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ヘンダーソンは真のキャプテン。離脱したからこそ分かる彼の重要性【週刊LFCマガジン #4】

「キャプテンがいない時、それを感じる事ができる。」

アンドリュー・ロバートソンが『The Athletic』に怪我で離脱しているジョーダン・ヘンダーソンについて話した時の一言だ。

今シーズンのヘンダーソンのパフォーマンスは別格だ。インサイドハーフとして常に相手の驚異となり、ファビーニョが離脱した際にはアンカーを務め、これまで数年間彼を見てきていたファンでさえもが驚愕する程のソリッドなパフォーマンスを見せつけた。既にシーズンの年間最優秀選手に推される声も大きくなってきている。

しかし、2月19日のチャンピオンズリーグ、アトレティコ・マドリー戦でハムストリングを負傷をし、約3週間の離脱を強いられた。

そこからというもの、チームはキャプテンの不在に乗せられるかのように調子を落としていった。約2週間後のリーグ戦では黒星を喫し、44試合続いた無敗がストップしたのだ。

ヘンダーソンが離脱した事による影響はチームにとって大打撃だった。離脱期間での不調が偶然ではないと言えるほど、今やクラブにとっての彼の存在は確固たる物となっている。

本記事では、あまり触れられる事の無かったヘンダーソンのキャプテンとしての役割、離れてから分かる彼の重要性を振り返りながら探っていく。

背中を見せ続ける事で得た信頼

語られるべきはピッチ外での貢献だろう。長年リバプールの番記者を務めているJames Pearceによると、ヘンダーソンのリーダーシップはリバプールにとって必要不可欠なピースであると『The Atletic』で明かしている。

記事によると試合前、リバプールのドレッシングルームで、ヘンダーソンは必ずチームメイトへアドバイスとモチベーションを上げる為のスピーチをするそうだ。しかし、決して長い言葉を並べているわけではなく、非常に簡潔にまとめられている。キャプテンが話すと、自然と静まり、彼の言葉に耳を傾ける。そして戦いの用意が整うのだ。

普段からチームメイトに対して、リーダーシップを言葉で示すことは多くないという。では、ファン・ダイク、アンドリュー・ロバートソン、モハメド・サラー、サディオ・マネと、それぞれが各国の代表でキャプテンマークを巻いてる選手を多く揃えているリバプールで、いかにしてヘンダーソンはそれ程までのリスペクトを得たのか。

ヘンダーソンはリバプールに加入以降、足底筋膜炎と呼ばれる、足の裏に慢性的な怪我を抱えながらプレーをしている。昨シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝セカンドレグ、バルセロナ戦のハーフタイム。ユルゲン・クロップがドレッシングルームでスピーチをする中、いるはずのキャプテンの姿は無かった。前半に膝に重度の打撲を負った彼は痛み止めを打ち、身体がこわばること無く後半もプレーできるように近くにあるウォームアップの為の部屋でエクササイズバイクに乗って身体を動かし続けていた様だ。勝利後に膝を抱えて蹲りながら喜びを噛み締めていた姿は印象的であった。

昨年、ヘンダーソンが長らく務めていたアンカーのポジションにファビーニョが加入した。シーズン途中にこのブラジル人がアンカーでのスタメンを確保したことでキャプテンは1列前でプレーする機会が増え、最終的にはその形がチームとして確率した。しかし、今シーズン途中にファビーニョが負傷で離脱。穴埋めとしてヘンダーソンがアンカーの位置に戻ることとなった。これまで同ポジションでは守備的な役割をこなす事が多かったのだが、戻って以降は積極的に攻撃にも参加するようになった事で凄まじい機動力を発揮していたのだ。

『皮肉なことに、11月から1月にかけてファビーニョが抜け、ヘンダーソンがアンカー役割を果たした期間が恐らくリバプールのキャリアで最高のプレーだった。プレイヤー自身がファビーニョを見ていて良いプレーを盗んでいた事を認めた。恐らく今シーズン、彼がタイトルを逃さないようにするという彼の決意と相まって、学びたいという欲求が彼にインスピレーションを与えたのだ』

『Fourfourtwo』は今シーズンのヘンダーソンの活躍をこう報じた。

怪我と向き合う不屈の精神、29歳というベテランの域が近づく年齢であってもプレーをより向上させようとする意欲。彼は常に、強いプロフェッショナルとしての意識を持ってプレーを続けている。自分に対する厳しさとひたむきさが、リバプールのキャプテンとしての威厳に直結しているのだ。

