12.「関西電力」の再生可能エネルギーへの取り組み
大手電力会社の中で「関西電力」は、火力発電が45%程度と低く、残り約55%を原子力+水力(揚水を含む)発電が占めている。
しかし、再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、バイオマス)については、1%にも満たないのが現状である。
12.1 関西電力グループの現状
2020年4月、関西電力の送配電事業部門が、法的な発送電分離の措置により「関西電力送配電」に分社化された。
そのため、現在「関西電力」はグループの持株会社、および電源事業本部(火力、原子力、再エネ)と、販売事業を抱える事業会社となった。
2020年2月、関西電力グループは「ゼロカーボンビジョン2050」を宣言し、「デマンドサイドのゼロカーボン化」、「サプライサイドのゼロカーボン化」、「水素社会への挑戦」を柱に、2050年までにCO2排出量のゼロ化をめざしている。
2024年4月には、「ゼロカーボンロードマップ」を策定し、具体的に再生可能エネルギー、原子力発電、ゼロカーボン火力発電に加えて、CCUS、水素製造・輸送・供給、送配電の領域にも取り組むとした。
「再生可能エネルギー」は、2024年6月時点で、一般水力(出力:336,421万kW)、揚水(488.4万kW)、太陽光(出力:4.466万kW)、風力(1.8万kW)、バイオマス(18.7万kW)を保有している。
2040年までに、洋上風力を中心に国内で1兆円規模の投資を行い、再生可能エネルギーの新規開発を500万kW、累計開発900万kW規模をめざす。
「原子力」は、PWR型の美浜原発3号機(出力:82.6万kW、1976運開)、高浜原発1号機(82.6万kW、1974年)、2号機(82.6万kW、1975年)、3号機(87万kW、1985年)、4号機(87万kW、1985年)、大飯原発3号機(118万kW、1991年)、4号機(118万kW、1993年)と全機が再稼働している。
運用の高度化で稼働率向上、新増設・リプレースの実現(革新型軽水炉、SMR、高温ガス炉)、水素製造への活用をめざす。
「ゼロカーボン火力」では、石油火力(304万kW)、LNG火力(822.64万kW)、石炭火力(180万kW、舞鶴発電所のみ)が稼働しているが、改造・リプレースにより2030年頃にゼロカーボン燃料の混焼実施、2050年までに専焼化をめざす。
また、2030年頃までにCCUS導入の検討を進め、2050年に向けてCO2回収量の拡大を図る。例として、2025年3月にLNG火力の南港発電所(180万kW)を廃止し、2029年度にLNGコンバインドサイクルを運開、2050年に向けてCCS付き運転または水素専焼発電をめざす。
原子力発電所が全機再稼働しており、「関西電力グループ」の脱炭素化の実態は分かりやすい。次に、カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギーの積み増しの有効性を観てみる。
一方、2023年3月、公正取引委員会は、中部電力、中部電力ミライズ、中国電力、九州電力、九電みらいエナジーに対し、独占禁止法違反の規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令(総額1010億円)を行った。
電力小売りの全面自由化が進められる中で、相互エリアでの営業活動を自粛する密約が、主導した関西電力のリークで発覚した結果である。
12.2 「関西電力グループ」の電源構成
2020年3月、「エネルギー供給構造高度化法」で中間目標値が設定された。年間販売電力量が5億kWh以上の電気事業者に対し、「2030年度に非化石電源比率を44%以上」という目標が定められたのである。
資源エネルギー庁統計によれば、関西電力は、国内総発電設備の約10.4%を保有する国内三位の電力会社である。火力発電設備は46.8%、原子力発電設備は23.6%、水力発電設備(揚水を含む)が29.6%で、その他の再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)は1%に満たない。
非化石電源比率(原子力+再エネ)は53.2%であり、調整電源である揚水発電分を差し引くと43.3%である。
関西電力がHPで公開している2024年6月時点の再生可能エネルギーでは、
一般水力(336.4kW)、太陽光(4.466kW)、風力(1.8kW)、バイオマス(18.7万kW)と若干異なるので、総出力は2814万kWとする。
その結果、関西電力グループでは、火力発電設備は46.4%、原子力発電設備は23.4%、水力発電設備(揚水を含む)が29.3%で、その他の再生可能エネルギーは0.89%である。
非化石電源比率(原子力+再エネ)は52.7%であり、調整電源である揚水発電分を差し引くと43.8%である。現時点で、関西電力グループは唯一ほぼ政府の示す中間目標に達している。
12.3 再生可能エネルギー開発の取り組み
2021年4月、経済産業省の総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第31回)が開催され、電気事業連合会が主要電力会社の再生可能エネルギー開発の取り組みを報告している。
関西電力グループは、2040年までに、洋上風力を中心に国内で1兆円規模の投資を行い、再生可能エネルギーの新規開発を500万kW、累計開発900万kW規模をめざすとしている。
2040年までに再エネ500万kWの新規導入を仮定した場合、総出力は3314万kWに増加し、火力発電設備は39.4%、原子力発電設備は19.8%、水力発電設備(揚水を含む)が24.9%で、その他の再エネは水力を含まないと仮定すれば15.8%となる。
非化石電源比率(原子力+再エネ)は60.6%であり、調整電源である揚水発電分を差し引くと53.8%である。
「2030年度に非化石電源比率を44%以上」という政府の中間目標は、今後さらに厳しくなる。今後は、「ゼロカーボン火力」に向けた取り組みが重要になってくる。そのため何時までに、どの程度の規模でゼロカーボン火力を実現するのかの明確なストーリーが求められる。
次に火力発電比率の最も高い、国内総発電設備の約0.81%を保有する国内十一位の沖縄電力について、再生可能エネルギーの導入事情を観てみよう。
(つづく)