『星どろぼう』|ドラマチックなファンタジーと一緒に、夜空の星に手を伸ばそう|大人も楽しめるおすすめ絵本
星をつかみたい、手に入れたい。そんなふうに思ったことがある人もいるはずだ。ポケットに星をいっぱい詰めて家に帰り、部屋を星で飾りたい。1つでいい、たった1つだけ、星を自分のものにして、大切に大切に育てよう。
そんなピュアな夢を実行にうつした泥棒が主人公の絵本がある。
アンドレア・ディノドさんはニューヨーク在住の作家。絵のアーノルド・ローベルさんはアメリカ出身の絵本作家。『ふたりはともだち』などの「がまくん」シリーズでよく知られている。
タイトルの「星どろぼう」。これを見た時、何をイメージするだろうか。
この星どろぼうとは、星にあこがれるあまり、夜空の星を盗んでしまった人物。星を自分のものにしたくて、手を伸ばしてとってしまったのだ。
この泥棒のとてもピュアな夢を、悪と断罪することはできる人は少ないだろう。みんなの夢を、代わりに実行してくれたキャラクターと言っていいだろう。それくらい泥棒は純真で、愛嬌があって、チャーミングなのだ。
そしてアーノルド・ローベルさんの星が、手を伸ばしたくなるような輝きを持っている。あたたかみもあり、ロマンも感じるような、奥行きのある星。一気に心奪われてしまうこと請け合いの星が、絵本いっぱいに散りばめられている。
そして、文章の表現も魅力なのだ。優しく語りかけるような、目の前で対話がなされているような、柔らかくユーモアに富んだ言葉たちに、物語が彩られる。
星どろぼうに星を盗まれた村人たちは黙っていない。村の夜空を彩っていた星ひとつ残らず消えてしまったのだから。何とか犯人を見つけ、星を取り戻そうと行動する。そんな中で交わされる、村人と泥棒のやり取りもとってもピュアでチャーミングだ。
村人と泥棒それぞれの立場になって考えるのも楽しいだろう。子どもと一緒に、文章を分担して読んでみることもでき、いろんな楽しみ方ができるのも魅力だ。
星どろぼうがいるけれど、美しい星に手が届く世界。こんな世界に生きることができたら、なんて素敵だろう。
夜空に輝く星を見るたびに思い出しそうな、ロマンチックで優しいユーモアにあふれた1冊。手を伸ばせば届くかもしれない、でも星は夜空に輝くのが一番、そんな風に思わせてくれた。
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