5.「東北電力」の再生可能エネルギーへの取り組み
「東北電力」と「中国電力」のエリアでは、火力発電が65%程度と高く、 残り35%程度を原子力発電+水力発電(揚水を含む)が占めている。
しかし、再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱、バイオマス)については、構成比率が1%にも満たず、導入には消極的なようである。詳しく再生可能エネルギーの導入事情を観てみる。
5.1 東北電力グループの現状
2019年4月、東北電力の送配電事業部門が、法的な発送電分離の措置により「東北電力ネットワーク」に分社化された。
そのため、現在「東北電力」はグループの持株会社、および原子力本部、発電カンパニー、再生可能エネルギーカンパニー、販売カンパニーを抱える社内分社の事業会社となった。
東北電力グループは安全性を前提に、環境性、経済性、安定供給の確保を大前提に、2050年カーボンニュートラルに挑戦すると公表している。
「再生可能エネルギーと原子力の最大限活用」、「火力電源の脱炭素化」、「電化とスマート社会実現」を3本柱に、CO2排出量削減を進める。
残念ながら、「東北電力」は「火力電源の脱炭素化」に関して、何時までに、何をおこなうのか?明確な目標は公表していない。
原子力発電所は、2011年3月の東日本大震災の影響を受け、BWR型の女川原発2号機(出力:82.5万kW、1995年運開)、3号機(82.5万kW、2002年運開)、東通原発(110万kW、2005年運開)が、13年間にわたり停止している。
女川原発1号機は廃炉作業中で、廃炉費用は約419億円と算定している。
現在、女川原発2号機は安全対策の工事計画認可を経て、2024年11月のBWR型として初となる再稼働をめざしている。3号機は審査申請を出さず、東通原発は審査申請を提出したが、再稼働の見通しは立っていない。
一方、再生可能エネルギーは、2024年3月末時点で、開発案件が全て事業化された場合の持分出力は、約280万kWに達すると公表している。
また、東北電力グループは、カーボンニュートラルに向け風力発電を主軸に200万kWを積み増すため、再生可能エネルギーの新規開発や事業参画を進めるとしているが、時期は明確にしていない。
2022年10月、東北電力はグループの再エネ事業再編を発表し、2023年7月に風力・太陽光事業を東北電力に移管した。2024年4月には、2031年3月期までに火力発電所の脱炭素化や再エネ開発などに3000億円程度投資する中長期ビジョンを公表した。
2024年7月には、地熱発電事業を子会社の東北自然エネルギーに集約し、2029年の木地山地熱発電所の運転開始をめざすと発表している。
「東京電力HD」や「中部電力」が分社化により脱炭素化の実態を分かりにくくしたが、「東北電力」では再エネ事業再編の主旨が分かりにくい。
ところで、2023年4月、経済産業省は、東北電力ネットワークと東北電力に業務改善勧告を行った。一般送配電事業者において漏えいを禁じられている新電力の顧客情報が、小売電気事業者側で閲覧可能となっており、実際に閲覧されていたことが判明したためである。
送配電事業分離を、持株会社としたための弊害が露呈したのである。
5.2 「東北電力」エリアの電源構成
2020年3月、「エネルギー供給構造高度化法」で中間目標値が設定された。年間販売電力量が5億kWh以上の電気事業者に対し、「2030年度に非化石電源比率を44%以上」という目標が定められた。
資源エネルギー庁統計によれば、東北電力は、国内総発電設備の約6.1%を保有する国内五位の電力会社である。
火力発電設備は68%、原子力発電設備は17%、水力発電設備(揚水を含む)が15%で、その他の再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)は1%に満たない。
非化石電源比率(原子力+再エネ)は32%で、電力調整用の揚水発電分を差し引くと33%と低い。
しかし、東北電力は多くの子会社と関連会社を抱えている。2024年3月時点で公表されている水力発電(揚水を含む約257万kW)、太陽光発電(約1.7万kW)、東北自然エネルギーの風力発電(約1.4万kW)、地熱発電(約16.2万kW)を加えると、総出力は1668万kWとなる。
その結果、東北電力グループでは、火力発電設備は67%、原子力発電設備は16%、水力発電設備(揚水を含む)が15%で、その他の再エネは1.2%となるが、単独の場合と大きな差は認められない。
非化石電源比率(原子力+再エネ)は31%で、揚水発電分を差し引くと30%と低い。
5.3 再生可能エネルギー開発の取り組み
2021年4月、経済産業省の総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第31回)が開催され、電気事業連合会が主要電力会社の再生可能エネルギー開発の取り組みを報告している。
その中でも、今後、東北電力グループとして、カーボンニュートラルに向け、風力発電を主軸に200万kWを積み増すと公表した。
その場合、総出力は1868万kWに増加し、火力発電設備は60%、原子力発電設備は15%、水力発電設備(揚水を含む)が14%で、その他の再エネ(太陽光、風力、地熱、バイオマス)は12%と増加する。
非化石電源比率(原子力+再エネ)は41%で、揚水発電分を差し引くと38%となる。しかし、目標の44%には未達である。
残念ながら、「東北電力グループ」は、再生可能エネルギーを200万kWを積み増す時期を明らかにしていない。また、非化石電源比率を上げるために火力発電の抑制が必要であるが、「火力電源の脱炭素化」に関して、何時までに、何をおこなうかを明らかにしていない。
次に火力発電比率の高い、国内総発電設備の約3.9%を保有する七位の中国電力について、再生可能エネルギーの導入事情を観てみよう。
(つづく)
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