『トヤのひっこし』|雄大な自然と、モンゴル遊牧文化。同じアジアの、違う生活に香るロマン|大人も楽しめるおすすめ絵本
姪に贈る絵本を選ぶときいつも思うのが、いろんな文化を紹介してあげたいということ。いろんな場所にはいろんな暮らしや伝統があること、そこには姪と同じくらいの歳の子が暮らしていたりすること。
絵本の物語を楽しみつつ、絵本の登場人物の目を通して、いろんな世界を見て、いろんな体験をしてほしいのだ。
そんな異文化体験絵本の中に「引っ越し」がテーマのものを見つけた。日本とは全く違う引っ越しの文化にどっぷりと浸かり、主人公の目を通して、現地の引っ越し疑似体験が楽しめる。
イチンロブ・ガンバートルさんはモンゴルの絵本・紙芝居作家。絵本作家でイラストレータのバーサンスレン・ボロルマーさんとは夫婦で、一緒に絵本を制作されている。
トヤというのは、女の子の名前。モンゴルの草原に住んでいるトヤ一家はお引っ越しをするのだが、お引っ越しの運搬担当は車ではなくラクダ。家財道具や、トヤ一家のおうちであるゲルもラクダが運ぶのだ。
お引っ越しの道中も日本とは全く違う。ゴビ砂漠を超え、岩山を乗り越え、夜を過ごしながら何日も旅をする。自然が猛威を振るうことも、動物を警戒することだってある。
その中で家族は絆を深めていき、トヤもいろんなものを見て、体験する。トヤと一緒に、遊牧民族の引っ越しの疑似体験ができるこの絵本のおかげで、「引っ越し」の引き出しがひとつ増える。
引っ越しといえば引っ越し業者に連絡して、荷物を段ボールに詰めて…そんなイメージを持っている私たちを、全く違う世界へ連れて行ってくれるのだ。
見開きいっぱいに描かれたモンゴルの自然や引っ越しの様子に、知的好奇心が刺激される。草原や湖がオアシスそのもの。家族の喜びが反映されたような、よく茂った豊かな緑に、こちらも思わず嬉しくなってしまう。
読んだ後、モンゴルの遊牧民族や、ゲルの仕組み、砂漠について調べずにはいられないような、たおやかで魅力的な絵が物語の世界につれて行ってくれる。
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