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9.「北陸電力」の再生可能エネルギーへの取り組み

 「北陸電力」は、火力発電が55%程度で、残り45%が原子力+水力(揚水を含む)と、大手電力会社の中では火力比率が低い。
 しかし、再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)については、構成比率が1%にも満たず、導入は消極的なようである。詳しく再生可能エネルギーの導入事情を観てみる。


9.1 北陸電力グループの現状

  2019年4月、北陸電力の送配電事業部門が、法的な発送電分離の措置により「北陸電力送配電」に分社化された。
 そのため、現在、「北陸電力」はグループの持株会社、および電源事業本部(火力、原子力、水力)と、販売事業本部を抱える事業会社である。

 2019年4月、「北陸電力グループ2030長期ビジョン」 を設定したが、2022年4月には非化石電源比率50%以上を明記するとともに、新たに2013年度比でCO2排出量削減率50%以上の目標を設定した。

 「ゼロエミッション火力」では、2030年までに石炭火力(敦賀2号機、七尾大田2号機)でのバイオマス混焼拡大(+15億kWh、再エネの内数)と専焼化、アンモニア・水素混焼の検討、2050年までにバイオマス専焼化とアンモニア・水素等への転換を進める。
 併せて、高効率石炭火力への更新、CCUS、石炭火力のLNG化、IGCC・IGFC等の導入によるCO2削減を進める。

 「原子力の最大限の活用」では、2011年3月の福島第一原発事故の影響を受けて停止中の、BWR型の志賀原発1号機(出力:54万kW、1993年運開)、ABWR型の志賀原発2号機(出力:120.6万kW、2006年運開)の2030年までの早期再稼働をあげている。
 現在、最大震度7を観測した能登半島地震で、海底活断層の問題が浮上しており、審査申請中の2号機再稼働の見通しは立っていない。 

 「再生可能エネルギーの主力電源化」では、2030年までに水力・風力・太陽光発電を導入拡大し、再エネ開発量を+100万kW(+30億kWh)積み増す。また、2050年までに域内外、海外への導入拡大をめざす。  

 「北陸電力」の脱炭素化の実態は分かりやすい。カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギーの積み増しの有効性を次に観てみる。

 ところで、2023年5月、経済産業省は、北陸電力と北陸電力送配電に業務改善要請を行った。一般送配電事業者において、漏えいを禁じられている新電力の顧客情報が、小売電気事業者側で閲覧可能となった例があり、送配電事業を持株会社とした弊害が露見したためである。

9.2 「北陸電力」エリアの電源構成

 2020年3月、「エネルギー供給構造高度化法」で中間目標値が設定された。年間販売電力量が5億kWh以上の電気事業者に対し、「2030年度に非化石電源比率を44%以上」という目標が定められたのである。

 資源エネルギー庁統計によれば、北陸電力は、国内総発電設備の約3.1%を保有する国内九位の電力会社である。火力発電設備は55%、原子力発電設備は21%、水力発電設備(揚水なし)が24%で、その他の再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)は1%に満たない
 しかし、非化石電源比率(原子力+再エネ)は45%で、既に中間目標をクリアしている。調整電源である揚水発電は保有していない。

図17 北陸電力の電源構成 出典:資源エネルギー庁統計

 また、2023年3月時点で北陸電力グループの発電設備は、火力発電設備(456.5万kW)、原子力発電設備(174.6万kW)、水力発電設備(193.67万kW)、風力発電設備(2.96万kW)、太陽光発電設備(0.4万kW)で総出力は828.13万kWである。
 北陸電力グループとしては、日本海発電が風力発電2.96万kWを保有する程度で設備構成に大きな変化はない。非化石電源比率は45%であり、2030年の中間目標はクリアしている。

9.3 再生可能エネルギー開発の取り組み

 2021年4月、経済産業省の総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第31回)が開催され、電気事業連合会が主要電力会社の再生可能エネルギー開発の取り組みを報告している。

 北陸電力は、「再生可能エネルギーの主力電源化」で、2030年までに水力・風力・太陽光発電を導入拡大し、再エネ開発量を+100万kW(+30億kWh)積み増す。また、2050年までに域内外、海外への導入拡大をめざすとしている。 

図16 北陸電力グループの再エネ開発に向けた取り組み 出典:電気事業連合会

 北陸電力グループは、2030年までに火力発電設備(456.5万kW)、原子力発電設備(174.6万kW)、再エネ発電設備(297.03万kW)をめざすとしており、総出力は928.13万kWとなる。
 すなわち、火力発電設備は49%、原子力発電設備は19%、再エネ発電設備(水力+太陽光+風力など)が32%である。非化石電源比率(原子力+再エネ)は51%に達する。  

 問題は、「ゼロエミッション火力」として、他の大手電力会社の多くが示す「非効率石炭火力の休廃止」を明確に掲げていない点にある。
 また、バイオマス混焼、水素・アンモニア混焼により石炭火力を使い続けるとしている点は、問題視される。
 さらに、2050年に向けて、バイオマス専焼化とアンモニア・水素等への転換を進めるとしているが、その道筋が具体的に示されていない。
 
既に、非化石電源比率の中間目標をクリアし、安心しているのか? 

 次に火力発電比率の高い、国内総発電設備の約5.9%を保有する国内六位の九州電力について、詳しく再生可能エネルギーの導入事情を観てみよう。                     
                            (つづく)

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