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【Project Aya(آية)アーヤと作るプロジェクト)】① 「はじめまして! プロジェクト・アーヤです」

この文章は、パレスチナ・ガザ地区のアーヤ・ハンマードさんと日本から彼女をサポートする糸川乃衣による取り組み【Project Aya(آية)アーヤと作るプロジェクト)】の記事、第1回目です。

今回はプロジェクトのはじめの一歩として、アーヤさんの自己紹介とプロジェクトの概要をお届けします。

全文無料でお読みいただけますが、本文の最後に「購入」ボタンを設置しました。500円でご購入いただくと、アーヤさんと同居ご家族への寄付になります。
よろしければ、応援の気持ちをお寄せいただけますと嬉しいです。


軍事侵攻が激化する前のアーヤ。お気に入りのカフェで友だちと過ごす時間を大切にしていました。

1. 自己紹介

原文:アーヤ・ハンマード、訳:糸川乃衣
 
みなさんこんにちは。私はアーヤと申します。パレスチナ・ガザ地区のハンマード家という家族の一員で、現在24歳です。生まれて以来ずっとひとつの街で生きてきましたが、その街は、もうどこにもありません。

戦争(注1)が始まる前の私は、大学でティーチングアシスタントをしながら、携帯電話の会社で働いていました。ささやかながらも幸せな生活でした。他の若い女性たちと同じように夢があり、その夢を叶えるべく日々励んでいました。

しかし、戦争によって私の人生は一変しました。家も、仕事も、愛する人々も、なにもかもが奪われました。
戦争によって奪われたものは、それだけに留まりません。私はこの15ヶ月のあいだ、自分を成長させたり仕事で夢を追いかけたりすることを阻まれ、ただ生き延びるためにすべてを費やすことを強いられ続けてきました。パンや水を手に入れるために長い列に並び、破壊されたものを修理し、最低限の生活をどうにかやりくりする。それが今の私です。

このプロジェクトは、私が毎日直面している困難に立ち向かうための、私なりの方法です。
私の苦しみ、抵抗、そして苦境から立ち直ろうとする力を表現してゆきます。
この取り組みを通じて、失ったもののほんの一部を埋め合わせ、目の前の生活のことだけを考え続けなければならない状況から自分を解放することができたらと願っています。
どうか私を応援し、力になってください。プロジェクトをきっかけに、あなたと友だちになれたら嬉しいです。

(アーヤさんによる原文は、記事の最後に掲載しています)

大学でのお仕事中に撮った一枚。制服姿、かっこいいです!
専攻は経営学。成績優秀だったためティーチングアシスタントに選ばれ、公共経営学の科目を学生に教えていました。いつかエジプトで修士課程を修めたいという目標を持っています。


2. プロジェクト概要

案:アーヤ・ハンマード&糸川乃衣、文:糸川乃衣

“I will share my dream with you. Before the war, I was a teacher at the university and also an employee in a company, and now I am standing in lines for water and bread, and this hurts me. I dream of returning to my work and my previous personality.”

「私の夢をお話しします。戦争前は、大学で教えたり、会社で働いたりしていました。でも今は、水やパンを手に入れるために列に並ぶ毎日です。それがとてもつらいです。もう一度自分の仕事に戻り、かつての自分らしさを取り戻すことを夢見ています」

このプロジェクトの主役は、パレスチナ・ガザ地区で生きるアーヤ・ハンマードさんです。

2023年11月、アーヤさんは家と職場をイスラエル軍による空爆で失いました。それ以来、15ヶ月にわたってテントでの避難生活を余儀なくされています。

軍事侵攻が激化する以前は働いて収入を得ていたアーヤさんですが、現在のガザにおいて自力で生計を立てることは極めて困難です。SNSでつながった海外の支援者に必死に呼びかけ、なんとか寄付金を得られても、そのお金で食べ物を手に入れるためには長い長い列に並ばなければならない。水や電気も自力で調達する必要があり、インターネットを使うためにも往復1時間歩かなければならず……そうこうしているうちにあっというまに1日が終わってしまう。
以前の生活とはかけ離れた日々に、心身ともに苦しめられ続けています。

縁あってメッセージのやりとりをするようになった私、糸川乃衣に、アーヤさんがある日こんなことを話してくれました。

「以前の私には、誇りを持てる仕事と、目指したい自分の姿がありました。なのに今は、パンと水を得るために列に並ぶことが私の全てになってしまった。何か、そうではないことがしたい。小さくてもいいから、自分のためのプロジェクトを」

