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13.「沖縄電力」の再生可能エネルギーへの取り組み

 島嶼とうしょという地理的・地形的制約のため、大規模な水力発電や原子力発電の開発が困難な「沖縄電力」では、火力発電がほぼ100%である。 


13.1 沖縄電力グループの現状

  2019年6月、沖縄電力は、自然災害時に送配電の指揮・監督の下での円滑な対応・早期復旧に支障をきたすとして、法的な発送電分離の対象外として兼業が認可された。
 そのため「沖縄電力」は、従来通り販売本部、送配電本部、発電本部で構成される事業会社である。

 2020年12月、沖縄電力は「沖縄電力ゼロエミッションへの取り組み」を定め、「再エネ主力化」「火力電源のCO2排出削減」により、2030年度に2005年度比でCO2排出量の30%削減をめざしている。

 「再エネ主力化」では、2030年までに再エネ導入10万kW(蓄電池付太陽光5万kW、風力5万kWをグループ会社で設置)を進め、2050年に向け最大限導入を図る。
 2023年3月時点では、風力発電(8基、0.2315万kW)を保有している。

 「火力電源のCO2排出削減」では、2030年までに非効率火力のフェードアウトクリーン燃料の利用を拡大する。すなわち、石油からLNGへの燃料転換、石炭火力での地域バイオマスの混焼を進める。2050年に向けてはCO2フリー燃料(水素、アンモニア)への転換と、次世代型火力等の最新技術導入を図る。
 2023年3月時点では、石炭(75.2万kW)、LNG(53.7万kW)、石油(87.458万kW)を保有している。 

 「沖縄電力」の実態は火力発電主体で分かりやすい。カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギーの積み増しの有効性を次に観てみる。 

13.2 「沖縄電力」エリアの電源構成

 2020年3月、「エネルギー供給構造高度化法」で中間目標値が設定された。年間販売電力量が5億kWh以上の電気事業者に対し、「2030年度に非化石電源比率を44%以上」という目標が定められたのである。
 ただし、実質的に目標達成が不可能な沖縄電力は、平成 29年度(2017年度)の供給計画の最終年度の非化石電源比率以上を目標値とできる。

 資源エネルギー庁統計によれば、沖縄電力は、国内総発電設備の約3.9%を保有する電力会社である。火力発電設備は99.9%、風力発電が0.1%である。そのため、非化石電源比率は0.1%と極めて寡少である。  

図25 沖縄電力の電源構成 出典:資源エネルギー庁統計

13.3 再生可能エネルギー開発の取り組み

 2021年4月、経済産業省の総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第31回)が開催され、電気事業連合会が主要電力会社の再生可能エネルギー開発の取り組みを報告している。

 今後、沖縄電力グループとして、2030年までに再生可能エネルギーの導入量として10万kWを示している。すなわち、蓄電池付太陽光発電(出力:5万kW)、風力発電(5万kW)をグループ会社で設置を進め、2050年に向けて最大限導入をめざすとしている。

図26 沖縄電力グループの再エネ開発に向けた取り組み 出典:電気事業連合会

 「沖縄電力グループ」は、2030年までに仮に再生可能エネルギー10万kWを導入した場合、総出力226.6kWで、火力発電設備は95.3%、再生可能エネルギー設備は4.7%である。そのため、非化石電源比率は4.7%となる。

 非化石電源比率が低すぎて、「再エネ主力電源化」を旗印に掲げているが実現の道筋が全く見えてこない。観光地であり台風という問題も抱えているが、米国ハワイ州のような再エネをリードする取り組みが望まれる。
 一方で、火力電源のCO2排出削減を表明しているが、具体的に、何時までに、何を実施するのを明らかにするべきである。 

 次に、東京電力フュエル&パワーと中部電力との間で既存火力発電事業を統合して発足した「JERA」について、再生可能エネルギー開発の取り組みを観てみる。                     
                            (つづく)

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