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11.「電源開発」の再生可能エネルギーへの取り組み

 「電源開発」の電源構成は、火力発電が50%程度、残りの50%程度が水力(揚水を含む)発電である。その他の再生エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)は1%にも満たない。


11.1 電源開発グループの現状

 1952年9月に国策会社として発足した電源開発は、2004年10月に民営化され、愛称を「J-POWER」とした。
 2020年4月、電源開発の送配電事業部門が、法的な発送電分離の措置により「電源開発送変電ネットワーク」に分社化された。
 そのため、現在「電源開発」はグループの持株会社、および火力、原子力、水力、陸上/洋上風力などの事業部門を有し、卸電力市場を通じて大手電力会社に電力販売を行う事業会社である。

 2021年2月、電源開発は、カーボンニュートラルと水素社会の実現に向けた取組みとして「J-POWER “BLUE MISSION 2050”」を公表し、「CO2フリー電源の拡大」、「電源のゼロエミッション化」、「電力ネットワークの増強」を掲げた。

 「CO2フリー電源の拡大」では、2022年7月時点で987.4万kWの再エネを2025年に1103.3万kW以上に増設し、既存設備のアップサイクルと、陸上・洋上風力、小水力、地熱、太陽光などの新規開発を加速する。ただし、海外プロジェクト分を含む。水力発電は国内でグリーン水素製造も開始する。
 また、建設中の大間原発(ABWR、138万kW)の稼働をめざすが、運転開始は早くても2030年度としているが、見通しは立っていない。

 「電源のゼロエミッション化」では、2050年に向けて国内石炭火力のフェードアウト、バイオマス混焼の拡大、アンモニア混焼の導入を進める。
 また、2050年に向け検証中の石炭ガス化複合発電(IGCC)技術に基づく水素発電の検討を進め、CO2フリー水素の製造・発電をめざす。

 2024年6月、国内で保有する石炭火力16基の内、9基を改修してCO2排出を最終的にゼロにすると発表した。
 2030年度までに松島1号機など3基廃止、2基を廃止/休止にする。また、2030年までに橘湾1、2号機や松浦2号機でアンモニア混焼(20%)を開始し、段階的に混焼比率を高める。

 また、四国電力や九州電力と協力し、オーストラリアや東南アジアからグリーンアンモニアを100万トン超/年の輸入計画を公表した。安定調達に向けオマーンでは英国ヤムナなどと共同で100万トン/年のプラント建設も計画し、北米でも製造事業に参画する検討を始めた。

 一方、CO2の回収・貯留(CCS)の事業化では、ENEOSなどと組み、2030年度までにCO2の地下貯留技術も事業化する。IGCCを長崎県や沖縄県など3基の石炭火力に導入し、パイプラインや船で運んでCO2を貯留する。

 美しい言葉が並ぶが、「電源開発」の脱炭素化の実態は観えてこない。企業として海外展開は重要であるが、再エネでは国内と海外の実績・目標を分離して示すべきである。また、石炭火力のフェードアウト、グリーン燃料化とCCS化の具体的な計画を公表すべきである。

11.2 「電源開発」の電源構成

 2020年3月、「エネルギー供給構造高度化法」で中間目標値が設定された。年間販売電力量が5億kWh以上の電気事業者に対し、「2030年度に非化石電源比率を44%以上」という目標が定められた。ただし、電源開発は小売電力会社ではないため、この目標値は適用されない。

 資源エネルギー庁統計によれば、電源開発は、国内総発電設備の約6.3%を保有する国内四位の電力会社である。火力発電設備は49.5%、原子力発電設備は0%、水力発電設備(揚水を含む)が50.5%で、その他の再生エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)は1%に満たない
 非化石電源比率(原子力+再エネ)は50.5%であり、調整電源である揚水発電分を差し引くと21.3%である。

図21 電源開発の電源構成 出典:資源エネルギー庁統計

 ところで、電源開発がHPに示す発電設備(2022年6~8月)には、石炭火力(出力:852.4万kW)、一般水力発電(出力:363.8kW)、揚水(437万kW)、風力発電(59.32万kW)、地熱発電(7.599万kW)、太陽光発電(3.199万kW、2024年度予定)、バイオマス発電(出力不明)が示されている。(資源エネルギー庁統計と数値が異なる理由は不明)

 これによると、2022年6~8月時点の電源開発の発電設備は、火力発電設備は49.5%、原子力発電設備は0%、水力発電設備(揚水を含む)が46.5%で、その他の再生エネは4.1%であり、総出力は1723.318万kWである。
 その結果、非化石電源比率(原子力+再エネ)は50.5%であり、調整電源である揚水発電分を差し引く33.7%である。 

11.3 再生可能エネルギー開発の取り組み

 2021年4月、経済産業省の総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第31回)が開催され、電気事業連合会が主要電力会社の再生可能エネルギー開発の取り組みを報告している。

 電源開発は、「CO2フリー電源の拡大」では、2022年7月で987.4万kWの再エネを、2025年に1103.3万kW以上をめざし、既存設備のアップサイクルと、陸上・洋上風力、小水力、地熱、太陽光などの新規開発を加速する。ただし、海外プロジェクト分を含む目標である

図22 電源開発グループの再エネ開発に向けた取り組み 出典:電気事業連合会

 「電源開発」は、他の大手電力会社とは異なり、主に石炭火力と一般水力/揚水発電を推進してきた経緯がある。そのため、2022年6~8月時点で、非化石電源比率は50.5%であり、調整電源である揚水発電分を差し引くと25.2%と低く、中間目標には程遠いのが現状である。

 現時点で、第6次エネルギー基本計画でめざしている国内の再生可能エネルギー発電量は目標未達であるため、海外プロジェクトとは別に国内での脱炭素化の動きを加速する必要がある。
 電源開発は石炭火力のみを保有する。国内石炭火力のフェードアウトの先例となるべく、具体的な削減量と削減時期を公表する必要がある。

 次に火力発電比率の高い、国内総発電設備の約10.4%を保有する国内三位の関西電力について、詳しく再生可能エネルギーの導入事情を観てみよう。                     
                            (つづく)

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