こうして始まったのが、【Project Aya(آية)アーヤと作るプロジェクト】です。

アーヤさんと相談をかさね、実現したいことを以下のとおり定めました。

  1. アーヤさんの思いを表現する:
    アーヤさんの経験やメッセージを、プロジェクトの趣旨に賛同してくださる方々のご協力のもと、Tシャツやトートバッグのデザインとして形にする。

  2. 収益を支援に:
    販売で得た収益を、アーヤさんの生活の一部を支える収入とする。

  3. パレスチナへの関心を広げる:
    アーヤさん個人やガザ地区のみにとどまらず、パレスチナ全体と、その地で生きる人々に目を向けてもらうためのきっかけを作る。

当プロジェクトがアーヤさんの小さな支えとなることを、またパレスチナについての会話の糸口となることを願いつつ、楽しみながら取り組んでまいります。応援していただけたら、そして一緒にお楽しみいただけたら、嬉しいです。

近日公開する第2回にて、糸川から見たアーヤさんのことと、私がこのプロジェクトを支えたい理由をさらに詳しくお話しします。そちらもぜひお読みください!

3. 今後の取り組み

案:アーヤ・ハンマード&糸川乃衣、文:糸川乃衣

1.アーヤさんとの共同制作
次のデザインを使用したアイテム(Tシャツ、トートバッグ、マグカップなど)を制作します。
①イラストデザイン:アーヤさんの原案(言葉による説明)をもとに描かれたイラストを使用。
②写真デザイン:アーヤさんが撮影した写真を使用。

2.アイテムの販売
アイテムはsuzuriを利用して販売します。収益は全額アーヤさんの収入となり、生活の再建に使われます。

制作過程や販売情報については、プロジェクト・アーヤのXアカウント( @projectaya0622 )にて随時お知らせしてゆきます。

「今朝は早起きして、瓦礫の前でコーヒーを飲んだの」というメッセージとともに送られてきた写真。
書きこまれたアラビア語の意味は、次のとおりだそうです。
「これは私たちの人生じゃない。本当に、私たちは自分たちにとって馴染みのない奇妙な人生を生きています…。ああ神様、どうかこの悪夢が終わり、愛する人たち全員とまた会えますように。もう誰も失うことなく、心の平穏が戻り、疲れた私たちの魂が安らぎますように。」


4. アーヤさんを応援する方法


1.GoFundMe経由の直接送金

アーヤさんは現在、ご家族とともにガザで生活を再建しようとしています。一時的な停戦は発効しましたが、支援はいまだゆき届いておらず、働いてお金を稼ぐことが困難な状況も変わりません。470日間の軍事侵攻を生き延びた人たちのこれからを、大勢が無理のない範囲で少しずつ出しあうことで、なんとか支えてゆきたいです。

・サイトは日本語非対応です。
・オレンジ色の"Donate Now"(寄付をする)ボタンを押して、飛んだ先のページで任意の金額を入力してください。いっけん25ポンド以上でないと寄付できないように見えますが、金額の欄に直に数字を打ち込めば、5ポンドから可能です。
・Tip(GoFundMeに渡る手数料)は、スライドバーを左右に動かして変更できます。(0も可)。
・匿名で寄付したい場合は「Don't display my name〜」にチェックを入れてください。


2.インタビュー記事の購読

アーヤさんのご両親へのインタビュー記事です。アーヤさんにやりとりを仲介していただきながら書きました。おしまいのほうに出てくる「四女・アーヤさんのこと」という項で、アーヤさんも登場します。無料でお読みいただけるので、よろしければぜひ。ご購入いただくと、全額がご家族への寄付になります。


3.プロジェクト・アーヤの応援

こちらの取り組みを見守っていただくことも、大きな励みとなります。よろしければ、フォロー&シェアで応援していただけると嬉しいです。
🆕プロジェクト・アーヤのオンラインショップ(suzuri)
🆕プロジェクト・アーヤのX(アカウント凍結を経て、作りなおしました)
🆕プロジェクト・アーヤbluesky
アーヤさんのXアカウント



