、1級だと、肢体不自由で「両下肢の機能を 全廃したもの」とか、視覚障害で「視力の良い方の眼の視力が0.01以下のもの」というように、単独での行動が制限されそうな障害がありますし、それと比較すると「全ろう」の位置付けは少し低いという整理なのかもしれません。
ただ、2級であることと1級であることで助成制度等に大きな差はありません。(2級以上が別という感じです。)
自分の聴力検査結果を見て、どの級に該当するかを考えてみることが必要ですが、ここで重要な点があります。
身体障害者手帳における障害認定は4分法の聴力レベルを基準としています。
4分法とは周波数 500、1,000、2,000Hzヘルツの音に対する聴力レベル(dBデシベル)をそれぞれ a、b、c とした場合、(a+ 2b+ c)/ 4の式で算定された値のことです。(ほとんどの場合、聴力検査の結果に載っています。)
この値が上記の等級区分に該当するかを確認する必要があります。
4分法を基準とすると、極端に低音だけ、高音だけ聞こえないという人は障害認定を受けられないケースも出てくることになります。(この場合は語音明瞭度を検査することになると思います。)
ちなみに人工内耳の手術をする際に、人工内耳手術の適応基準を満たしているかどうかを確認することになりますが、その適応基準によれば、「聴力および補聴器の装用効果 各種聴力検査の上、以下のいずれかに該当する場合。」となっています。
裸耳での聴力検査で平均聴力レベル(500Hz、1000Hz、2000Hz)が 90dB 以上の重度感音難聴。
平均聴力レベルが 70dB 以上、90dB 未満で、なおかつ適切な補聴器装用を行った上で、装用下の最高語音明瞭度が50%以下の高度感音難聴。
もちろん他にも、画像診断や精神面等での基準はありますが、単純に「聞こえ」という点だと、4級以上だと人工内耳が視野に入ってくる感じかと思います。(もちろん補聴器の効果次第ですが。)
3)病院に相談し、いざ市町村役場に!(ステップ2)
障害者手帳を取得する上で、まずは病院に相談します。
もちろん病院から勧めてくるケースもありますが、病院側は総じて受け身だと思います。
まずは手帳取得の意思を伝え、等級の該当可能性を確認してもらうことになります。
身体障害者手帳は、基本的には固定的な障害に対して等級を決定する制度であるので、症状が固定していない場合(改善や悪化の可能性がある)は医師によっては少し待ってと言われる可能性もあると思います。
そして、症状固定とは目安として聴力検査の結果が安定して3ヶ月程度とされています。
医師にとっても、偽って症状を証明するわけにもいかないので、症状固定だなと判断できるタイミングを待つことになります。
もちろん、以前から聴力検査の結果が変わらなければ、症状固定と判断できると思いますので、病院との話はスムーズに進むと思います。
医師の診察で、手帳取得の件について了解を得たら、具体的な手続きを確認します。
「指定医の作成する身体障害者診断書、意見書」というものを医師に書いてもらう必要があるので、それにあたって必要な手続きや費用を教えてもらいます。
病院によっては、意見書を書いてもらうための申請書が必要であったりしますし、費用についてもまちまちなのでしっかり確認しておく必要があります。
身体障害者手帳は国の制度ではありますが、発行は都道府県や政令指定都市、中核都市となっています。
都道府県が発行主体であっても基本的には申請の窓口は住んでいる市町村の障害福祉担当の窓口にて行うことになります。
窓口では申請にあたって、必要な書類をもらいます。
その場で書き方等を教えてくれますし、親切なので特に心配する必要はありません。
初回は、説明を受け、書類をもらって帰ってくるという形になります。もちろん予め何もかも準備して持参して提出も可能なのですが、失念等もありますし、面倒ではあっても申請前と申請時の2回行くことは考えておいた方が無難です。(自治体によってはきちんとチェックリストもくれます。)
新規で認定してもらう時に必要なものは基本的には下記の通りです。
身体障害者手帳交付申請書(自治体の窓口でくれます。)
指定医の作成する身体障害者診断書、意見書(自治体の窓口でもらって、病院に依頼することになります。)
印鑑(申請時にあればOKです。)
写真(たて4cm✖️よこ3cmが一般的です。申請時にあればOKです。)
4)再び病院に行って診断書等を書いてもらう!(ステップ3)
「指定医の作成する身体障害者診断書、意見書」を持参して、病院の窓口に行き、障害者手帳取得のために記入してもらいたい旨伝えます。
この際、ほとんどの場合、主治医と手帳申請について話をされているか?を確認されます。
最初のステップで主治医にきちんと手帳取得について相談しておく重要性はまさにここにあります。
あとは診断書が出来上がる日数を確認し、手数料を支払って待つのみです。
「指定医の作成する身体障害者診断書、意見書」ですが、様式は下記のとおりです。
ちなみに「指定医」というと何となく特殊な感じがしますが、都道府県知事が身体障害者診断書、意見書を書く医師を指定しており、難聴の治療に従事している医師だとほとんどが指定されており、全く問題ないと思いますので、心配は不要です。
5)再び市町村役場に行き申請完了!(ステップ4)
このステップまで来れば、もう安心です。
病院で作成してもらった診断書を持参し、申請書や印鑑、写真と、初回に自治体窓口で必要だと言われたものを全て準備して、申請が完了となります。
認定まではスムーズにいけば一月程度です。
医師の診断内容に疑義が生じた場合は、医師に照会がいき、やや時間がかかる傾向にあります。
だいぶ前の話ではありますが、2007年から2008年にかけて聴覚障害に関する、不正な身体障害者手帳取得の事件が起き、特定の医師が不正に関与していることが明らかになっています。
見た目では分からない「聴覚障害」だからこそ起きた事件かと思いますが、ある意味、医師が診断書を書いてしまえば、スムーズに認定されてしまう制度とも言えたのかもしれません。
現在は、適正に運用されていますし、医師の診察もしっかりと厳格に行われています。
認定基準に関する事項も都度見直し議論がなされ、直近は平成27年4月に認定方法見直しの通知がなされています。
もちろん普通に症状が固定している難聴であれば、何の心配もいりません。
交付準備が整ったら、窓口に受領をしに行き、色々な助成制度等について説明を受けることになります。
この段階で、自分が利用したいなと思うものがあれば、担当先を紹介してもらうのがスムーズです。
まとめ
身体障害者手帳ですが、自分が該当しそうだと思えば、早めに病院に相談することです。
聴覚障害の場合、突発性難聴のように一定の回復可能性がある場合は別ですが、多くが症状固定となって、診断書や意見書を書いてもらうこと自体はスムーズだと思います。(治療法がないので)
自分の聴力検査結果を見て、障害等級を把握する。
障害者手帳を取得したいと主治医に相談する。
市町村役場に行って、手帳申請に必要な手続きを教えてもらう。
再び病院に行き、診断書の記載をお願いする。
書類が揃ったら市町村役場に行き、申請完了!
最後に、必要書類で提出する写真はもう少しきちんとしたものを使っておけば、というのが私の後悔です。
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