ほろ酔い旅日記~南アフリカ篇2
サファリ
そもそも野生動物にはあまり興味が無かった。
旅のルートを決める話し合いで、サファリツアーが出た時にも私は消極的だった。
動物園には子どもの頃から何十回と行っているんだし、富士サファリパークだって何度も行った。ライオンに餌だってあげたことがある。「本場」とはいえ今更サファリねぇ、どこで見たってゾウはゾウ、ライオンはライオンじゃないの?…とゴネにゴネまくっていた。
そんな私の気持ちが変わったのは、ホテルの候補が上がってきたとき。自然の中でも快適に過ごせそう。動物ツアーだけ我慢すれば、このヴィラで美食とお昼寝三昧、これはいいわ!コロリとサファリに賛成となった。
ラグジュアリー アフリカン サファリ アコモデーション |ゴンドワナ動物保護区 (gondwanagr.co.za)
朝、ケープタウンを出発し車で約3時間、ゴンドワナ動物保護区に着いた。
チェックインを済ませた後、誓約書のようなもにもサイン。誓約書の内容は「ゲームドライブで(←車で動物たちを見に行くことをそう言う)いかなるアクシデントが起きても当方(ゴンドワナ側)は責任を負いませんよというもの。ちょっと怖いね。
部屋に荷物を置き、午後のゲームドライブの前に腹ごしらえ。
このホテルはオールインクルーブ。とはいえ初のゲームドライブを控えて軽め・ノンアルコールにした。(なにせ先ほどの誓約書が気になる)
いよいよゲームドライブ!
レンジャーが迎えに来てくれてジープに乗り込む。ジープは簡単な屋根のみ、側面も手すりだけの簡単なつくり。富士サファリパークでは厳重な金網が張られたバスで行ったっけ。これで大丈夫なのか?
レンジャーから簡単な説明を聞く。動物にはこのジープ全体がひとつの生き物に見えている。だから絶対にジープから手や足を出さないように(動物が慌てるから)、もちろん下車はダメ。また大きな声を出さないように。
私は後方に座ったサウジアラビアのカップルの強めのコロンが動物を刺激せぬか?気になったけれど、悲しいかな英語でどのように表現して良いかわからず黙っていた。
すぐに出発。当り前だけど未舗装の原野を疾走するので、揺れる揺れる。
まもなく草食動物のスプリングボックやヌーの群れに出会う。その頃には誓約書のこともサウジアラビア人のコロンのことも忘れ、ひたすらカメラのシャッターを切っていた。
躍動する動物たちの毅然とした姿の美しいこと。動物たちの筋肉までが美しい。
サイ、ゾウ、シマウマなどにも遭遇した。その後、原野の恐らく安全な場所で下車し、レンジャーが準備してくれたお酒で、荘厳な夕焼けを見ながら乾杯した。
ゲームドライブは、動物が活発に動き回る早朝と夕方の2回行われる。
2日目の早朝、寒さですっきり目が覚め出発。
どうやら今朝はライオンを見るためにレンジャーが他のジープと無線で連絡を取り会っている。(9~10人は乗れるジープが何台も原野を走り回っているのだ)
ヒトが住む(泊まる)地区の周囲は巧みに柵に囲まれていて隔離?されている。動物たちの居住区(といってもとんでもなく広大な草原と山野)におじゃまするためには厳重なセキュリティのゲートを出なくてはならない。
車は縦横無尽に原野を走り、サイ、ヌーの群れに出会い、沼でカバの母子に遭遇。ヒョウにも出会うことが出来た。にわかに無線の更新回数が多くなり、全速力で原野を疾走始めた。振り落とされぬよう必死で手すりを握る感覚は、テーマパークの安全を保障された絶叫マシンとは全く違うスリルだった。
やがて目の前に2台のジープが停まっていて、その先を見ると雌のライオンが悠然と歩いていた。朝食を済ませてすみかに戻るところなのだそうだ。ということは、愛らしい草食動物が…今はそれを考えぬことにしよう。ジープはライオンの5メートルくらいまで迄近づいてくれた。(目が合ったらどうしようか)
ライオンに会えたことで大満足して帰還。
気づけばとてもお腹が空いていて、朝食をたっぷりと摂り、その後デッキで昼寝。
やっていることはライオンと同じね。
夕方になり、3回目で私たちにとっては最後のドライブ。朝方同乗した全身真っ白のお洋服に身を包んだカップルは夕方のドライブには行かないとのことだった。このカップルは童謡「月の砂漠」に出て来る王子様お姫様のように美しくて存在感があった。乗り心地が悪く砂煙もうもうのドライブはもう結構だったのかもしれない。
そしてジープは我々の貸し切りとなった。「何が見たい?」レンジャーが訊いた。主な野生動物には出会ったのだけれど、キリンだけは遠い谷底に居る姿を見ただけだった。「キリンを近くで見たい!」「ああいいよ」ということでキリンたちがいる谷へ直行した。
ジープは石ころだらけの悪路を、感覚としては真っ逆さまに下りて行った。谷底に着き数分車を走らせると、ガサッガサッと木の葉をむしる音とともにキリンの姿が見えてきた。キリンは臆病だと聞いていたけれど、ジープがかなり近づいても怯えることもなく、無心に葉っぱを食んでいた。
かなりの時間キリンのそばにいたけれど、雲が厚くなり雨が降りそうになったので慌てて上に行くことにした。今は谷底、本降りになれば下ってきた急坂に雨が集まり川のようになるのは簡単に想像がつく。急がなきゃ。
坂を上り切った頃、無線の交信が頻繁になった。(後で知ったのだけれど、谷底は無線が繋がらないそうで、万が一の時には孤立無援になるそうだ。後で知ることが幸せってこともある。)無線をキャッチしたレンジャーが車の速度を上げた。
するとライオンの母子連れと遭遇。子ライオンたちはまだすみかに戻りたくないらしく、道端で遊んではお母さんに促されながら少し歩いてはまたうろうろを繰り返していた。原野では動物追い越し禁止だ、おかげでゆっくり観察が出来てほんとうにラッキーだった。
やっとねぐらに戻る気になったライオンたちに別れを告げて、宿に戻る道すがら、今度はゾウの一族にも遭遇。ゾウの群れがシルエットとなりとても感動的な風景だった。
アフリカの広大な大地と野生の動物たちと過ごした素晴らしい2日間となった。
動物たちから教えてもらったことについては次回。