歴代日本ダービー馬の現存子孫に関するいくつかの検証
はじめに
過去に日本ダービーを勝った馬たちの血が、現在の競走馬の血統にどれほど残っているのか検証する記事のおまけのようなものです。
今回は、検証の過程で得られた副産物的なデータを使って色々と遊んでみます。
前の記事を読んでいなくても理解できる内容にはなってますが、検証方法が記載されているpart1の冒頭だけでも読むことをおすすめします。
2023年日本ダービー出走馬の祖先について
2023年の第90回日本ダービーに出走する18頭の精鋭たちは、果たして何頭の歴代日本ダービー馬を祖先に持つのでしょうか。
馬番とともにご覧ください。
やはりディープインパクトとキングカメハメハが強いですね。
出走18頭のうち、ディープの子孫が5頭、キンカメの子孫が8頭います。
あと目に付くのは、アドマイヤベガの子孫であるスキルヴィングと、バンブーアトラスの子孫であるトップナイフですね。
2020年産世代のうち、アドマイヤベガの子孫は37頭、バンブーアトラスの子孫は19頭しか生まれていませんが、その中から一線級の子孫を出すのは流石です。
そして異常なのがボストニアン。
ここに馬名がある歴代ダービー馬の中で、2番目に古いのが第49回(1982年)ダービー馬のバンブーアトラスですが、ボストニアンは第20回(1953年)ダービー馬ですからね。1頭だけ時空を超えてます。
因みにボストニアンを祖先に持つドゥラエレーデは、血統表の中に歴代ダービー馬を4頭(ボストニアン、キングカメハメハ、オルフェーヴル、ドゥラメンテ)もいます。
ダートで勝ち上がって大穴でG1制覇、UAEダービーを経由しての日本ダービー参戦という前代未聞のローテで挑む本馬ですが、血統も異色と言えるかもしれません。
最も多くダービー馬の祖先を持つのは誰か
先ほどのドゥラエレーデは4頭の日本ダービー馬を祖先として持っていました。
では、世代の中で最も多く日本ダービー馬を祖先として持つ馬はどの馬なのでしょうか。
検証の結果、2020年内国産サラブレッドの中では、アポロキングダム産駒のイテマエバファローが最多でした。祖先数は、なんと6頭。
母父 トウカイテイオー
母父父 シンボリルドルフ
母母父 ミスターシービー
母母母父 シンザン
母母母母父 タニノムーティエ
母父母母母母母母 ヒサトモ
という、とてつもない血統をしています。
因みにこの血統の並びを見て気付いた方もいらっしゃるかもしれませんが、このイテマエバファローはクワイトファインの甥にあたります。
上記の通りダービー馬の馬名は全て母方に入っており、この母がクワイトファインと全姉弟の関係になるため、必然的にクワイトファインも6頭の日本ダービー馬を祖先に持つことになります。
トウカイテイオーの直系を継ぐ貴重な存在ではありますが、それと同時に数多くのダービー馬の血を後世に繋ぐ存在であることが改めて分かります。
ディープとキンカメの血統表でのポジション
さて、ここからは少し趣向を変えた題材。
part4の記事でも書いたとおり、2020年に国内で生まれて血統登録されたディープインパクトの子孫は1,420頭、キングカメハメハの子孫は1,437頭もいました。
毎年これだけの子孫が生まれていると考えると、改めて驚きの数字です。
ではこの2頭の大種牡馬は、現在生まれてくる馬たちの血統表のどの位置に収まっているのでしょうか。
まずはディープインパクトから見ていきましょう。
図の見方としては、例えば2020年に国内で生まれて血統登録されたディープインパクト産駒は6頭(ライトクオンタムなど)なので、「父の位置にディープインパクトの馬名がある馬は6頭」といった情報が載っている図となります。
この図を見ると、ディープを3代前に持つ馬も結構出始めていることが分かります。因みに、日本ダービー出走予定のホウオウビスケッツもその内の1頭です(母母父がディープインパクト)。
図の通り、2020年時点では父父父または父母父のポジションにディープを持つ馬はまだ生まれていません。
しかし、ディープを父父に持つミッキースワローの産駒が2022年から、母父に持つキセキの産駒が2023年から生まれ始めているため、ディープが父方の3代前の祖先という馬も現存することになります。
因みに、この図の中の数字を全て足すと「1,421」という数字になりますが、ディープの子孫数1,420頭と一致しません。
つまり、1頭だけディープを血統表上の2か所に持つ=ディープのクロスを持つ馬がいるということになります。
それは、ミッキーアイル産駒のナムラアダムです。
血統表をご覧になれば分かる通り、「ディープインパクトの2×3」という強いクロスを持っています。強気の配合ですね。
次に、キングカメハメハについて見ていきます。
図の見方はディープの時と同様。キングカメハメハは2019年に生まれた世代がラストクロップだったため、2020年産子孫の中にキンカメを父に持つ馬はいません。
ディープより2年早く種牡馬入りしているだけあって、血統表の右側(古い側)により進んでいるように思われます。
キンカメを3代前に持つ馬としては、オールパルフェなどがいます。
また、ディープと同じように父方3代前の祖先としてキンカメを持つ馬は2020年時点では生まれていません。
しかしこちらも、キンカメを父父に持つサートゥルナーリアの産駒が2022年から、母父に持つインディチャンプの産駒が2023年から生まれ始めています。
因みに、キンカメのクロスを持つ馬は2020年には生まれていませんでした。
とはいえ、キンカメを3代前、引いては4代前の祖先として持つ馬がこれからどんどん生まれてくるでしょうから、そのクロスを持った馬が数多く生まれてくるのも遠くない未来の話かもしれませんね。
おわりに
以上で、本シリーズは完結となります。このおまけ記事まで読んでくださる方がいらっしゃれば、幸甚の至りです。
読んでくださった方に対して、日本ダービー馬の子孫の現状について少しでも有益な情報を共有できていれば幸いです。
また気が向いたら、血統データを使ってまた別のテーマの検証をやりたいと思っています。
なお、本記事の内容はあくまで私個人で調査、分析したデータに基づくため、提示した情報には誤りが含まれる可能性があります。何卒ご容赦ください。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。