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【映画考察】モノノ怪 唐傘【ネタバレ含】

これは「劇場版 モノノ怪 唐傘」を見た後、興奮覚めやらぬまま書き綴った文章である。

ネタバレを大いに含むのでこれから見る人はブラウザバックすることをおすすめする。

ちなみに私は2007年のTVアニメ「モノノ怪」を楽しく見ていたがその後はご無沙汰していて、今回の劇場版は前情報なしに見た。

他の考察どころか公式ホームページすら見ないまま書いているので記憶違いや解釈間違いがあるかもしれない。

数ある感想のひとつとして読んでいただけると助かる。 


まずあらすじを振り返りたい。

アサとカメという二人の女性が大奥勤めとなるところから物語は始まる。

ふたりは仲良くなるが、アサは大奥で評価され昇進するのに対してカメはうまく馴染めずにいた。

それと時を同じくして、2人の江戸城の武士が大奥にやってくる。

2ヶ月前に執り行われる予定だった行事「大餅曳」が延期されたことの真相を調査するためだ。

そんな中、大奥に怪事件が起きたことをきっかけに、薬売りを中心とした面々が大奥の闇に迫っていく。


印象的なのは北川とアサとの対比だ。

北川は大奥に入るときに大切なものを捨てて、心が渇いてしまった。

大奥でうまくやれなかった友に対して、大奥や自分の邪魔になるからと暇を出した。

一方、アサは何も大切な物を持たずに大奥に入る。

ここが最後までアサが唐傘に狙われなかった理由だろう。

一般的な妖怪「唐傘」は、捨てられた物が恨みを持って妖力を持ったものである。

北川の助言もあり最後まで何も手放さなかったからこそ、アサは正気を保って(渇かないで)いることができた。

またアサは、北川と同じように友であるカメに暇を出す。

アサは大奥に入ってから、カメという大切な存在ができた。

カメを思うがゆえに、カメが染まらずに彼女らしく生きていられるように大奥から出した。

カメもその意図を理解しているのだろう、笑顔で大奥を去って行く。

お水様に投げ捨てるのとは違う、愛ゆえの手放しだ。


ふたつ悩む点がある。

一つ目は北川の死因と、麦谷の死を見た歌山がすぐに薬売りに解決を頼んだことの関係性だ。

北川は、自分の心が以前と違う(渇いてしまった)ことに気づいて自分を取り戻したいと思った。

そこを唐傘に魅入られ、導かれるままにお水様に飛び込んで自害したのだと私は解釈した。

だがそうすると、よそから見たら怪奇現象に見えない。

モノノ怪の仕業だと言われた歌山が、冷静にすぐ納得する理由がわからないのだ。

賢い女性なので、順応性が高いからだと言われればそうかもしれないが。

二つ目は、三郎丸が泣いた原因だ。

これは本当にわからない。

唯一思い当たるふしと言えば、姉のフキだ。

もしかしたら、お水様に横たわる死体の中に、フキがいたのではないか。

姉が大事な物を捨てて心を殺したことに対して泣いたのではないだろうか。


ところでアサからカメに対する思いはただの友情なのだろうか。

アサが頬を染める描写があった。

自分とは違って底抜けに明るいカメに対して、恋慕めいた感情があると見てもいいかもしれない。

大奥は女の園である。

入って数日であることや時代背景は置いておいて、側室でもない(そもそも側室を目指していない)アサが同性に惹かれることは不自然ではない。

かつてのモノノ怪で描かれてきた「情念」は薄く感じた。

もっとカメ中心にどろどろとした女の争いが起こると思っていたので、少し拍子抜けだった。映画にするにためにグロテスクなものは控えたのか。

ストーリーももちろんながら、あの独特の彩色にとても引き込まれた。

昔のTVアニメよりトーンがくすんでいた気がするのは気のせいだろうか。

モノノ怪ファンの一人としては満足できた。

声優さんが交代となったが、神谷さんの薬売りも格好よくて安心した。

書くことを趣味としている人間の目線では、伏線の張り方や本筋に関わってこない登場人物の出し方などがとても参考になった。

私は途中でダレてしまうことがよくあるので映画を見るのが得意ではないが、本作はずっと夢中で見ていられる映画だった。
また見たい映画のひとつに出会えて良かったと思う。

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