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2.新電力に依存する再生可能エネルギー

 2024年2月現在、国内電力会社の発電設備の総発電最大出力は、2億6884万kWに達している。その内訳は、大手電力会社の保有分が1億9642万kWであり、全体の73.1%を占めている。一方で、新電力会社の保有分は、7243万kWで26.9%である。

 大手電力会社の発電設備の保有割合は、太陽光発電が0.74%、風力発電が1.43%、バイオマス発電は0%と著しく低い。このことから、大手電力会社は主として既設の原子力発電、火力発電、水力発電の設備を維持するに留まり、新電力会社が太陽光発電、風力発電、バイオマス発電など新エネルギー開発に取り組んできた状況が観えてくる。

 1973年と1978年の2度の石油ショックを受け、電力安定供給のために発電方式の多様化(ベストミックス)が必要とされ、原子力・火力発電に替わるエネルギーとして各種の再生可能エネルギーの開発と導入が、大手電力会社を中心に進められてきたはずである。どこで、間違えたのか?


2.1 大手電力会社の発電設備(発電最大出力)の構成

 大手電力会社がどのような発電設備を保有しているのか?、資源エネルギー庁統計(2024年2月)が公表する発電最大出力を比較してみよう。

図2 大手電力会社の発電最大出力の構成比較 出典:資源エネルギ庁統計

 しかし、この結果からは大手電力会社の発電設備構成が読み取りにくい。なぜなら、2015年4月に東京電力フュエル&パワーと中部電力が火力部門を統合して「JERA」が発足したためである。

 また、2016年4月には、東京電力が福島第一原発事故の責任を果たすとともに、電力自由化の流れを受けて送配電事業および電力小売事業をそれぞれ分社化し、ホールディングカンパニー制に移行した。2019年10月には、再エネ事業を東京電力リニューアルブルパワーをに切り出した。

2.2 エリア別の大手電力会社の発電最大出力の比較

 東京電力HD(50%)と中部電力(50%)の株式保有比率でJERAの発電設備を割り振り、東京電力の子会社を東京電力HDにまとめて、エリア別の大手電力会社の発電設備構成を観てみよう。

 図から、産業活動の活発な首都圏、中京圏、関西圏での発電設備は、飛び抜けて多い。
 国策会社として発足した「電源開発」と、地理的・地形的制約から水力発電や原子力発電の開発が困難な「沖縄電力」を除き、各エリアでは多様な発電方式(ベストミックス)が追究された形跡はある。

 しかし、水力以外の再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)に関しては、設備保有量は極めて寡少でグラフでは見えてこない。

図3 エリア別の大手電力会社の発電最大出力の比較 出典:資源エネルギー庁統計

2.3 エリア別の大手電力会社の電源構成比率

  各エリアの電源構成比率(発電最高出力の比率)を比較してみると、それぞれの電力会社の特徴が分かる。しかし、水力以外の再生エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)比率は寡少すぎて見えない。

 「東京電力HD」と「中部電力」のエリアの電源構成は良く似ており、火力発電が70%以上と高く、残りが脱炭素に有効とされる原子力+水力(揚水を含む)である。共に火力発電比率が高いので、JERAに切り出して見えにくくしたのか? 

 「東北電力」と「中国電力」も、火力発電は65%程度と高めで、「四国電力」は火力発電が60%程度、「北海道電力」と「北陸電力」は火力発電が55%程度で、残りが原子力+水力(揚水を含む)である。

 一方、「九州電力」と「電源開発」は、火力発電が50%程度、「関西電力」は、火力発電が45%程度と低めで、原子力+水力(揚水を含む)発電が同等レベル以上である。

 「沖縄電力」は、島嶼とうしょをカバーするという特殊事情もあり、火力発電100%である。

図4 エリア別の大手電力会社の発電設備の構成比 出典:資源エネルギー庁統計

 再生エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)について、構成比率が最も高いのは「九州電力」であるが、地熱発電による1.3%であり、他の大手電力会社では1%にも満たない。

 以上から、大手電力会社では再生エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)の導入には極めて消極的である。しかし、そのような印象は受けて来なかった。
 
次に、各大手電力会社について、より詳しく再生可能エネルギーの導入事情を観てみよう。(つづく)

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