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絶好調のオックスレイド=チェンバレン 復調の起因を考察する【週刊LFCマガジン #5】
いよいよ、オックスレイド=チェンバレンの本領発揮が刻一刻と迫ってきているのかもしれない。
現地時間11日、リバプールはUEFAチャンピオンズリーグラウンド16 第2戦でアトレティコ・マドリーと対戦した。
この日、オックスレイド=チェンバレンは右のインサイドハーフの一角として先発を飾り、1アシストを記録するなど、82分に交代するまで相手ゴールを常に脅かし続ける印象的な活躍を見せた。
今シーズン、ここまでリーグ戦21試合出場、10月にはチームの月間最優秀選手に選ばれ、そしていくつかインパクトのある得点をしてはいたものの、筆者としては、どこか消極的なプレーが多く感じられた。しかし、ここ最近は大活躍だった加入初年度の17/18シーズンに近い、思い切りの良いプレーがコンスタントに続いている。
本記事では、オックスレイド=チェンバレンの加入初年度の活躍と現在のパフォーマンスを比較しながら、復調の起因を考察していきたい。
大きな怪我を乗り越えて
オックスレイド=チェンバレンは、17/18シーズンにアーセナルからリバプールへ加入した。理由としては、移籍前は主にサイドでのプレーが多かったが、兼ねてから本人が中盤でプレーしたいという願望があり、それを叶えられるクラブへ移ることを決断した為だった。
加入初年度、イングランド代表MFは主に4-3-3の中盤のインサイドハーフとしてプレー。プレミアリーグでは、同リーグ内でキャリア最高となる32試合に出場し、3ゴール 7アシストを記録。特に、プレミアリーグとチャンピオンズリーグ、それぞれで対戦したマンチェスター・シティ戦でのミドルシュートは、どちらもシーズンのハイライトとなるゴールだった。
移籍当初は、本当に中盤が彼に務まるのかと懐疑的な声は多方面からあったが、それらを一掃するほどの印象的な活躍を見せつけたのだ。
しかし、同シーズン、彼には悪夢も襲いかかっていた。2018年4月のチャンピオンズリーグ準決勝 ローマ戦。この日先発で出場していたオックスレイド=チェンバレンは後半に相手選手と交錯して転倒。右足首を痛め、ピッチ上で処置を受けたが交代を余儀なくされた。
診断結果は膝前十字靭帯断裂。全治約1年の重傷を負ったのだ。その後のレアル・マドリーとのCL決勝、イングランド代表としてのロシアワールドカップ出場のチャンスも絶たれ、そして18/19シーズンのほとんどを棒に振ることを余儀なくされた。
長いリハビリを乗り越え、2019年4月26日のハダースフィールド・タウン戦、73分にダニエル・スタリッジと交代して367日ぶりにピッチに帰ってきたのだった。
「彼が戻ってきたことは我々にとって朗報だ。まずはどの程度のインテンシティを持って試合に臨めるのか確認しなければならない。間違いなく彼はスカッドに入る。ただ、スタメンで起用するかどうかはまだ決めていない。もちろん、試合のどこかでは起用するよ。確かにナビが離脱したことはチームにとって痛手だが、オックスの復帰は間違いなくチームを活性化させてくれるだろう」
復帰直後、監督であるユルゲン・クロップはオックスレイド=チェンバレンについてこの様に話していた。
そして迎えた19/20シーズン、彼にとっては真価を見せつけるための勝負の年だった。
復調の起因を探る
オックスレイド=チェンバレンの最大の持ち味はドリブルだ。相手の守備網を1人で打開できる推進力はリバプールの中盤の選手の中でも唯一無二の武器だろう。アーセナル時代も、サイドの選手として持ち味を存分に活かしていた。
リバプール加入後は中盤に主戦場を移したことで、元々高かった足元の技術が存分に活きる様になった。ドリブルだけでなくチャンスに直接結びつく決定的なスルーパスや豪快なミドルシュート、時にはゲームのリズムを作るためにビルドアップに積極的に参加するなど、プレーに幅が広がったのだ。
加入初年度、特にシーズン後半は上記の彼の良さがチームに完全にフィットし、キープレーヤーとなっていた。
では、ここでリバプールの番記者であるKristian Walshによる、オックスレイド=チェンバレンの17/18シーズンと今シーズンの90分辺りの平均スタッツ比較を紹介する。
ゴール:0.18 v 0.38
アシスト:0.18 v 0
枠内シュート:2.19 v 2.61
ゴール期待値(xG):0.16 v 0.21
パス:40 v 44.5
ドリブル:5.64 v 4.68
パスカット:4.12 v 3.76
回収率:6.13 v 5.83
スルーパス:1.37 v 1.69
ファイナルサードでのパス:6.45 v 6.52
ボックス内へのパス:4.65 v 4.37
縦へのランニング:2.47 v 1.61
