14.「JERA」の再生可能エネルギーへの取り組み
福島第一原発事故を起こした東京電力には公的資金が導入され、実質的に国有会社となった。東京電力は主力の火力事業を切り離して生き残りを模索する中、電力自由化により首都圏進出を狙う中部電力の火力事業と思惑が一致し、新会社「JERA」が発足した。
14.1 新会社「JERA」の現状
2015年4月、東京電力フュエル&パワーと中部電力との間で既存の火力発電事業が統合され、電力卸売りの新会社「JERA」が発足した。
2016年9月、高経年化した火力発電所のリプレースを発表。五井LNG火力(約78万kW×3)、姉ヶ崎LNG火力(約65万kW×3)、横須賀石炭火力(約65万kW×2)と相次ぎ、運転を開始する2022~2023年までの間、首都圏の電力ひっ迫の一要因となる。
2018年12月、英国エセックス州沖合のガンフリートサンズ洋上風力発電事業(出力:17.28万kW)、台湾苗栗県沖合のフォルモサ1洋上風力発電事業(出力:12.8万kW)への参画を相次いで発表。再エネ事業化の第一歩。
2019年4月、東京電力フュエル&パワーと中部電力の火力発電所とLNG基地が全てJERAに移管され実質的統合が終了。両社の出資比率は50:50で、燃料調達から発電、電力/ガスの卸販売を行う新会社として出発した。
2022年5月、2035年に向けた新ビジョン「再生可能エネルギーと低炭素火力を組み合わせたクリーンエネルギー供給基盤を提供し、アジアを中心とした世界の健全な成長と発展に貢献する」を発表。
2024年4月、英国に再生可能エネルギーに特化した新会社「JERA Nex」を発足し、新たな再生可能エネルギーの開発目標として、「2035年度までに2000万kWを開発する」を掲げた。
2024年5月、電力小売事業への参入を表明。子会社の「JERA Cross」 を通じて電力小売事業に参入し、CO2フリー電力を供給する。
これによりJERAは、再生可能エネルギーの拡大と、火力発電所のCO2フリー化─を推進する必要が出てきた。
14.2 「JERA」の電源構成
資源エネルギー庁統計によれば、JERAは、国内総発電設備の約21%(出力:5722万kW)を保有する大電力会社である。火力発電設備は99.98%、太陽光発電は0.02%であり、非化石電源比率は0.02%と極めて寡少である。
発電出力構成は、CO2排出量の少ないLNG火力が71%と大多数を占めるが、15%を占める石炭火力では、比較的CO2排出量の少ない高効率の超々臨界圧(USC)機の割合が13%と高い。
東京電力フュエル&パワーと中部電力の既存の火力発電事業が統合した会社であるため、非化石電源比率が高いのは当然である。しかし、電力小売事業への参入を進めるため、カーボンニュートラルが求められる。
14.3 再生可能エネルギー開発の取り組み
2020年10月、JERAは「2050年時点で国内外の当社事業から排出されるCO2をゼロとするゼロエミッションへの挑戦」を公表した。
「2035年までに2000万kWの再生可能エネルギー導入」と「アンモニア、水素燃料の導入により発電時にCO2を排出しないゼロエミッション火力発電」の実現をめざす。
JERAの再生可能エネルギー開発目標は、洋上風力を中心とした開発と蓄電池による導入支援を推進し、2023年現在の320万kWを、2025年に500万kW、2035年に2000万kWへと拡大する。
一方、ゼロエミッション火力は、2030年までに非効率石炭火力発電所(超臨界以下)の全台停廃止と、高効率石炭火力発電所(USC)へのアンモニア混焼、2035年までに混焼率50%、2050年までにアンモニア専焼をめざす。
また、LNG火力発電の水素混焼を推進し、2040年までに技術確立、2050年以降に水素専焼化に向けて混焼率を上げる。
2050年時点で専焼化できない発電所からのCO2は、カーボンオフセット技術やCO2フリーLNGなどを活用して、2050年にCO2排出ゼロをめざす。
JERAの再生可能エネルギー開発目標は、洋上風力を中心とした開発と蓄電池による導入支援を推進し、2023年現在の320万kWを、2025年に500万kW、2035年に2000万kWへと拡大する。ただし、これには海外プロジェクトへの参画分が含まれる。
仮に、再エネ全てが国内で導入されるとすれば、非化石電源比率は、2023年現在で5.3%、2025年で8%、2035年で26%となる。政府の示す2030年44%以上の目標達成には、ゼロエミッション火力の推進は必須である。
以上、大手電力各社のカーボンニュートラルに向けた取り組み、特に再生可能エネルギーの拡大に注目して情報を収集した。得られた点の情報を線とし、時系列を考慮した面の情報へとに進めることが重要である。
(つづく)