また、この記事をふくむプロジェクト関連記事の販売を通じて得た収益は、全額をアーヤさんへの寄付とします。ぜひご利用ください。

5. 停戦=終わり、ではない

2025年1月19日、イスラエルとハマスの停戦合意が発効しました。
これを受けて「やっと“戦争”が終わったのだな」と安堵されている方もいるかもしれません。
しかし、この停戦はあくまで6週間という期限付きの、一時的な措置に過ぎません。停戦プロセスは今後3段階にわたって進められる予定ですが、この最終段階が完了しない限り、攻撃が再開される可能性があります。(注2)

無事に最終段階に達しても、ガザの人々が直面している現実の厳しさは変わりません。
この15ヶ月間で、あまりにも多くのものが奪われました。
停戦が発効する間際まで殺され続けた4万7035人(注3)もの人々の命は、もう二度と戻りません。
残された人たちはどうにか生活を立て直そうとしていますが、多くの人にとって、帰る家も生計を立てる手だてもないのが現状です。

中部で避難生活を送っていたアーヤさんとご家族は、かつて住んでいた北部に帰ることにしたそうです。
「帰って、それから、どうするの?」
恐る恐る尋ねたところ、アーヤさんの返事はこうでした。
「とりあえず、破壊された家の上にテントを建てるつもり。そのあとは、何をしたらいいのかわからない」

●ヨルダン川西岸地区で起きていること

苛烈を極めるガザでの殺戮が注目されがちな一方、ヨルダン川西岸地区においても想像を絶する理不尽が続いています。
抑圧と暴力が日常と化した西岸では、イスラエルの入植者による土地や財産の収奪が当たり前のように行われています。
難民キャンプには監視と攻撃のためにドローンが飛び交い、夜になれば”捜索”のためにイスラエル兵が押し入ってくる。ただそこに居合わせたというだけの理由で殺される人も後をたたず、その不条理から大切な人たちを守るために武器を取れば、「テロリスト」のレッテルを貼られて殺害される。
これらはみな、「2023年10月7日」に突然始まったわけではなく、それよりもずっと以前から続いていることです。
そして現在、ガザでの停戦の反動で、このような人道に反する行為がさらにエスカレートしていると報じられています。

訳「停戦協定に取り乱したイスラエルの入植者たちは、ヨルダン川西岸のパレスチナ人の村々を集団で襲撃し、子どもを殺害し、家屋を焼き払った」

●意図せずして加担させられている私たち

イスラエルがこれほどの横暴を続けられるのは、アメリカをはじめとする諸外国の支援があるからです。
支援国に日本がふくまれていることは、もっと広く知られなければなりません。
たとえば、防衛省がイスラエル製の攻撃型ドローンを輸入する計画が報じられてます。これはパレスチナという”実験場”で”実証実験済み”の武器であり、その購入に私たちの税金が使われることになります。また、日本の年金基金がイスラエルの軍事産業への投資に使われている事実も明らかになりました。
私たちのお金が、おのれの意志とは無関係に、パレスチナの人々の命を軽んじ、生存する権利を踏み躙ることに使われているのです。

●今いる場所からできること

この不本意な状況を終わらせるために、そして、パレスチナの人々が強いられてきた理不尽の根本的な原因である占領を終結させるために、ひとつでも多くの声と目が必要です。
「声を上げる」なんて自分には難しい……と感じる方にも、パレスチナについて学ぶ、匿名で意見を送付する、可能な範囲でイスラエル支援企業の不買に取り組むなど、できることはたくさんあります。
以下に、その一例を挙げました。
小さくてもできることを、それぞれにしっくりくる方法で、一緒にやってゆけたら嬉しいです。

「何からはじめたらいいの?」という方へ:
"Olive Journal"を訪ねるところから始めてみるのがおすすめです。小さな「できること」が集まった、信頼できる場所です。


「最新の状況を踏まえつつ、ガザで起きていることについて知りたい」方へ:
岡真理さんの講演「歴史の忘却に抗して ーガザのジェノサイドと私たち」をアーカイブで聴くことができます。2025年1月15日に行われたものです。


「西岸地区で行われてきたことについて知りたい」方へ:
Radio Dialogueのこちらの回で、20年にわたってパレスチナを追ってきた写真家高橋美香さんの語りを聞くことができます。


6. Self-introduction (original text by Aya)

Hello everyone. I am Aya, a member of the Hammad family from Gaza. I am 24 years old and have lived my entire life in this bereaved city.
Although I was living a simple life, I was happy and I had dreams like any young woman who aspires to achieve it. Before the war, I worked as a teaching assistant at my university and I also held a job at a mobile company.