パスの受け:28.06 v 34.91
縦へのパス:11.35 v 10.2
ボックス内でのタッチ:1.94 v 2.46
後に詳しく説明するが、これは今シーズンの彼の復調のきっかけとなった2月24日のウェストハム戦前の数字である。
17/18シーズンと比べると、既に全体的にスタッツが良くなっていることが分かる。しかし、持ち味であるドリブル回数、縦へのパスはやや減少気味。パスを受ける回数やパスの数が増えたりしている事から、中盤の選手として、よりゲームのバランスを取る役割にフォーカスをシフトしていたのだろう。
2月24日に行われたプレミアリーグ 延期分の第15節 ウェストハム戦、その日のチェンバレンはベンチスタートだったが、ウェストハムがリードした直後にナビ・ケイタに変わって出場し、インパクトを残した。
「Oxが出てきて最初の貢献はシュートだったね。惜しかったけど、シュートで終えられた。次はドリブル。ファールかよく分からないけど、ファウルでなければ、再びより良いポジションにまで持っていけてたんじゃないかな。あのダイナミックさには助けられたね。常に、交代選手がゲームの方向性をつかめば、明らかにそれを高く評価するものだ。本当に助かったよ」
監督のユルゲン・クロップがそう語るように、この日のオックスレイド=チェンバレンは17/18シーズンの時のパフォーマンスを連想させるような、攻撃的なプレーに積極的だった。結果としてゲーム流れがリバプールに向き、勝利に繋がったのだ。
ウェストハム戦をきっかけに、自身の持ち味を出す事の重要性を改めて掴んだのかもしれない。そこから、比較的若手とサブメンバー中心で臨んだカラバオカップ チェルシー戦を除く公式戦3試合で続けてスタメンを飾った。
鍵はサラーとフィルミーノ?
1vs1勝利率 100%
タックル勝利率 100%
パス成功率 82%
シュート数 6 (枠内シュート数 2)
ボールリカバリー数 6
インターセプト数 3
上記は、大活躍だったアトレティコ・マドリー戦のスタッツだ。数字で見ても圧倒的なパフォーマンスを見せつけている。
この試合を紐解いてみると、実は彼の活躍の裏にはロベルト・フィルミーノとモハメド・サラーが深く関わっていたのだ。
アトレティコはポジショニングを全体的に引いた4-4-2で2ラインのブロックを組む戦術で挑んだ。それに対してリバプールは相手MFとDFの間、ライン間で数的有利を作ろうと試みていた。
具体的に説明する。ワントップのフィルミーノが、インサイドハーフの位置まで降りたことで自ずと中盤が3枚になる。すると、相手CBはマークを付くのを止め、リバプールのビルドアップ時、相手SBは両ウイングに、サイドハーフは両SBに、そして相手の2ボランチがワイナルドゥムとフィルミーノにマークが付いたことで、必然的にオックスレイド=チェンバレンが浮く形となったのだ。よって、ハーフスペースでフリーになった事で、あの試合の活躍が生まれたのだ。
後半の中盤あたりからアトレティコがポジショニングを修正してゲームが落ち着く展開になったことで、彼の活躍には、ある程度のスペースが無いと難しいということも浮き彫りとなった。今後、引き続きオックスレイド=チェンバレンの活躍が続くには周りの選手、特に近くにいるフィルミーノとサラーのポジショニング、そして相手との駆け引きも鍵となってくるはずだ。
これからへの期待
オックスレイド=チェンバレンはアーセナルに所属している時、名だたる名プレーヤーに名指しで批判された過去がある。現在アメリカ メジャーリーグサッカーで指導者を務めてるティエリ・アンリは
「ずっと彼を見てきて、彼はいったい何が得意なのかもわからなかった」
と厳しいコメントを残し、マンチェスター・ユナイテッドのレジェンドであるギャリー・ネヴィルも、リバプール移籍が決まった時には
「彼はリヴァプールを強化する選手ではない」
と一蹴した。
16歳でプロデビューを飾ったこともあり、若くからスポットライトを浴びた選手だった。様々な逆境に対して、オックスレイド=チェンバレンはプレーで幾度も跳ね返してきた。
実は、幼少期からリバプールのファンだったという。 そして彼のアイドルはリバプールのレジェンドであるスティーブン・ジェラード。 リバプール移籍時にされたインタビューでは、
「僕が本当にやりたいのはセンターミッドフィルダーなんだよ。何故なら僕は長い間、貴方を目標に頑張ってきたからね。」
と、現場にいた本人の前で明かしている。
そんな彼もまだ26歳。選手としては丁度ピークを迎えている程の年齢だ。伸び代は十分にある。最近調子が落ち始めたチームを立て直すのに、彼の活躍は必要不可欠だ。
大怪我を乗り越え、ジェラードという大きな背中を追いかける為、新たな1歩を踏み出し始めた。
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