私とメイクの話④
それからというもの、雑誌や本やインスタから情報を得て、毎月新しいアイテムを試した。
そういう情報を頼りに基礎化粧品をよく買った。使うアイテムが増えると、毎月のように何かを買う必要があった。
洗顔フォームにクレンジング、美容液、日焼け止め、乳液、ブースター、クリーム、化粧水…
どのように何を買うか、毎月のようにお財布との相談。
まだ足りない、まだ乾燥する…ここが気になる、あれも使いたいこれも買いたい、もっと高いのを使ってみたい…
やりたいことと、終わりが見つからない欠乏感とシミやシワが憎い気持ちに疲れてしまっていた。
一方で、
メイクは、試すほどに楽しかった。
プチプラもデパコスも楽しい。
わかりやすく「今日はなんかいい感じ!」があった。
でも同時に落とし穴にもはまっていた。
鏡でよく顔を見るようになったのだ。
自分の写真や鏡を見るのが苦手だったから、これまであまり見ないようにしていたのに、自分をよく見るようになった。
そして、ダメ出しを山ほどした。
目鼻の形、肌の状態、顎のライン、髪の毛…
嫌なところをわざわざ探して否定した。
このあたりのタイミングで、自分の顔に点数をつけられるという衝撃的な出来事もあった。
楽しいのに辛くて、
努力しているのにうまくいかなかった。
そうして40歳。
肌は極力何も塗らない方がきれいになるということが書いてある本に出会った。
また、それと同じ頃に「ズボラケアをしている」と恥ずかしそうに話す人たちの肌が、とても自然に見えることに気づいた。
肌はケアするほどに栄養や潤いに満たされるはずと信じている自分。でも実際は、どんどん肌が重たく分厚くなっているようにも感じていた。
歳を取るのは醜くなることなのかと苦しくなっていた。毎月化粧品にお金をかけるのも、基礎化粧品ジプシーにも疲れ果てていた。
…もうお腹いっぱいだった。
本に書いてあるように、肌ケアをシンプルにするだけできれいになれるならそっちの方がいい。
やってみようと思った。
ダメなら引き返せばいい。
私のシンプルケアがスタートした。