ウェストハム戦での出来事

ヘンダーソンの3週間の離脱が決まった初戦、リバプールは未消化分であったプレミアリーグ 18節、アウェイでのウェストハム戦を迎えた。『The Atletic』によると、この日のヘンダーソンはチームに帯同をしていなかったという。アンフィールドでチームメイトに会い、ウェストハムの本拠地であるロンドン市内のホープストリートホテルからスタジアムまでの遠征に参加していなかった。

キックオフ時、彼はメインスタンドでメンバー外の選手と共に座り、試合を見つめていたのだった。1-1で前半を終えると、ヘンダーソンはドレッシングルームへ向かっていた。

「ヘンドは真のリーダーだね。 彼はいつもドレッシングルームでいくつかの言葉を僕らに与えるんだ。そして、(ハーフタイムに)彼はいたんだ。彼がいつもゲームの前にいるのと全く同じような感じだったね」
「彼がそこにいて良かった。 誰もが傍観者であることを嫌い、それはヘンドも例外じゃないよ。彼が早く帰ってくるほど、僕ら全員にとって良いことさ」

ロバートソンはウェストハム戦のハーフタイムでの出来事をこう語る。いかにリバプールのキャプテンとしてのヘンダーソンがチームにとって重要であるかが改めて証明された瞬間だった。

悲願のリーグタイトルを掲げるまで

ヘンダーソンがリバプールに加入して、約9年が経った。加入当初にはフルハムに所属する選手とのトレード要員として考慮されているとクラブに伝えられた時もあった。愛する父親が癌を患いメンタル的に不安定になった時もあった。ファンから必要無いと批判を浴びた時もあった。それでも彼は立ちはだかる壁に逃げること無く幾度も向き合ってきた。そして立ち上がってきた。

プレーヤーとしては完璧な選手では無いのかもしれない。信じられないほどのテクニックやゴールでファンを魅了させる様な選手ではないかもしれない。しかし、彼はそれ以上にプロフェッショナルとしての模範をチームに示し続けてきた。ファンに対しても忠誠を近い、その足を止めること無くアンフィールドのピッチを走り続けてきた。尊敬に値するのでは無く、勝ち取ったのだ。

ヘンダーソンは2011/12シーズンからクラブに残っている唯一の選手だ。プレミアリーグに赤と白のリボンが巻かれたタイトルを掲げる、リバプール最初の選手として歴史に名を刻む日が刻一刻と迫っている。

2014年に優勝が目前にまで近づいたシーズンの終盤、彼は一発退場処分を受けて最後の3試合を欠場し、マンチェスター・シティに逆転優勝を許した過去がある。リバプールでのリーグ優勝に対する思いは、誰よりも強いだろう。

それでも、ヘンダーソンはリーダーとしての役割を貫いている。アレックス・オクスレード=チェンバレンがヘンダーソンが優勝について話すチームメイトを注意し、それを話題にするのを禁じていると『Liverpool Echo』に明かしたのだ。

常に慢心すること無く、目の前の事だけに向き合い続けろという彼なりのメッセージなのかもしれない。

「彼は素晴らしい選手だ。我々のキャプテン。もし彼について本を書くなら、500ページは書けるだろうね。ジェラードの代わりを務める事は最も難しい役割だ。彼はそれに対してとても見事に取り組んできた」

指揮官であるクロップはヘンダーソンについてこの様に評価している。そして他の選手に自分がこなしている以上の努力を要求せず、チームプレーを常に求めている。彼の様なキャラクターがいなければこの状況はありえないとも言及した。

一応、数字としても彼の重要性を示しておこう。今シーズン、ヘンダーソンが出場した34試合は28勝4分2敗。勝率が82%に対し、彼が欠場した12試合は7勝2分3敗で勝率が58%。勝率は25%の差が出る程、違いは歴然である。

昨日、ヘンダーソンが日曜日にチームの全体練習へ復帰し、0-1のビハインドの状況で迎える来週のチャンピオンズリーグセカンドレグ、アトレティコ・マドリー戦に出場予定だと各メディアが報じた。

選手や監督だけでなく、チームに関わる全ての人が尊敬する真のキャプテンが、満を持して戻ってくる。

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小津 那 / Dan Ozu
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