However, the war turned my life upside down, taking away my home, job, and loved ones. It was not satisfied with that and forced me to shift my focus from  how to develop my personality and develop more in my work to simply surviving—standing in long lines for bread and water, repairing what had been destroyed, and managing basic needs.

This initiative is my way of coping with the challenges I face every day.
It embodies my suffering, resistance and resilience. Through this initiative, I hope to compensate a small part of what I lost and relieve me from thinking about providing daily requirements.
I hope you will support me and stand by my side. It would mean a lot to me if this small project could lead to us becoming friends.

7. 注・補足・参考記事

●注

(注1)「戦争が始まる前の私は、大学でティーチングアシスタントをしながら、携帯電話の会社で働いていました。」
▶︎ ガザにおける現状を、パレスチナの人々は「戦争(war)」という言葉で表現することがあります。ここでも、アーヤさんが用いた「war」という言葉をそのまま「戦争」と訳しました。
この点について、非当事者の立場から補足させてください。
ガザで行われていることは、一般的に「戦争」と呼ばれるような「対等な力関係にある二国間の戦闘」とは大きく異なります。その実態は、イスラエル政府による一方的な軍事侵攻であり、人権団体や国際機関からは、特定の集団の存在そのものの根絶を目的としたジェノサイドの側面をもつことが指摘されています。

(注2)「停戦プロセスは今後3段階にわたって進められる予定ですが、この最終段階が完了しない限り、攻撃が再開される可能性があります。」
▶︎ 19日に停戦が発効したことで、ガザ地区への空爆はいったん止まりました。しかし、この記事を書いている20日の時点で、すでに同地区南部のラファハにおいて、子どもが射殺され、その遺体を収容しようとした大人も負傷するという、看過できない事態が報じられています……。

(注3)「4万7035人
▶︎ 死者数は、1月20日時点でのガザ保険省の報告に準拠しています。実際の被害はこれを遥かに上回ると目されており、医学誌ランセットに詳細な論文も発表されていますが、ここでは保健局の報告を優先しました。この4万7035人という”数字”は、現地の方々がじっさいにご遺体を数えることで集計したものです。イスラエル軍の攻撃によって意図的に医療体制を破壊させられたなか、それでも一人一人記録することをかさねていった結果としての、そしてすでに動かしようもなく確定してしまった、極めて重い”数字”です。
なお、死者数は、2025年01月20日 21時21分に更新された共同通信の記事から引用しました。(本来ならばガザ保健省の公式情報を確認すべきですが、言葉の壁と力不足のせいでみつけることができませんでした。在処をご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけますとありがたく存じます)

●補足

・suzuriの利用について:アイテムの制作と販売にsuzuriを使うことで、工場への受発注・在庫管理・梱包・発送などの運営負担を回避することが可能になります。その一方でプラットフォーム利用料が発生するため、販売額全体に占める収益(=アーヤさんに送金できる金額)の割合は他と比べて低くなってしまうのですが、持続可能性を重視し、この方法をとることにしました。

・収益の取り扱いについて:現在は全額を送金予定ですが、状況により「収益から経費を引いた額」に変更にする可能性があります。その場合はnoteやXにて詳細をご報告します。

・企画関連文章の文責について:分担が明記されていない項目は、糸川個人が執筆しています。また、当企画に関する文章はすべて、機械翻訳の助けを借りてアーヤさんの確認を経た上で公開しています。

●参考記事

・Arab News. "解説:ガザ保健省とは何なのか、彼らはどのように戦争の死者数を算出しているのか?". Arab News Japan. 2023-11-07. https://www.arabnews.jp/article/middle-east/article_104126/, (参照2025-01-21)

・CNN. "ガザの死者数、実際には7万人超と推定 地元当局の発表を大幅超過 英大学". CNN.co.jp. 2025-01-10.
https://www.cnn.co.jp/world/35228159.html, (参照2025-01-21)

以上で本文はおしまいです。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

下記より記事をご購入いただきますと、全額がアーヤさんへの寄付になります。
(「チップで応援」機能を用いて任意の金額を上乗せしていただくことも可能です)
困難のなかにありながらもどうにか自分らしさを取り戻そうと奮闘するアーヤさんを、ご無理のない範囲で応援していただけますと、私もとても嬉しいです。

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